自分の子孫だけが幸福になる社会など存在しない
『生活経済政策』9月号が届きました。特集は「子ども・子育て支援を巡る政策動向 ― 子ども保険や奨学金政策をどう評価するか ―」です。
http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/
今まさに話題のトピックでもあり、興味深く読みました。
•はじめに/駒村康平
•[総論]子ども・子育て支援を巡る政策動向 — 子ども保険や奨学金政策をどう評価するか/駒村康平
•育児支援政策の歴史的展開と今後の方向性 — 「子ども保険」の構想を受けて/ 福田素生
•「こども保険」による幼児教育無償化の問題点/池本美香
•奨学金受給は大学進学、大学卒業後の収入・正規就業に寄与しているのか/萩原里沙
総論の駒村さんは、幼児教育無償化は高所得層の親たちの負担を減らすだけでデメリットが大きい、子ども子育て支援の拡充は必要だが、まず消費税の引き上げを再開すべきだと、かなり辛口の批判をしています。
ただ、その最後のこの一節はなかなか味わいのある言葉になっているので、ちょっと長めですが引用しておきますね。
・・・以上、本稿では、子ども保険と幼児教育無償化について批判ばかり行ったが、子ども保険の議論がもたらした重要な意義もある。福田も指摘しているように、シルバー民主主義が強まる中で、真正面から子ども向けの給付のための国民負担増の議論を打ち出した点である。幼児教育無償化には課題があるものの、子ども・子育て向け政策の拡充と財源の確保は必要である。これには高齢世代の協力、すなわちシルバー民主主義の克服は重要である。高齢化の中で有権者の構造も高齢化し、政治的に高齢者の発言力が増す。子ども向けの社会保障は軽視され、高齢者向けの社会保障が増大し、社会保障の世代間の不公平は拡大していく。少子化は続き、次世代に残されるのは膨大な債務と負担ばかりとなる。高齢世代は自分の子孫は大事だが、次世代には関心がない。しかし、ここでも大事なのは、自分の子孫だけが幸福になる社会など存在しないということである。・・・・・
そう、高齢者を優遇することの最大の問題点は、実は(薄っぺらな世代間対立論者の認識とは異なり)金持ちの高齢者が自分のDNAを受け継ぐ若者に「のみ」その豊かさを注ぎ込み、若者世代における貧富の格差が増幅されるということにあるわけです。しかし、そんなDNAクラシーは決して持続可能ではないのですが。
豊かな親や祖父母を持てなかった「運の悪い子供たち」を見捨てる社会にならないためにはどうしたらいいのか。
その意味で「自分の子孫だけが幸福になる社会など存在しない」という決め台詞はとても重要です。
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