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2017年6月13日 (火)

同一労働同一賃金ガイドラインの「へそ」@WEB労政時報

『WEB労政時報』に「同一労働同一賃金ガイドラインの「へそ」」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=663

 昨年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示され、今年3月28日には働き方改革実行計画が策定されました。4月28日から労働政策審議会に設けられた労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会が毎週のように開かれ、去る6月9日に部会報告が公表されました。
今後はパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の3法を一括改正する法改正案が国会に提出されることになっています。2017年度中に法改正がされて、2018年度から施行される――というかなり気の早いスケジュールなので、企業の人事担当者の方々も常に法改正の進展に注意を向けていなければいけない状況でしょう。
 もっとも今回、・・・

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コメント

確かにHamachan 先生が懸念されるように、まず間違いなくほとんどの日本企業において正社員と契約パート社員の賃金規程は「別もの」でしょうから、昨今の同一労働同一賃金ガイドラインが暗黙の前提としている「両者が同じ賃金制度の下に置かれていること」は非現実的なアサンプションと言えるでしょうね。

その上で、ご指摘にありますように年末の同ガイドライン案の「注」に記載された「両者の基本給や手当といった賃金に差がある場合は、その違いの理由が〜①職務内容(業務内容、責任の程度)、②職務内容と配置の変更の程度(人材活躍の仕組み)、③その他の事情〜の客観的具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない」だけでは、企業の人事担当者は「具体的に両者の賃金制度がどのようであればよいのか、一番知りたいであろうことがここには全く書かれていないため、何がセーフで何がアウトかのヒントさえ全くないまま手探りで対応していかなければならない」とお嘆きになる気持ちも理解できます。

ただ、実は私自身もこの政策審議会に二度傍聴させて頂きその論点を聞いていたところ、現状の課題として上記の「3つの考慮要素」の解釈の幅が大きく、予見可能性があまり高くないという点についてまさに真剣に議論されていたのです。その結果、6/9最終回後の報告書をご覧頂ければお分かりの通り、今後は3考慮要素の「③その他の事情」に「職務の成果」「能力」「経験」を例示的に明記していくことが提案されています。

そこでここからは少し飛躍することを承知で大胆に申し上げれば、これらの3考慮要素を私なりに理解&整理すると、これは正に「日本型職務評価」の枠組が(期せずして漸く網羅的に)示されたといってもよいのではないでしょうか...。

つまりは、両者の職務の大きさを分析&比較しする上での考慮要素(point factor)として、次のように職務評価を行う上での必要な項目が網羅されたのです。その要素とは、

1. インプット要素(③の能力、経験)
2. スループット要素(①の業務内容と責任の程度、②の人材活用の仕組み)
3. アウトプット要素(③の職務の成果)

驚くことに、これは職務評価手法で先駆的で有名なHay systemの3要素 である〜Know-how, problem solving, accountabilityにぴったり対応しているのです。(ヘイシステムは、米国1963 Equal Pay Act の法律に沿った仕組み)

すると、年齢か能力か職務か?という永きに及ぶ人事賃金制度の哲学論争は、21世紀最新の同一労働同一賃金の政策審議会における詳細な検討を経て、少なくともそのボトムラインにおいては、期せずして「職務」への原点回帰に近づいたのではないかと思えるのです。

Web労政時報の中にあった記述〜「こういう状況の中で人事担当者としてはどうするのが一番よいやり方なのか、本当は人事コンサルタントと言われる人々が真剣にあれこれ頭を悩ませて考えを示してほしいところです。しかし、今のところ事態の急展開についていけないようで信頼できるガイダンスは見当たりません。」〜について、私自身、元人事コンサルタントの端くれとしてあれこれ考え続けています…。

振り返れば、あの時代90〜00年代「成果主義」なるマジックワードが日本列島を席巻したとき、マスコミも人事担当者もコンサルタントもどうやら国民的に大きな勘違いをしてしまったようです。すなわち、定量的で厳格な業績評価によって各人の賃金や賞与や昇格の運用をダイナミックに上げ下げする「成果主義」なる人事制度があたかも「欧米のデファクトな人事制度」なのだというように。

今になって冷静に見ればあれは完全に誤解、全くの勘違いでした。ごくごく一部の業績評価が極端に厳格な企業(GEなど)のプラクティスを見て、あたかもそれが欧米企業のスタンダードなのだと(喩えればトヨタの仕組みを見て、それが日本企業全体の仕組みだと…。)あのF通の衝撃的告発本のショックに国民全体がすっかり惑わされてしまったのです…。

もちろん、普通の外資系企業の現実は異なります(今でも実際にどれだけの人がしっかりと理解されているのかかなり不安なところがありますが)。すなわち、Hamachanブログ読者であれば皆ご承知のように、外資系企業はいわゆる日本で議論されがちな人事制度(等級制度や賃金制度)とは全く異なるレベルの次元において〜すなわち労働者を雇い入れて配置異動させゆくその態様そのもの、つまりは労働契約そのものの意味するところにおいて〜根本的に全く異なる様相を呈しているのです。

すなわち外資系企業は「成果主義」ではなく「ジョブ型」だった訳です。そして、それに対して日本企業を「メンバーシップ型」と表現出来たところにHamachan先生の大きな功績があるのだと考えます。

この両者の形態の違いは、人事コンサルタントが制度設計として支援できていた等級制度や賃金制度(職能給、職務給、役割給)を超えて、もっと広い人事実務のスコープ〜採用、異動、評価、育成といった一連の人事システム全体)に及ぶものです。

そしてまさに今、日本の人事コンサルタントが沈黙せざるを得ない理由は、これまでの二十年間、両者の根本的な違いを指摘/意識せずに(メンバーシップ型であることを暗黙かつ所与の前提として)制度設計に没頭できていた状況からガラリと環境が変わってしまったという点にあります。

ではどうすればよいのか?もちろん競争環境や戦略が異なりますので各社の対応は異なるかと思いますが、やはり「現実」にしっかりと目を向けて、採用、異動、評価、報酬、育成といった一連の人事施策(これをタレントマネジメントとも呼べますが…ただ、もう言葉の遊びはやめましょう)を新しい目で見直していくしかないでしょうね。

ワークライフバランス、ダイバーシティ、クラウドワーク、そして同一労働同一賃金…。

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