« ジョブ型社会はコネがないとつらい | トップページ | 連合総研『非正規労働問題の今後の課題を探る』 »

2017年10月25日 (水)

『JIL雑誌』11月号は「スポーツと労働」

688_11『JIL雑誌』11月号は労働判例この1年もありますが、こちらは相当じっくりと読まないといけないので後回しにして、注目は「スポーツと労働」が特集です。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/11/index.html

提言 プロスポーツ選手に労働法をどのように適用するのか? 浜村彰(法政大学教授)
解題 スポーツと労働 編集委員会
論文 企業スポーツの現在を考える――変化する経営課題と企業スポーツの展望 佐伯年詩雄(日本ウェルネススポーツ大学教授)
企業スポーツ選手の労働と引退後のキャリアとの関係性 中村英仁(一橋大学准教授)
部活動顧問教師の労働問題――勤務時間・手当支給・災害補償の検討 中澤篤史(早稲田大学准教授)
アスリートの組織化――選手会をめぐる世界的動向と日本の課題 川井圭司(同志社大学教授)

いやあ、まことに時宜を得たというか、どれも興味深い論考です。

まずは企業スポーツについての2本ですが、改めて企業スポーツって一体何なんだろうと考えるのにとても役立ちます。特に佐伯さんの論文は、

企業スポーツをめぐる議論は一段落したかのようであるが、それは解決の道筋が示されたことを意味しない。確かに、企業業績の好調と五輪におけるスポーツ成績の好調によって、危機は回避されたかのように見える。しかし、休廃部は引き続いており、危機論を超える企業スポーツ論議が必要である。なぜなら、危機論では常に後手の理論となり、変化する経営課題に対応することはできないからである。本稿では、企業スポーツの歴史を福利厚生の職場スポーツ、組織の誇りやブランドの担い手としての企業スポーツ、そして広告宣伝事業としての企業スポーツ、崩壊から新たなモデルの提案の4段階でとらえ、これまでの企業スポーツの意味・機能を経営資源の視点で整理する。そして、経団連の「企業のスポーツ支援活動に関する調査報告」及び笹川スポーツ財団の「企業スポーツの現状」調査から企業スポーツの現状をとらえ、その特徴を整理する。さらに、グローバル化する経済環境の中で日本企業が直面している新たな経営課題として「組織力開発」を取り上げ、企業スポーツの新たな可能性を検討する。その結果、企業スポーツは、これからの組織力開発に必要な、多様性の包摂、主体的な参与、豊かなコミュニケーション、組織のグローバル化、そして「学習する組織」の5つの特性を有しており、これからの経営戦略にとって大きな可能性を持つ経営資源であることを論じる。

中澤さんの部活顧問教師の話は、近年注目を集めてきましたが、

学校部活動に従事する顧問教師は、どのような労働問題に直面しているのか。その問題を解決するために、今後どうすれば良いのか。日本の青少年スポーツの中心は、地域のクラブではなく、学校の部活動である。その部活動の指導と運営は、顧問を務める教師によって担われている。しかし部活動は、今日、その持続可能性が危ぶまれている。なぜなら、顧問教師の負担が、かつてないほどに大きくなり、社会問題化してきたからである。政策的な対応が矢継ぎ早に取り組まれつつある中、顧問教師の労働問題は、早急に解決が求められるべき、きわめてアクチュアルなテーマとなっている。そこで本稿では、教育学・体育学領域の先行研究の動向を踏まえながら、部活動の法制度的な位置づけを確認した上で、顧問教師の労働問題の代表例である、勤務時間・手当支給・災害補償の問題を、法律・実態・裁判の観点を組み合わせながら検討した。その結果、いずれの問題においても、法律的なロジックと学校現場の実態には大きな乖離があり、教師は苛酷な勤務状況を強いられていることが明らかになった。さらに裁判結果を見ても、そうした状況が十分かつ適切に救済されるとは限らないことを指摘した。以上から、今後の問題解決のための論点として、部活動の規模を見直すこと、労働の論理を入れること、職員会議を活用することの3点を提起した。

そして、出ました川井さんのプロスポーツ選手の集団的労使関係の論文。

プロ野球、Jリーグに続き、我が国では、B.LEAGUE、四国アイランドリーグplus、BCリーグ、日本女子プロ野球機構などの新興プロリーグが発足している。また、ラグビー界においても、2割程度のプロ選手が存在している。これらの選手は集団的労働法の下での労働者性が認められる傾向にあるものの、個別的労働法上の労働者性は否定される取り扱いがなされている。国際的には、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビーなどいわゆるチームスポーツについては、集団的労働法および個別的労働法の双方について労働者性を認めることにより、あるいはスポーツに特化した立法により、アスリートに明確な法的地位が与えられている。また、近年では各スポーツの制度設計にかかわる意思決定へのアスリートの関与を大幅に認める潮流がある。欧米のプロスポーツでは、労働法制における団体交渉の枠組みを基礎として、従来の規定の見直しや新たな制度設計が合議に基づいて決定されている。このことは、労働者の権利保障という意義にとどまらず、リーグ、あるいは競技連盟側にも大きなメリットをもたらすことになる。スポーツ界特有の制度について、労使の自治において正統な意思決定が保障される限り、司法介入が抑制され、安定的運営が可能になる。そして何より意思決定への関与から生まれる当事者の納得こそが、健全な発展の淵源となるからである。

最近もプロ野球選手会が山口選手の処分見直しを求めて巨人軍に申し入れをしたというニュースがあったばかりですが、この問題、考えれば考えるほど深いです。

|
|

« ジョブ型社会はコネがないとつらい | トップページ | 連合総研『非正規労働問題の今後の課題を探る』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/72053581

この記事へのトラックバック一覧です: 『JIL雑誌』11月号は「スポーツと労働」:

« ジョブ型社会はコネがないとつらい | トップページ | 連合総研『非正規労働問題の今後の課題を探る』 »