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2017年5月25日 (木)

白波瀬達也『貧困と地域』

102422中央公論社から白波瀬達也『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(中公新書)をお送りいただきました。副題の通り、俗に「釜が崎」と呼ばれるあいりん地区について、その歴史と現状を、労働、福祉、住居などさまざまな視点から解説した本であり、これも何回目かですが、新書というのはこういう本だというお手本のような本になっています。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/02/102422.html

「日雇労働者の町」と呼ばれ、高度経済成長期に頻発した暴動で注目を集めた大阪のあいりん地区(釜ヶ崎)。現在は高齢化が進むなか、「福祉の町」として知られる。劣悪な住環境、生活保護受給者の増加、社会的孤立の広がり、身寄りのない最期など、このエリアが直面している課題は、全国の地域社会にとっても他人事ではない。本書は、貧困の地域集中とその対策を追った著者による現代のコミュニティ論である。

51ofieewurl_sx344_bo1204203200_あいりん関係の本と言えば、昨年10月に本ブログで取り上げた鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』が橋下市長による西成特区構想のまさに中心人物による叙述であるのに対し、本書の著者の白波瀬さんは2007年から2013年まで西成市民館でソーシャルワーカーとして活動しつつ、あいりん問題のフィールドワークを続けてきたまさに現場の目の研究者です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-9efc.html(鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』)

叙述の主力は日雇労働者のドヤの街からホームレス溢れる地域となり、そして生活保護受給者の町から再開発の焦点となりゆくここ十数年の動きですが、わたしにとって興味深かったのはそれよりももっとむかしの歴史、かつては家族持ちも多いスラム街だった釜が崎が、高度成長期の建設労働力需要に引きずられるように急速に単身男性たちが簡易宿泊所に暮らすドヤ街になっていったというあたりの叙述です。

貧しい家族持ちが暮らすスラム街というのは、じゃりン子チエの世界ですね。スラムとドヤがどう違うかは、本書24ページに表にしてあります。

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この写真は、湯浅誠さんとの対談から持ってきましたが、この対談も興味深いです。

https://news.yahoo.co.jp/feature/582

あと、本書25ページには、約60万枚を売り上げたという三音英次のヒット曲「釜ケ崎人情」も紹介されています。

ふむ、確かに、同じドヤ街の唄とはいえ、岡林信康の「山谷ブルース」とはだいぶ趣が違いますね。

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