「雇い止め」が初めて広辞苑に
岩波書店の広辞苑の第7版が出るとかで、「ブラック企業」が載るとかで話題のようですが、その新加項目をつらつら見ていたら、
http://kojien.iwanami.co.jp/feature/#tab2
なんと、「雇い止め」も今回初めて載る言葉らしく、ということは今まで広辞苑に「雇い止め」という言葉はなかったんだ、と。
労働関係の中にいると、それこそ昔の臨時工時代から存在する事態だし、ここ十数年の非正規労働問題の一つの焦点であった概念なのに、世の中的にはそうだったんだというのがいささか驚きでした。
まあでもね、「や・と・い・ど・め」と、「お・も・て・な・し」なみの5シラブルのすごく簡単な言葉のように見えて、この概念を正確に英語に訳そうとすると結構大変なんですよ。
10年前前後に政策研究大学院大学で留学生相手に労働政策と人的資源管理の講義を英語でやったとき、日本人学生相手には「有期契約の雇い止め」と簡単にいってたことをちゃんと説明しようとすると、「refusal to renew repeatedly renewed fixed-term contract」と言わないといけないのですね。
http://hamachan.on.coocan.jp/english.html
そして。労働契約法第19条があれほどに技巧的な規定ぶりにならざるを得なかったのも、この5シラブル語の概念的複雑さ故であったわけです。
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
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>労働契約法第19条があれほどに技巧的な規定ぶりにならざるを得なかった
19条を改めて確認してみましたら、2号の後半部分なんか、言い回しがもう回りくどすぎるのなんのって。
「されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること」
投稿: 原口 | 2017年10月28日 (土) 21時51分