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2017年4月13日 (木)

正社員ゼロという選択@『Works』141

Worksリクルートワークス研究所の機関誌『Works』141号が届きました。特集は「正社員ゼロという選択」と、なかなか鬼面人を驚かしています。

http://www.works-i.com/pdf/w_141.pdf

日本型雇用システムの核に存在するのは、言うまでもなく「正社員」だ。正社員は新卒一括採用に始まる長期雇用を前提としており、教育や税・社会保障、家族のありようなど、すべての日本の社会システムが正社員を守り、正社員を働きやすくするべく形成されてきたと言っても過言ではない。問題は、長期雇用という安心と引き換えに、働く時間・勤務地・職務のすべての決定権を会社に預ける無限定な正社員という働き方に、多くの正社員が疲弊感を持っていること、また、正社員を中心に設計された社会であるにもかかわらず、非正規雇用が増加し、恩恵を受けられる人の数が大きく減っているということだ。企業側の視点でとらえると、極めて解雇しにくい長期雇用慣行のもとでは、たとえ能力が陳腐化してしまった社員であっても雇用し続けるほかなく、雇用保蔵の問題が生じている。
もっと自由に、自律的に働きたいと考えている個人が存在する。その価値観の変容に応えようとしている人事も存在する。私たちはそうした変化をとらえ、無限定型の長期雇用でなくても人々が安心して働き、生活しているオランダとデンマークを取材し、新しい雇用システムのありようを模索してきた。シリーズ最終回の今回は、正社員中心の日本型雇用システムに代わるものを提示したい。

として、具体的に提示する次のような9の提言なのですが、

2-1 働き方に関する6の提言
2-1-1 雇用契約の期間は最長20年とせよ
2-1-2 すべての人を職務限定とせよ
2-1-3 採用はローカルから始めよ
2-1-4 転勤を廃止せよ
2-1-5 副業禁止を禁止せよ
2-1-6 職業能力を可視化せよ
2-2 未来の働き方を支える社会に関する3の提言
2-2-1 テクノロジーの力で人をつまらない仕事から解放せよ
2-2-2 ベーシックインカムを導入せよ
2-2-3 プロフェッショナル教育機関を充実させよ

多分同じことを感じる方も多いと思うのですが、さまざまな矛盾を示してきている特殊日本型雇用システム特有の「正社員」の話と、他の先進諸国でもある程度共通している「レギュラー・ワーカー」の基盤が揺らぎつつある話とが、やや意図的にごっちゃにされている感があります。

ここでいう「正社員ゼロ」というのが、特殊日本的「無限定正社員」を念頭に置いているのか、それとも過去100年間にわたって先進産業社会で発展してきた標準的労働関係モデルの話をしているのかによって、受け取られ方は大きく違ってくるでしょう。

しかし、あえてそこを曖昧にすることでいろんな議論を展開させようとしているのかも知れません。

今日の働き方改革なるものが、日本的な「無限定」正社員モデルのある意味で欧州型へのシフトの面と、標準的労働関係モデルの技術革新の中での世界共通の融解現象の同時進行という両面を持っているだけに、この戦略的曖昧さはきわめて両義的ですらあります。

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コメント

先般リリースの「Work Model 2030」と並び、リクルートワークスの面目躍如たるニッポンの近未来への雇用人事施策ビジョンの提言ですね。これまでの諸々の世論/論点を踏まえ(当面の実現可能性はともかく)全体的にここまで具体的でストレートに人事雇用施策の各論に踏み込むアプローチには大変好感が持てます。一方で、Hamachan先生がエントリ末尾に示唆された姿〜二つの大河が重なり合って未知なる大海に流れ込むようなイメージか?〜を想像するに、やはりいわゆるWork Model 2030に描かれる雇用の未来へのアプローチは各国それぞれが自国の固有の実態(人口動態や経済や雇用慣行や国民の安定志向性など)に沿って(標準ルートは存在しないため)バリエーションルートで独自に取り組んでいかざるを得ない(目標アプローチに関する先行前例は存在せず)という思いしきりです。

そこで、これはヒントと言えるか(少なくとも参考情報にはなるかと考えここで敷衍するのですが)… ここで掲げられた「働き方に関する6つの提言」の内容を見ると、現在日本でグローバル外資系企業で働く多くのワーカーにとってはすでに(ほぼ全てが)現実です。もっとも唯一の違い(違和感)は提言1「雇用契約期間は最長20年とせよ」ですが、これは本文荒木氏のご指摘を待つまでもなく現行の労働法制や雇用慣行に相反する明らかな挑戦(アンチテーゼ)ですし、この「将来的には全員が有期契約へ」という方向性は、経営や人材マネジメント上の観点から見ても利点よりも弊害が多いように思えます。

それはともかく、ニッポンの雇用の未来、中長期的な人事労務の姿を考える上での格好のレポートでしょう。

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