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2017年9月17日 (日)

女性活躍と生殖適齢期

Dio 連合総研から『DIO』329号が届きました。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio329.pdf

特集は「女性の活躍は進んだか」です、

女性の活躍は進んだか 〜女性たちが直面する課題を考える〜 男性をふくめた働き方改革の必要性 大沢 真知子 …………………4

「生殖適齢期をふまえた」女性活躍推進企業への転換が急務 天野 馨南子 …………………8

女性の活躍推進になにが必要か~職場の要因から考える~ 大槻 奈巳 …………………14

女性活躍推進法に対応する企業の取組みと労働組合の役割 神尾 真知子 ………………19

この4人のうち、大沢さん、大槻さん、神尾さんについてはこの手のトピックでよく登場するのでだいたい中身も予想が付くでしょうが、2番目の天野さんのは「生殖適齢期」といういささかむつくけな言葉もあり、興味をそそられます。引用したい箇所が多すぎるので、やや長々と引用。

・・・ここで一点、大切な視点を提示しておきたい。

 読者の企業は、女性の(結婚・)妊娠・出産といったライフイベントが30代後半に設定せざるを得ないような人材育成・雇用管理制度が当たり前となってはいないだろうか。図表3で示されるように、女性が自然に妊娠を希望する場合、30代後半では3人に1人が年齢的な不妊にすでに陥っている。5年前であれば妊娠できたはずの同じ女性が年齢上昇することだけによって、不妊になる割合が30代後半で大きく増加する。・・・

・・・少し前までは少子化対策は子育て支援策である、と考えている世論が大半であった。しかし、日本の合計特殊出生率は1.44(2016年)であるものの、完結出生児数(結婚後15年から19年の初婚夫婦が最終的に授かる子ども数)は2015年で1.94であり、政府が掲げる希望(を叶える)出生率1.8よりも多い数値となっている。

 この差はなぜ生じるのか、というと、合計特殊出生率は分母に既婚女性だけでなく、未婚女性が含まれているからである。・・・

つまり、計算上、分母の未婚女性(特に生殖適齢期)の割合の増加が合計特殊出生率を引き下げていることになる。日本の少子化問題はまさに生殖的適齢期男女の「未婚化問題」の様相を呈していることがデータ的には指摘できる。・・・

・・・結婚や子どもをもつことは個人の勝手、ではあるものの、約7割の女性が仕事をもちつつ子どもをもつことを希望し、また、日本という社会が結婚をステップとして出産に踏み切る社会である以上、思うようにカップリングや妊娠出産が出来ない環境を企業が生み出しているならば、企業が次世代育成の実現に果たす役割(責任)はあまりにも大きいといえるだろう。

・・・先に述べた筆者のもとに訪れた「妻の妊娠希望にまったをかけたことを後悔する優しい夫たち」と同じことを、雇用する女性たち、もしくは雇用しようとする女子学生たちの「女性活躍」を期待するが故に、求めてしまってはいないだろうか。

・・・現状を見る限り、日本の働く母は「スーパーウーマン」を期待され、それに応えて戦っている。晩産化は女性の身体にとって、心身ともに母体リスクを引き上げる現象である。しかしながら日本における女性の出産年齢の上昇は止まる様子がない(図表9)

・・・母体のリスクはそのまま、赤ちゃんの将来のリスクである。母親の笑顔なくして、その子どもの、そのパートナーの幸せなどあるはずもない。

 スーパーウーマン頼みの企業経営は女性の身体にも、次世代育成にも、決して優しくない。労働組合は日本のお母さんを、お母さん候補を守る「最後の砦」ではないだろうか。夫であっても、親であっても、「お母さん(候補)」とそのパートナー(候補)の仕事年齢 のコントロールには力が及ばない。

 約7割の未婚女性が仕事も子育てもしたいとの理想を描く日本。

 10年後、20年後、「モノやサービスを提供する人もいなければ相手もいない」そんな経営に企業が嘆く前に、今、労働組合がその企業に提言できる「生殖適齢期をふまえた経営」は、まさに日本の未来を大きく変えるのではないだろうか。

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 この問題、ご記憶の方もおられるでしょうが、拙著『働く女子の運命』の最後のところで、海老原嗣生さんの議論を意識的に敵役に仕立てて論じたところです。

・・・ところが、そういう男女の対称性が破れる領域があります。いうまでもなく、生物学的に女性しかやれない妊娠、出産をめぐる領域です。・・・

・・・この問題が本書の一貫したテーマである日本型雇用と交差するのが、出産時期の問題です。・・・

・・・しかし、にもかかわらず、この問題を女性という第三の変数を含む三元連立方程式として解こうとすると、この解は女性に高齢出産を要求するというかなり問題含みの解になってしまうのです。海老原氏の『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)は、その最終章「「35歳」が女性を苦しめすぎている」で、「出産は20代ですべき」という論調に反発し、さまざまな医学的データまで駆使して、30代後半から40代前半で子供を生んでいいではないかと、高齢出産を余儀なくされる女性たちを擁護します。

・・・・・・・

働く女性を応援しようという海老原氏の意図はよく伝わってきます。しかし、それで正しい解になっているのか、正直、私には同意しきれないものがあります。・・・

マタニティという生物学的な要素にツケを回すような解が本当に正しい解なのか、ここは読者の皆さんに問いを投げかけておきたいと思います。

女性にハイリスクの高齢出産を強制するような形でしかやらないような女性活躍でいいのか?という問題意識を提起したつもりだったのですが、残念ながらあまり取り上げられることはありませんでした。

この問題を、あえて「生殖適齢期」という、うかつに男性が使うと批判が集中しかねない用語をあえて用いて提起した天野さんの議論には、やはり敬意を表したいと思います。

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コメント

親が30台後半で産んだ子供がやはり30台後半で子供(孫)を産むと親はその時は後期高齢者に近いので、子供にとっては親に子(孫)育てを手伝ってもらうどころか、子育てと親の介護を同時に行う可能性もあると思います。

投稿: Alberich | 2017年9月18日 (月) 21時06分

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