『季刊労働法』2017年夏号(257号)
『季刊労働法』2017年夏号(257号)が届きました、特集は「戦後労使関係法制の比較法研究―1950年を切り口に」です。
昨年から,フランスで労働法制改革に反対して大規模ストが繰り返されたり,イギリスでストの手続規制をさらに厳しくする法律が成立するなど,集団法の問題が改めてクローズアップされている気がします。こうした動きも見ながら,戦後の法制の出発点に遡って労使関係法を考える特集を予定しています。
この特集に結構たくさんの研究者が論文を寄せていまして、英仏独米それぞれについて、ベテランと若手のタッグで構成されています。
戦後労使関係法制の比較法研究―1950年を切り口に
本特集の趣旨 一橋大学教授 中窪裕也
イギリスの1950年当時の労働組合法制 立教大学准教授 神吉知郁子
イギリス労使関係法の転換期と1950年代の位置づけ 専修大学法科大学院教授 小宮文人
フランス労使関係法の展開過程 ―二元的代表システムの確立とその後の変容― 九州大学名誉教授 野田 進
フランス労使関係法システムの特徴についての少考 ―野田論文を受けて 労働政策研究・研修機構研究員 細川 良
崩壊から再生へのもがき―1950年のドイツ労使関係法制 明治大学法科大学院教授 野川 忍
ドイツ法コメント:労使関係法の基盤形成と今日における意義 東北大学准教授 桑村裕美子
アメリカの労使関係法制における1950年と現在 一橋大学教授 中窪裕也
「アメリカの労使関係法制における1950年と現在」を受けてのコメント 早稲田大学教授 竹内(奥野) 寿
1950年における労使関係法の状況 ―労働組合法の立法・改正の経緯を概観して― 上智大学教授 富永晃一
中窪さんの「本特集の趣旨」によれば、これは例の労働組合法立法史研究から生まれてきたものだそうです。日本も含め、だいたい1950年前後に戦後労使関係法制が形作られたことから、「1950年」を切り口にしたというわけです。
第2特集は「電通事件と過労死防止対策」です。
長時間労働解消政策と労働時間法制のあり方 ―36協定時間の罰則付き上限規制で長時間労働体質は変わらない― 法政大学大学院客員教授 毛塚勝利
電通新入女性社員過労死事件は何を提起しているのか 弁護士 川人 博
長時間労働の解消と働き方改革:管理職の役割が鍵 中央大学大学院教授 佐藤博樹
その他の論文は以下の通りです。わたくしの連載は、今回は「公共職業安定機関の1世紀」です。
■特別寄稿■
ハンガリーにおける新たな基本法の制定後の雇用法および雇用政策の要点 ハンガリー・セゲド大学法学部教授 ジョセフ・ハイデュ 訳:植田 達(前慶應義塾大学大学院助教・コーネル大学ロースクール法学修士課程)
■労働法の立法学 第47回■
公共職業安定機関の1世紀 労働政策研究・研修機構研究所長 濱口桂一郎
■アジアの労働法と労働問題 第29回■
中国労働法における「同一労働同一賃金」原則に関する基礎考察 大阪経済法科大学准教授 烏蘭格日楽
■イギリス労働法研究会 第25回■
シェアリング・エコノミーと雇用関係 ―アメリカとイギリスにおけるUber訴訟をめぐる覚書― 小樽商科大学准教授 國武英生
■研究論文■
労働契約における労働者の意思の探求 ―山梨県民信用組合事件最高裁判決を素材に― 名古屋大学教授 和田 肇
外国人技能実習法の成立と労働法政策 ―外国人技能実習法の立法過程の検討を中心に据えて― 内閣官房参事官補佐(前内閣府参事官補佐) 森下之博
■判例研究■
労調法37条1項違反の法的効果と職場占拠を伴う争議行為の正当性 きょうとユニオン(iWAi分会・仮処分)事件(大阪高決平28・2・8労判1137号5頁) 北海道大学大学院 松田朋彦
改正高年法上の継続雇用制度における(職種変更を伴う)再雇用内容の適法性 トヨタ自動車ほか事件(名古屋高判平28・9・28労判1146号22頁) 東京大学高齢社会総合研究機構・特任助教 朴 孝淑
人事制度の変更と就業規則変更の効力 ファイザー事件(東京地判平28・5・31労経速2288号3頁,東京高判平28・11・16労経速2298号22頁) 弁護士 千野博之
■書評■
『イタリアにおける均等待遇原則の生成と展開―均等待遇原則と私的自治の相克をめぐって―』大木正俊著 評者 中央大学法科大学院教授 山田省三
『労働法の復権―雇用の危機に抗して』和田 肇著 評者 法政大学教授 浜村 彰
■キャリア法学への誘い 第9回■
キャリア展開の支援方向 法政大学名誉教授 諏訪康雄
●重要労働判例解説
退職後の競業避止義務条項の有効性の判断の多様性 第一紙業事件(東京高判平28・9・28,原審 東京地判平28・1・15労経速2276号12頁以下) 弁護士 松岡太一郎
歓送迎会参加後の送迎行為の業務遂行性 国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件(最二小判平28・7・8労判1145号6頁) 日本大学教授 大山盛義
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