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「国家戦略特区における農業外国人労働の解禁」@『労基旬報』2017年7月25日号

『労基旬報』2017年7月25日号に「国家戦略特区における農業外国人労働の解禁」を寄稿しました。

 先の通常国会は、共謀罪とかテロ等準備罪と呼ばれる組織的犯罪処罰法改正案と、とりわけ国家戦略特区における獣医学部新設問題が争点となり、会期末には政争状態となりましたが、その会期末の6月16日に国家戦略特区法の改正案がひっそりと成立していたことを報じるマスコミはほとんどなかったようです。しかしその改正法には、日本の外国人労働政策の根本原則(岩盤規制?)を大きく転換させるような内容が含まれていたのです。
 そもそも国家戦略特区とは、いわゆる岩盤規制に突破口を開くために、特定の区域に限って規制を緩和するという仕組みです。ですから本来的に、特区でうまくいけば全国に拡げていくという含みがあります。国会で問題になった獣医学部新設のような箇所付け問題はむしろ枝葉末節であって、将来的な全国レベルでの規制緩和のための橋頭堡という性格こそが重要です。
 その意味で、先の国会で成立した改正法に盛り込まれた「出入国管理及び難民認定法の特例」(第16条の5)の持つ政策的含意は極めて大きいものがあります。条文はわかりにくいので、2月21日に国家戦略特別区域諮問会議がまとめた「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」から当該部分を引用しましょう。

(2) 農業の担い手となる外国人材の就労解禁
・産地での多様な作物の生産等を推進し、経営規模の拡大、経営の多角化・高度化などによる「強い農業」を実現するため、農業分野における専門外国人材の活用を図ることが喫緊の課題である。
・このため、特区において、外国人の人権にも配慮した適切な管理体制の下、日本人の労働条件及び新規就農に与える影響などにも十分配慮した上で、一定水準以上の技能を有する外国人材の入国・在留を可能とするため、今国会に提出する特区法改正案の中に、特例措置等の必要な規定を盛り込む。

 「専門外国人材」とか「一定水準以上の技能」といった言葉をちりばめることで、外国人政策の転換ではないという印象を与えるように工夫されていますが、いうまでもなく彼らはこれまでも受け入れてきた「高度専門人材」ではありません。これまで国策として否定してきた外国人単純労働力の導入とは、清掃雑役といった真の単純労働ではなく、製造業や建設業などのいわゆる技能労働力のことですから、これは農業分野でその岩盤を突破しようとするものといえます。
 もちろん、これまでも日系南米人や研修・技能実習生という形で、事実上技能労働力に相当する外国人が相当数導入されてきたことは確かですが、彼らは社会学的分析においては外国人労働者と呼ばれて誰も疑いませんが、日本国の法律上は労働力として導入された人々ではないという建前で通ってきているのです。昨年ようやく制定された技能実習法においても、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条第2項)という建前規定が厳然と置かれています。あくまでも、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進すること」(第1条)が目的なのです。
 それに対して、今回の改正法では「政令で定める農作業等の作業に従事することにより、農業経営を行う者を支援する活動」(農業支援活動)を行う外国人を雇用契約に基づいて受け入れる事業について在留資格の特例を認めようとするものだと明記しているのですから、まさに「労働力の需給の調整の手段」ということになります。なお条文上は明確ではありませんが、国家戦略特区ワーキンググループにおける審議を見ると、派遣労働を活用することを考えているようです。
 国家戦略特区のトピックには大小さまざまなものがありますが、半世紀以上にわたる日本の国策をいとも軽々と乗り越えてしまったという意味において、今回の改正ほどインパクトの大きいものはないのではないかとすら思われます。
 ここでは、労働力需給調整の手段として、つまり農業の人手不足対策として、外国人労働者の導入を図る政策自体の是非を論じることはしません。そのためには膨大な議論が必要です。しかし、これほどの大きな政策転換につながる法改正が、ほとんどのマスコミが報じることもないまま、会期末に成立していたということは、もう少し知られてもいいのではないかと思われます。

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