鎌田慧・聞き手:出河雅彦『声なき人々の戦後史』(上・下)
朝日新聞記者の出河雅彦さんより、その聞き書きになる鎌田慧・聞き手:出河雅彦『声なき人々の戦後史』(上・下)をお送りいただきました。ありがとうございます。
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“自動車絶望工場”などの労働問題、いじめ自殺などの教育問題、水俣病、イタイイタイ病などの公害・環境問題、「戦争をさせない」1000人委員会、原発をめぐる渾身のルポと反原発運動……
わたしなどからすると、鎌田慧さんといえばまず何より『自動車絶望工場』を始めとする労働ルポルタージュになりますが、目次をみると、実に広範な領域にわたって精力的にルポを書き続けてきたことがわかります。
[上巻]
プロローグ 鎌田 慧
第1章 ルポルタージュを書きたい
第2章 開発と公害の現場を歩く
第3章 辺境と底辺(一)――コンベヤー労働の体験
第4章 辺境と底辺(二)――出稼ぎと「合理化」
第5章 管理教育といじめ自殺
第6章 原発列島を行く(一)――開発幻想と現実
第7章 原発列島を行く(二)――国策の犠牲者たち
第8章 原発列島を行く(三)――民主主義を守る
[下巻]
第9章 労働現場の人権侵害(一)――炭鉱労働者たち
第10章 労働現場の人権侵害(二)――国鉄からJRへ
第11章 労働現場の人権侵害(三)――規制緩和の罪
第12章 悪政と闘う――成田と沖縄
第13章 暗黒裁判を書く
第14章 自由への疾走
第15章 語る 鎌田慧
エピローグ――取材を受けて 鎌田 慧
鎌田慧 年譜
鎌田慧 著作一覧
あとがき(出河雅彦)
主要人名索引
上巻の第2章から第4章まで、そして下巻の第9章から第11章までが、主として労働問題を追いかけたルポの回想です。
『自動車絶望工場』のもとになった潜入取材のいきさつについて、鎌田さんはこう語っています。
・・・一つは、わたしにはがきをくれた久保田さんから聞いた「コンベヤー労働の疲労感」の実態はインタビューだけでは表現できないと思ったからである。
労働者に「疲れますか」と聞けば、ほとんどの人は「疲れる」と答えるだろう。しかし、取材者がいくら質問したところで、その疲れの実態を表現することはできない。・・・
もう一つは、経済的理由であった。
当時、わたしは三十四歳。それまでの長期取材で『隠された公害』『死に絶えた風景』という二冊の本を書き下ろしたが、妻と二人の子どもを抱え、経済的に行き詰まってどうにもならなくなっていた。ベルトコンベヤー労働に関心があっても、金銭的にも時間的にもそれを取材する余裕がなくなっていた。
解決する道は一つだけ。取材したい工場に就職してしまうことであった。正社員になるのは会社の厳しいチェックがあるから難しいが、使い捨ての出稼ぎ労働者なら、会社側も興信所を使ってわたしの素性を調べたりしないだろうと考えた。・・・
なるほど!
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