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日本的柔軟性からデジタル柔軟性へ@『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年8・9月号

20170809 『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年8・9月号に載った私の講演録「日本的柔軟性からデジタル柔軟性へ」がサイトにアップされたので、リンクを張っておきます。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2017/0809/007-009.pdf

労働社会の大きな転換点

 私からは技術革新に伴う労働の世界の変容について、日本の文脈に照らしながらお話しさせていただきます。ライダー事務局長のお話にもあったように、今、世界的にも労働社会は大きな転換点にあると思いますが、そこには世界共通の文脈と日本独自の文脈があり、この二つが絡み合って進んでいるのが、日本の現実ではないかと思います。

日本の文脈

日本的柔軟性からの脱却?

日本的デュアリズムからの脱却?

働き方改革の目指す社会は?

新たな柔軟性への方向性

デジタル化と第4次産業革命

「いつでもどこでも」再び

新たな自営業の世界 

非雇用型テレワークの法的保護

集団的“労使”関係の再認識

 最後に、一つ指摘しておきたいは、集団的労使関係の意義を、再認識する必要があるのではないかということです。自営業(雇用類似の働き方)は、法的には厳密な意味で労使関係はないわけです。しかし、エンプロイヤーではなくても、使う側、ユーザーというのはあるわけですし、エンプロイーではなくても、労務を提供する人、ワーカーはいるわけです。事実上、労使関係に近い社会関係が存在するはずです。

 そうすると、こうした人々にどういうルールを設定するか。そして、そのルールをどのように実施していくかについて、これを労使関係といっていいのか、わかりませんが、集団的な労使関係を活用できるかどうかが、今後の課題になるのではないでしょうか。集団的といっても大きく2種類あり、一つは、労働組合タイプの結社型の集団性、もう一つは労使協議会タイプの機関的な集団性。これを組み合わせながら、解決の方向性を考えていく必要があるのではないかと考えております。

 日本には労働組合法があり、そこで労働組合は労働協約を締結することができますが、実はそれだけではなく、六法全書の経済法のところに中小企業協同組合があり、それを見ると、多くの方はご存じないかもしれませんが、協同組合も自分たちのメンバーのために交渉をし、団体協約を締結する権利があると書かれています。

 いわゆる独禁法などの競争法との関係をどう整理するか。労働者の外縁にあるような人々を集団的な枠組みでどのように対応していくかを考える上で、拠り所になる法制度があるのかもしれない。若干トリビアルな知識を提供させていただいて、私の基調報告にしたいと思います。

このあとに、大内伸哉さんを司会に、経団連から徳丸洋さん、連合から安永貴夫さん、NIRAの神田玲子さんに私も含めたパネルデスカッションも、ここに載っています。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2017/0809/010-022.pdf

そこでの私の発言をピックアップしておきます。

・・・・・

濱口 仕事の未来といった大きなテーマについては、わかりやすい答えはないというところから出発した方がいいと思っています。これが答えだというのには必ずデメリットがある。社会は複雑な連立方程式だということを念頭に置いた方がいいのではないでしょうか。

 技術革新で言うと、AIは3回目です。70年代から80年代にかけては、当時はマイクロエレクトロニクス(ME)といっていました。次が90年代から2000年代にかけてのインフォメーションテクノロジー(IT)。そして今のAI。少しずつアルファベットの組み合わせが変わってきているだけでなく、もちろん中身も変わっている。MEの頃は、日本的雇用に対する自信が大変強くて、欧米はだめだ、日本型雇用だからME革命に対応できるという論調が非常に強かった。しかしITになると、それが崩れて、今のAIになると、日本的雇用は劣勢に立たされる。

 しかし、日本的雇用がそもそもいいか悪いかではないのです。むしろ、少子高齢化、仕事の女性化(フェミナイゼーション)、あるいはグローバル化の進展といった、いわゆるソサエタルという意味での社会的な変化によって、今まで日本型雇用の強みと言われていた面が、同時に弱みでもあることが露呈してきました。いままで犠牲にしていたものに配慮しなければならなくなるのです。

 そうすると、ここに強みがあるから断固維持するといっても維持できるものではありません。そういう意味で、社会は連立方程式なのです。例えばこれから職務型になるということは、技術革新に対して柔軟に対応しにくくなるという意味で、ある種の脆弱性を引き受けることにもなります。両立しがたいものを両方させながら連立方程式を解くことが、実は仕事の未来を考えることになるということを念頭に置く必要があるということだけ、申し上げておきたいと思います。

・・・・

濱口 キーワードとして大事だと思ったのは、神田さんがプロフェッショナルと言われ、安永さんが、強い労働者というのはむしろ一部でしかないと言われた。これは重要なポイントのような気がします。技術革新やグローバル化は、一人ひとりにはどうしようもないような大きな流れで、それにどうアダプトしていくかが共通の課題です。その際、アダプトしていく能力を身に付けなければならないのは当然ですが、みんな頑張る義務があるような形で定式化してしまうことがいいのか。ここは考えた方がいいのかなと思います。だからこそ、労働組合が生まれたんだろうと思う。一人ひとりではそこまで頑張れないがゆえに、集団的な枠組みで支えてきた。先ほどライダー事務局長が集団性に触れ、私も申し上げたのは、一人ひとりのプロフェッショナリズム、自覚、キャリア権はもちろん大事なのですが、それだけではない枠組みが必要だということ。この問題を考える上で重要な一つの軸になる。そういうことを安永さんも言いたかったのではないかなという気がいたします。

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濱口 この問題もマルかペケかの議論をすればするほど、現実からずれると思います。明るい話と暗い話の両方をにらみながら考えないといけない。自由に、いつでもどこでも好きなことをやりたいというのを潰してはいけないと同時に、その脆弱性を補償する仕組みをつくらなければいけない。もちろんフリーランスには、企業の枠には縛られたくない、個人プレーが好きだという面もありますが、プロ野球選手も選手会という形で団結している。フリーランスでも、何らかのつながりが必要になるのではないでしょうか。

 IT技術革新がどんどん進むと、人同士が面と向かう必要がなくても、ある種のプラットフォームという場で、個人請負的な人たちの団結、集団性を形成する基盤が実はできつつあるのかもしれない。そういう動きをヨーロッパでは労働組合が始めていると聞いています。

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