石井・緒形・鈴木編『現代中国と市民社会』
既にご案内のように、来週土日には明治大学現代中国研究所主催の「第三回 日中雇用・労使関係シンポジウム──非正規時代の労働問題」というのに出てちょっと喋る予定ですが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-906a.html (明治大学現代中国研究所日中雇用・労使関係シンポジウム)
その主催者である明治大学現代中国研究所が中心になって作られた石井知章・緒形康・鈴木賢編『現代中国と市民社会──普遍的《近代》の可能性』(勉誠出版)を、編者の一人石井知章さんよりお送りいただきました。いつもありがとうございます。本書は639ページという分厚い大冊です。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~china/book/book03_2017.html
グローバルな市民社会に向かう中国。そしてその不可避の動きを引き戻そうとする力
多様かつ複雑な思想史的背景をもつ中国の市民社会論を、歴史的現実を踏まえつつ理論的に再検討する。この共通テーマをめぐっては、いまだに戦後日本の社会科学を代表する市民社会論との理論的「接点」がまったく見出せていない。
日中間の社会科学者による共同作業を通し、市民社会をめぐる言説空間を構築する。
党国体制の下にあって、欧米や日本のような意味での市民社会が存在し得ない中国社会の中に「普遍的近代の可能性」を探し求めようとする日中両国の研究者の苦闘の痕がしみ出してくるような本です。
序章 中国における「市民社会」論の現在 石井知章
第Ⅰ部 現代中国における「市民社会」論
第1章 市民社会の理論研究 徐友漁
第2章 国家と社会 鄧正来
第3章 中国市民社会論研究の現状と課題・展望 馬長山
第4章 中国公民社会の制度的環境 俞可平
第5章 マルクス主義とアジア社会発展理論の時代的価値 秦国栄
第6章 市民社会の理念と中国の未来 陳弘毅
第7章 公民儒教の進路 陳宜中
第8章 天国のティートーク 劉軍寧
第Ⅱ部 現代日本における「市民社会」論
第9章 市民社会と階級独裁 平田清明
第10章 厳復(1854-1921)による『国富論』中国訳(1901-2)について 水田洋
第11章 革命の社会学再論 湯浅赳男
第12章 現代中国の「市民社会問題」への視座 内田弘
第13章 市民社会と資本主義、社会主義、共同体 野沢敏治
第14章 脱西欧中心主義的な「市民社会」の発展と平等主義的自由主義 今井弘道
第15章 アジア的生産様式と市民社会 福本勝清
第16章 中国社会理論は何を前景化したのか? 緒形康
第17章 権力に従順な中国的「市民社会」の法的構造 鈴木賢
第18章 フランスの思想家から見た中国と市民社会(Civil Society) 王前
第19章 K・A・ウィットフォーゲルの「市民社会」論 石井知章
あとがき 石井知章・緒形康
石井さんは例によってウィットフォーゲル論ですが、本書のうち前半の中国側研究者によるものは、なかなか読みにくい面はありますが、面白いのがいくつかあって、とりわけ第8章の劉軍寧さんの「天国のティートーク」てのは、孔子と老子の対話篇という構成で、孔子に
私の政治に対する理解は誤っていたようです。私は政治をずっと善なる事業と思っていた。
とか、
我々儒家は、私が公に服従するようずっと主張してきましたが、現在から見ると問題が多く、真剣に再検討すべきです。
とか言わせてますね。
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>孔子に
「私の政治に対する理解は誤っていたようです。私は政治をずっと善なる事業と思っていた。」
とか、
「我々儒家は、私が公に服従するようずっと主張してきましたが、現在から見ると問題が多く、真剣に再検討すべきです。」
とか言わせてますね。
いいですね~。
なにしろ昨今の日本では、『~(ホニャララ)訳 論語』のたぐいの出版物、いくらなんでも多すぎでしょー。
出版社も、手堅く売上げが見込めると踏むから、安易に企画・出版するんだろうけど。
しかし『論語』は日本の伝統的な教養書ないし教訓書、みたく世間的に思われてるふしがあるけど、庶民層にまで広く普及・啓蒙(?)され出したのは、あくまで中央集権・国民国家化が進んだ明治以降なんだけどもなぁ・・・。
それにそもそも『論語』って、そんな名著かなぁ。
投稿: 原口 | 2017年5月13日 (土) 17時45分