労働4・0と労働法制@『労働法律旬報』9月上旬号
『労働法律旬報』9月上旬号が「労働4・0と労働法制」という大変面白そうな特集を組んでいます。
http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/1195?osCsid=09u3cqk3a28prsmf1jo3jlnco7
[特集]労働4・0と労働法制・・・06
デジタル化とAIの労働市場と労働法への影響=高橋賢司・・・07
日本における労働者概念と労働契約―「労働4・0」において「労働者」の定義は変わるのか?=橋本陽子・・・13
プラットホームエコノミーと労働法上の使用者=浜村 彰・・・18
日本における職業安定法と労働力の需給調整に関わる事業の法規制―現状と課題=有田謙司・・・25
日本における労働世界のデジタル化と労使関係(法)=榊原嘉明・・・30
やや出遅れ気味であった日本でも、最近になっていくつかの雑誌でこの手の特集が組まれてきています。
今年だけでも、金属労協の『JCM』が「第4次産業革命とものづくり産業の未来」を、
http://www.jcmetal.jp/news/kouhou/kikanshi2/20809/
JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』が「働き方の未来」を、
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2017/0809/index.html
それぞれ特集しています。ちなみに、いずれにも私と山本陽大さんが登場しており、山本さんはドイツの労働4.0を紹介しています。
今回の『労旬』の特集号は、日独労働法協会が今年5月にドイツで行った日独シンポジウムにおける日本側報告とのことで、やや日本の現状報告という色彩が強いですが、上記諸論文の中では、最後の榊原さんの労使関係(法)にあえて論及したものが一番面白く読めました。
私も、労働のデジタル化に関わる諸問題の中で、現在の日本で一番論じられるべくして論じられていないテーマは、集団的労使関係システムに関わる問題だと思っているからです。
榊原さんが提起する論点はいくつもあるのですが、中でも他に殆ど誰も論じていないと思われるのは、労働組合の労働者供給事業の可能性を論じている部分です。
実は今から5年前の『労旬』で労組労供事業についてのシンポジウムに出たとき、わたしはこういうことを述べたことがあるのですが、
・・・・労組労供の法制そのものについては、行政当局も何も考えずに、戦前の労務供給事業を見て「労働者供給とは事実上の支配関係だ」とか言っているだけで、そもそも労組労供とは一体何であるかをきちんと定義していない。私は、独自の見解を持っております。だれも賛成してくれないんですが、労組労供は労働者協同組合(労協)であるという意見です。
労働者協同組合もまた法制化しようとして、いろいろもめているんですが、物的な事業そのものを労働者が集まって労力を出し合って協同組合でやるというものです。そして、その事業の中身が労働力の供給であるのが労組労供であると考えるのが、法制的には一番素直なのではないかと思っています。
そう説明すれば、労組労供が今まで悩み苦しんできた事業主体性の問題や、誰がどう支払うかといった問題を、一刀両断できるのではないでしょうか。・・・
その時にはまだデジタル化というような話は全然想定外でしたが、この議論は意外に繋がってくるのではないかという気がしています。
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