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2017年8月18日 (金)

良いブラック企業へ行きなさい

Ce98bbf16029172a00509794f0fc5867フォーブス・ジャパンのサイトに、パク・スッチャ氏が「「ホワイト企業」がベストな就職先、と考えない理由」を寄稿しています。

https://forbesjapan.com/articles/detail/17326

ほぼ冒頭でいきなり、

しかし私は、就職活動中の娘に「良いブラック企業へ行きなさい」と言った。

と一撃を食らわしてきます。

どういうことか?

私の思う「良いブラック企業」は、成長につながる難易度の高い仕事を若いうちから与え、時間でなく、成果で評価する。結果として長時間労働になる可能性があるが、それを良しとする企業だ。慢性的な長時間労働はなく、社員が成果を出せるよう働き方にも裁量を与え、同時に責任も持たせる。

思わず目を逆立てる人もいるかも知れませんが、ここで言われていることそれ自体は筋の通った話です。

というよりむしろ、かつて30年前を中心に褒め称えられていた日本型雇用システムの良い面を象徴的に描写すればこうなるといった方が良いかもしれません。

「ジョブ」という固定した桎梏に縛られた疎外された労働ではなく、企業「メンバーシップ」という大きな枠の中で難しいタスクを与えられそれをこなしながら成長していけるまことに人間的な労働、と、かつてマルクス主義に幻滅したあと労働の人間化を追い求めた類の人々は評したでしょう。

もう少し醒めた客観的な表現をするならば、その部分だけ取り出せば苛酷な労働と貧弱な報酬の不当な交換に見えるけれども、入社から定年退職までの長期的なトランザクション全体としては、若い頃のやや無理な労働をこなすことが中年期の知的熟練のもととなり、それに応じた高い報酬をもたらすことになるので、労働者にとって決して損な取引ではない、ということになりましょうか。

それ自体は必ずしも間違っていません。ただ問題は、少なくとも仕事をやらされている局面を切り取ってきてそれを見ているだけでは、それが言うところの「良いブラック企業」なのか、そうではない悪いブラック企業なのかが区別しにくいということです。

若い頃の苛酷な労働と貧弱な報酬だけがあって、しかしそれが長期的なメリットにつながらないような企業、官庁用語で言えば「若者を使い捨てにする」企業が目立ってきたから、それをブラック企業と呼ぶようになったわけです。そして、予定は未定にして決定に非ず、それが良いブラック企業であったか、悪いブラック企業であったかが確定するのは、もう取り返しが付かなくなってからでしかなく、それまでは何とかの猫と一緒でどっちか不確定と言わざるを得ない。

実はこれ、ブラック企業問題をPOSSEの人々が取り上げて世に訴え始めた頃から、私が指摘していたことでもあります。当時噴出してきたブラック企業とは、それまでの良い企業モデルであった「見返りのある滅私奉公」の形式をそのまま利用しながら、その実「見返りのない滅私奉公」になっているところにあり、それゆえに、どんなにブラック企業問題を訴えても、俺も若い頃はそれくらいむちゃくちゃに働いたもんだ、という風に片付けられがちだったという話です。

その意味では、久しぶりに懐かしい話を聞いた感もあります。

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コメント

「良いブラック企業」なのか「悪いブラック企業」なのかは、結局、その企業の将来の業績次第なのではないかと思いますね。「労働者を搾取してやろう」などと考えている企業は多くはなく、従業員に賃金・待遇面で報いることができるかどうかは将来の業績次第、という企業が圧倒的多数なのであろうと思います。

金利がゼロの経済というのは、無リスク投資のリターンがゼロの経済ということに他ならないわけでして、結局のところ、現在の経済状況にあって、労働者が将来の高賃金・高待遇を得ようとするならば、それだけ高いリスクを負わなければならない、ということなのでしょう。現代は無リスクで確実なリターンが得られる投資の存在しない時代であり、当然それは労働者にとってもそうである、ということですね。

個人的には「ブラック企業」とそれ以外を分けているのは法律を守っているかそうでないかであって、長時間働かせるかはあまり関係ないというか、そうすると効率悪いので普通やらないでしょ。と言う立場です。

だから「良いブラック企業」なんぞは「反物質」もしくは「虚数」みたいなもんで説明上必要だから作った概念かなと。

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