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2017年7月 8日 (土)

過半数組合の証明

As20170707004954_comm 朝日にこういう記事が載っていますが、

http://www.asahi.com/articles/ASK77659RK77ULFA02L.html  (電通、ずさん労務管理あらわ 社員が「違法残業状態」)

広告大手、電通(本社・東京)の違法残業事件で、東京地検は7日、法定労働時間を超えて社員を働かせるために労使が結ぶ「36(サブロク)協定」が労働基準法の要件を満たさず、無効だったと発表した。1日8時間を超えて働く本社の社員が一時期、違法残業の状態にあったことになる。電通のずさんな労務管理が改めて浮き彫りになった。・・・

これ、記事は簡単に斬って捨てていますが、実は結構深い論点がいっぱいあります。

そもそも、集団的労使関係システムでは、労働組合が締結した協約はその組合の組合員にのみ適用されるのが原則という一つの原理と、(一定の要件を満たす)労働組合の締結した協約がその組合の組合員以外にも適用されるというもう一つの原理とがあります。日本の労組法にもその両方の原理があります。

一方、労働基準法の36協定というのは、制定過程からすればもともと上記集団的労使関係システムにおける過半数組合の協約の一般的拘束力的な性質を持ちつつ、それに無組合企業における過半数代表者をくっつけてできたややキメラ的な存在であり、しかも戦後70年間集団的労使関係法制では複数組合平等主義が一貫して取られてきたために、労働組合が過半数であるかとか4分の3以上であるかといったことが組合法プロパーの問題としては殆ど議論にならないまま推移してきてしまったため、終戦直後にはいくつか試みられた多数原理の残存物のようになってしまいました。

しかし、労働組合法それ自体において過半数かどうかが重要であるならば、例えば労働委員会で過半数組合であることの認証をすることで、その過半数組合の締結した協約の効力を確保するといった仕組みがあり得たかも知れませんが、まったく行政系列の異なる労働基準法システムにおいて、持ってきた36協定にサインしている労働組合が過半数組合であるかどうかをどこかが確認するという仕組みは、少なくとも公的にはまったく存在しないのですね。

そして、36協定という制度の問題としては、これは現場の人はみんなわかっていることですが、過半数組合かどうかは別として労働組合がちゃんと結んでいるなら御の字で、一体何者がサインしているんだか疑いだしたら切りのない過半数代表者という労働者一個人がサインした36協定が圧倒的大部分であるわけです。

労基法施行規則の規定からすれば、これはちゃんと選挙等で選出されたのかどうかを確認しなきゃいないわけですが、窓口でそうですね、そうですよといわれたらそれまでで、いちいちその会社に出かけていって、この過半数代表者ってのはほんとに選挙で選ばれたのかどうかを確認しなきゃいけないということになったら、まあ全国の監督署は麻痺するでしょう。それでも、最近の裁量労働制の判決などもあり、これからより厳しく見ていく必要が出てくると思いますが、それよりさらにまっとうな、確かにそれなりの労働組合が存在しているところで、それが本当に過半数をクリアしているかどうかを、さあ一体誰がどうやって確認するのか。

電通広報部は取材に対し、「正社員の労働組合には過半数が加入していたが、非正社員が増えたことで全従業員に占める加入者が半数を切ってしまった」と説明。昨年11月の厚労省による強制捜査後に指摘を受け、選出した従業員の過半数代表者と36協定を結び直し、現在は違法状態を解消したとしている。

正社員のみを組織する正社員組合という性格を維持したまま、労働者の非正規化を進めてきた結果、それまでの過半数組合が過半数組合ではなくなってしまったという事態は、実は過去十数年間あちこちの職場で起こっています。一部の労働組合は積極的に非正規の組織化を進めることで対応しようとしていますが、そういうめんどくさいことをしないで解決しようとすると、電通のように、過半数じゃない組合があるのにそれとは別に過半数代表者と協定を結ぶということになってしまいます。さてそれは労働法の本来の趣旨に沿っているのでしょうか。

わたしはここは、個別労働法制と集団労働法が原理レベルで絡み合っているので、解きほぐそうとするといろんなことどもがぞろぞろと全部引きずり出されてくる分野であると思っています。朝日の記事がいうほど単純な話ではないのです。

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コメント

朝日新聞は単純なのでしょうか。この論点を仔細に報じるだけ、一般人レベルの単純ではないのかも。
7月2日にこんな記事だしてますね。
https://www.google.co.jp/amp/www.asahi.com/amp/articles/ASK716SR6K71ULFA00F.html

個人的にはこれが本質なのではないか。なにも複雑でないのではないか。労働組合中央団体に忖度することなく、パンドラを開き、単純なことを明らかにしていくことが、肝要なのではないかと思います。

ユシ、チェックオフ依存組合でしょうから、過半数かどうか把握してるのが当然で、杜撰さ(or遵法意識の欠如)は免れないかと思いますが…

投稿: 万年係員 | 2017年7月10日 (月) 22時50分

上の投稿の添付URLを間違いましたので、正しいものを添付し直します。ごめんなさい。

http://www.asahi.com/sp/articles/ASK716SR6K71ULFA00F.html

投稿: 万年係員 | 2017年7月11日 (火) 07時00分

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» 無効な労使協定が多いのに違法残業は野放し [シジフォス]
珍しく原稿を3本抱えて苦吟していたらTVで「36協定」の短いCMが流れて、内容は分からなかったが連合提供だった(と思う)。どこまで議論し、高額をかけてこんな内容を流したのか…苦笑。東京ユニオンの7/8Twitterに<連合、「残業代ゼロ」修正要請へ 労基法改正案で | 2017/7/8 - 共同通信 47NEWS https://this.kiji.is/256379483136950276… 連合加盟産別所属の単組ですが、まったく聞いていません。なぜ最近の連合は、加盟組織を蚊...... [続きを読む]

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