« 下井康史『公務員制度の法理論』 | トップページ | 日置巴美『ビジネスシーンから考える 改正個人情報保護法』 »

2017年6月19日 (月)

学問は就活か

神戸女学院大学の広告が核心を衝きすぎていると評判ですが・・・。

20170612094142

学問は就活か?

日本以外のジョブ型労働社会であれば答えはあまりにも明瞭です。

然り。

ある仕事に就きたいがゆえに、その仕事に必要な知識技能を身につけるべく学問に励む。

まさに、学校の勉強を一生懸命やることが、それこそが他のいかなることにもまして、最高最大の就「職」活動になるわけです。

Chuko拙著『若者と労働』でこう述べたとおりです。

ジョブ型社会の「職業能力」就活
 日本であれ、欧米であれ、学生が企業に対して、自分が企業にとって役に立つ人材であることを売り込まなければならない立場にあるという点では何の違いもありません。違うのは、その「役に立つ」ということを判断する基準です。
 欧米のようなジョブ型社会においては、第一章でみたように採用とは基本的に欠員補充ですから、自分はその求人されている仕事がちゃんとできるということをいかにアピールするかがもっとも重要になります。学生の場合、売りになる職業経験はないのですから、その仕事に必要な資格や能力を持っているということをアピールするしかありません。そのもっとも重要な武器は、卒業証書、英語で言うディプロマです。
 欧米では、一部の有名大学を除けば入学するのはそんなに難しくはありませんから、ある大学に入学したことだけでは何の説得力もありません。むしろ、日本と違ってカリキュラムはハードで、ついてこれない学生はどんどん脱落し、卒業の頃には同期の学生がだいぶ減っているというのが普通ですから、卒業証書こそがその人の能力を証明するものだと一般的に考えられています。
 そして、ここが重要なのですが、その能力というのは、日本でいう「能力」、つまり一般的抽象的な潜在的能力のことではなく、具体的な職業と密接に関連した職業能力を指すのです。卒業証書を学歴と言い換えれば、欧米社会とは言葉の正確な意味での学歴社会ということもできます。日本でいわれる学歴社会というのが、具体的にどの学部でどういう勉強をしてどういう知識や技能を身につけたかとはあまり関係のない、入学段階の偏差値のみに偏したものであるのに対して、欧米の学歴社会というのは、具体的にどの学部でどういう勉強をしてどういう知識や技能を身につけたかを、厳格な基準で付与される卒業証書を判断材料として判定されるものなのです。こういう社会では、言葉の正確な意味でのもっとも重要な就「職」活動は、必死で勉強して卒業証書を獲得することになります。
 ちなみに、こういうジョブ型社会ではあまりにも当たり前の行動を、日本社会で下手にやるととんでもない大騒ぎになることがあります。かつて、ある大学の法学部で、既に企業に内定している四年生の学生に対し、必修科目の民法で不可をつけた教授の行動が、マスコミで取り上げられ、世論を賑わしました。入学時の偏差値と面接時の人間力判定で十分採用できると企業が考えているのに、本来何の職業的意義もない大学の授業における教授の成績評価によってできるはずの卒業ができなくなり、「入社」の予定が狂わされるのは、本末転倒である、と、少なくとも当時の日本社会の大多数の人々は考えていたということでしょう。

では日本ではどうか?

まったく異なる文脈において、しかし結論は一緒です。

然り、学問は就活である。

とはいえその理路は全く正反対ではありますが。

どう正反対なのか、そしてそれなのに結論は同じなのか?

詳しくは上記拙著の「第3章 「入社」のための教育システム」をお読み下さい。

|
|

« 下井康史『公務員制度の法理論』 | トップページ | 日置巴美『ビジネスシーンから考える 改正個人情報保護法』 »

コメント

The Top 8, most worthless college degrees based on earnable lifetime income are as follows:

1.Sociology 2.Fine arts 3.Education…
http://www.professorshouse.com/the-most-useless-college-degrees/

学問と職業能力とが直結するようになると、「食えない学問」は淘汰されていくことになるんでしょうか。

投稿: 名無し太郎 | 2017年6月20日 (火) 06時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/70904765

この記事へのトラックバック一覧です: 学問は就活か:

« 下井康史『公務員制度の法理論』 | トップページ | 日置巴美『ビジネスシーンから考える 改正個人情報保護法』 »