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2017年9月 6日 (水)

年功序列を維持するために解雇させろという弁護士

不思議な議論を見ました。

途中までは真にもっともな議論を展開しているのです。

41mvhocvl私が『日本の雇用と中高年』で論じた話とも重なる話をしているのです。

ところが、なぜか後半で話が(少なくとも私の目には)おかしな方向にさまよっていっているように見えます。

何がそうさせているのか、いろいろと考えさせるのが、「荘司雅彦の最終弁論」という弁護士さんのブログです。

https://ameblo.jp/masahiko-shoji/entry-12307309443.html(人口構成から考える「終身雇用制度」維持が困難な理由)

・・・・ところが、新入社員の数が減少していけば、管理職の年齢を上げない限り、従来通りの部下の数を維持することはできません。
今まで35歳で課長になれたとすれば、34歳以下の社員の総数が一人の課長の部下の人数枠を確保するくらい存在したということです。
下の年齢の人数が少なくなれば、課長になれる年齢を40歳に引き上げるか、課長になれない人たちを増やすしかありません。
日本の総人口は、今やシェイカー型であってピラミッド型ではありません。
会社組織がその縮図だとすれば、若い社員の数が少なく年長者の数が多い組織ということになります。

はい、まったくその通りです。

私が野村投信に勤務していたとき、男性社員の中で一番員数が多かったのが課長か次長でした。
われわれ平社員は比較的希少な存在だったのです。一つの部に次長や課長が何人もいるという組織でした。
しかし、ROE重視の経営が人件費抑制のプレッシャーとなり、そのような歪(いびつ)な人事体系は多くの企業で維持できないでしょう。

はい、まったくその通りです。ですから、

となれば、「釣りバカ日誌」のハマちゃんのように”万年平社員”が普通になる時代が来るのかもしれません。
給与は年齢給や勤続給部分しか上がらず、実質的に年功賃金制度は崩壊します。

いやそもそも、「年齢給や勤続給部分」自体が既に見直されてきています。

いずれにせよ、戦後日本特有の「誰もがエリートを夢見る社会」が持続不可能であるというこの認識自体はまったく正しいものです。

ところか荘司弁護士はなぜかここからこういう風に議論を進めていきます。

経営サイドとしては、万年平社員を増産するのを避けるため、出世の見込みのなくなった社員の肩叩きを行うでしょう。
下手をすると30代前半で肩たたきをされる恐れもあります。
もちろん、新たな人生を築くべく、自主的に退職して新天地を目指す人たちも増えるでしょう。
このような状況になれば、会社からスピンアウトした社員のために大きな受け皿が必要になります。
人材の受け皿を大きくして流動化を促進させるためには、以前に書いたように、解雇規制の撤廃・緩和が必須条件となります。

なぜか、持続不可能だと断言したはずの年功序列制を断固として堅持することが大前提となり、その不可能を可能にするために、ちゃんと仕事がありその仕事をそれなりにやっているはずの万年平社員のハマチャンたちを、片っ端からクビにせよという提言に至るのですね。

特殊戦後日本的な意味での「終身雇用」、すなわち無限定正社員であることを前提とした仕事がなくなっても解雇せずに社内で維持するというような話はともかく、「いや私は別に課長になりたくないです、ヒラで良いです」と言っているハマチャンを、「いや、我が社は断固として年功序列を維持するんだ、だけど維持できないからお前をクビにするんだ」といって解雇するような、世界中どこに行っても通用しないような話を、もっともらしく正当化してみせるこういう議論に対しては、それが弁護士さんの議論であるだけに、ちゃんと指摘しておく必要がありそうです。

念のためにいえば、そういう無茶な解雇は禁止するにせよ、無限定正社員でなくなればそれだけ仕事がなくなったりすれば雇用終了の可能性は増えることになるので、労働力の流動化に対応した施策は必要になります。

とはいえ、持続不可能な年功序列を断固堅持するから、世界中ごくごく当たり前の万年平社員の増産を避けるためという理由で、「解雇規制の撤廃・緩和が必須条件」というような議論は、世界中どこに行っても通用しないように思われます。

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コメント

Hamachan先生の戸惑い?に概ね賛同しますが…。とはいえ、ポストにあぶれた中高年平社員を「彼は真面目でいい人だから」というくらいの軽い理由で、今後とも年齢相応の高給を支払い続けていく(本体でキープする)のはさすがに無理があるよね、という程度のラフな主張にしか見えませんが…。

ただこれは何も新しい議論でも全くなく、年功序列の組織ピラミッドの維持が難しいとは90年代から始まる平成不況でずっと言われ続けてきたことではないですか。さりとて、この議論の飛躍であり、ニッポンの雇用社会としてゆめゆめ受け入れ難いポイントは、やはり「解雇規制の撤廃/緩和」という辺りですよね。

ジョブ型雇用の世界でもそうですが、ビジネスが現実のグローバルな経済社会を相手にしている限り要員や人材のミスマッチはいつでも起こりえます。その時、人間であれば当事者の人格が、会社であればファームの姿勢やミッションが問われるのです。

私見では、件の「解雇規制」からのアプローチではなく、当事者間の「合意退職」の手続き妥当性を保証するための適切な仕組みや法的ガイドラインこそ、日本で一番必要とされているものなのではないかと。もっとも、今でもそれに相当するものが全くない訳ではありません(再就職支援会社のノウハウなど)が、もう少し労働者寄りの寛大なルールなりパッケージ(お金だけでなく再就職支援/訓練も含めた保証)が整備されてよいと思うのです。

投稿: ある外資系人事マン | 2017年9月 6日 (水) 17時47分

いや別に「年齢相応」で賃金を決めるっていうのがもう難しいって話でしょ?
業務を与えて、それを達成したら給与に見合った売上があがる仕組みでそれが出来ていてなぜ「年齢が上がっただけ」で職を解かれるってのがよく分からんです。

むしろもう片方で雇用流動化において問題なのは、募集の際に特殊事例として年齢制限を儲けられる幅が広すぎることだ思うのですが。いかがでしょうか。

投稿: Dursan | 2017年9月 7日 (木) 07時38分

中高年社員に高給を支払わなければならないのは、年功賃金が維持されるから。年功賃金が維持されないのであれば、高給を支払う必要はない。年功賃金が崩壊するのであれば、もはや中高年社員に高給を支払う必要はないのに、中高年社員を解雇せねばならぬとはこれいかに?

という話だと思うのですが、どうもレトリックが理解されていないようですね。

また、年功賃金も「解雇規制」も我が国の法令によって強制されているものではないですね。法律と就業規則・雇用契約との混同がここにもみられるというわけです。しかも弁護士を名乗る人物なのですから、先生も突っ込みをいれずにはいられますまい。

なお、年齢を理由とする解雇は不当な差別にあたり、我が国の法律で禁止されている行為だということも念のため申し添えておいた方がよいかもしれません。これは ILO の条約をもとにしていて、いわば「グローバル・スタンダード」というやつですね。グローバル化に対応するというのなら、人権意識の方も是非ともグローバル化していただきたいものですね。

投稿: IG | 2017年9月 7日 (木) 21時31分

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