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2017年4月16日 (日)

右翼ポピュリズムと社会問題

例によって、ソーシャル・ヨーロッパ・ジャーナルから「右翼ポピュリズムと社会問題」という論考を。筆者はコヴァルとリントナー。

https://www.socialeurope.eu/2017/04/right-wing-populism-social-question/

Kowall_bio

・・・There is now a heated debate about whether right-wing populist support is mainly driven by social and cultural or by economic anxiety. However, both types are highly interdependent: socio-economic uncertainty is related to cultural anxiety. The loss or feared loss of well-paid jobs can lead to a general sense of identity erosion and the search for easy scapegoats. But while right-wing populists play up and upon socio-cultural anxiety, they also tend to offer economic certainty by drawing on traditional social democratic discourse. This discourse gains credibility and support because many feel that social democratic parties have embraced neoliberalism “light” in recent decades, thereby opening the political space for right-wing extremists to offer protection from an uncertain world.

・・・いま右翼ポピュリズムへの支持が主として社会文化的な不安によるものか経済的な不安によるものかという熱い議論が行われている。しかし、どちらも高度に相互依存的だ。社会経済的不確実性は文化的不安に関係している。高収入の仕事の喪失やその恐れは一般的なアイデンティティ溶解感覚をもたらし、安易なスケープゴート探しをもたらす。しかし右翼ポピュリストは社会文化的不安をかき立てているが、彼らはまた伝統的な社会民主主義的議論を引き出すことで経済的確実性を提供しようとしている。この議論は信頼と支持を得られる。というのも、多くの人は社会民主主義政党が過去数十年間ネオリベラルズムの「光」を抱きしめてきたため、右翼急進派が不確実な世界からの保護を提供する余地を与えてきたと感じている。

Linder_bio ・・・Right-wing extremists can justly claim that the nation has lost much of its control over economic, social and cultural developments. Indeed, one of the reasons German social democrats used to explain their cuts in labour market regulation and the welfare state in the early 2000s was globalisation and its impact on wage costs. Also, the centre-left’s steady promise to re-establish control over the economy at transnational level – for instance in the EU – sounds increasingly hollow when austerity and mass unemployment in many crisis countries was often advocated by leading European social democrats.

右翼急進派は国家が経済的社会的文化的発展へのコントロールの大部分を失ってきたという主張を正当化することができる。実際、ドイツ社会民主党が2000年代初頭に労働市場規制と福祉国家の削減を正当化した理由はグローバリゼーションとその賃金コストへの影響であった。超国家レベルで経済へのコントロールを再建するという中道左派の繰り返される約束-たとえばEUとか-は、多くの危機に陥った諸国における緊縮策と大量失業が欧州の社会民主勢力によって唱道されているときにはうつろに響く。

ここで一言。一昨日の金曜日、同志社大学でEUの労使関係と労働法というタイトルで講義した話は、まさにここのところに関わるんですね。閑話休題。

This has opened the door for right-wing populism and nationalism: right-wing populists seek to “take back control” by nationalistic means. Social democrats in the second half of the 20th century promised to protect workers within a nation through democratic policies. Now they have abandoned this promise, right-wing populists instead become increasingly credible by making the same promise.

これは右翼ポピュリズムとナショナリズムへのドアを開く。右翼ポピュリストはナショナリズム的な手段で「コントロールを取り戻す」ことを追求する。20世紀後半に社会民主主義者は民主主義的な政策を通じて国家の中で労働者を保護することを約束した。いまや彼らはこの約束を放棄し、その代わりに右翼ポピュリストが同じ約束をすることで次第に信頼を勝ち得てきている。

・・・・The strategy of offering national protection from the anonymous and malign forces of globalisation is not peculiar to the FPÖ: Marine Le Pen in France has adopted the same kind of discourse, promising to stop the austerity and deregulation demanded by European institutions and Germany.

匿名で悪意あるグローバリゼーションの力からのナショナルな保護を提供するという戦略はFPÖに限らない。フランスのマリーヌ・ルペンも同様の議論を採用し、欧州機関とドイツの要求する緊縮策と規制緩和をストップさせると約束している。

・・・Paul Krugman nicely summarized the promises of modern right-wing extremists as offering “herrenmensch social democracy”; “a welfare state but only for people who look like you”

ポール・クルーグマンは現代右翼急進派の約束を「支配民族社会民主主義」を提供するものと見事に要約している。福祉国家、ただしあなたのように見える人々のためだけの。

・・・The scary thing is that this modern right-wing strategy is not modern at all, but the very principle of 20th century fascism: it and national socialism already offered “herrenmensch social democracy” in the 1920s and 1930s. Widely overlooked today, this aspect explains much of its appeal at the time – when there was almost no welfare state in Europe and the economy was devastated by war, inflation and financial crises.

恐ろしいことに、この現代右翼戦略はちっとも現代的なんかじゃなく、20世紀ファシズムの原則そのものだってことだ。ファシズムと国家社会主義は既に1920年代と1930年代に「支配民族社会民主主義」を提供していた。今日では看過されているけれども、この側面こそが当時のファシズムの魅力の多くを説明するのだ。ヨーロッパに福祉国家なんて全然なく、経済は戦争とインフレと金融危機で破壊され尽くしていた頃の。

Fascists identified real economic and social problems of the time, using them to build nationalistic mass political movements while many socialists were still fighting each other over the right interpretation of Karl Marx.・・・・

ファシストがその時代のリアルな経済社会問題を明らかにし、それを使ってナショナリスト的な大衆政治運動を確立していた頃、多くの社会主義者たちはカール・マルクスの正しい解釈をめぐってお互いに争い合っていたのだ。・・・・・

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コメント

「国家の意思」

フランス大統領選が間近である。第一回目の投票では、極右のルペンが中道のマクロン、右派のフィヨン、極左のメラションを抑えてトップになるのではないかと囁かれている。

ルペンは移民の制限、EU離脱を問う国民投票、ユーロ圏離脱を唱え、人気を博している。

最終的にルペンがフランス大統領になるとは思わないが、極右のルペンあるいは極左のメラションが人気を博している背景には、中間層の人達がこれまでの穏健左派あるいは穏健右派に対して失望し、極右あるいは極左に吸収されているという現実がある。

英国では国民投票でEU離脱が選択され、米国では極右のトランプが大統領選を制したという背景と共通する。

経済的な豊かさを享受できない中間層の人達、移民の流入による社会的不安の増加、社会的格差の広がり・・・。このような不満を既存のエリートによる政治が吸収しきれなかったのである。

日本ではどうか?

先日のペンス副大統領と麻生副総理の経済対話を見ていて、「米国ファースト」を唱え2国間協定を主張するペンス副大統領と、東南アジア経済圏のルール作りをして行こうという麻生副総理の議論はすれ違っていた。

「国家の意思」とは何かを考えさせられた。日本の国家の意思は、グローバル化を進め東南アジア経済圏の覇権を確立していこうというものである。これは、日本国民の意思を反映したものであろうか?

日本の経済官僚や経営者からなるエリートは、「企業の内部留保を増やし、これを原資として海外に積極投資をし、グローバル化を進め、海外から利益を稼いでいこう」と考えているのだろう。

しかし一方国内で、非正規雇用者の数が増えている、非正規雇用者の生涯賃金は正規雇用者の半分くらいである、結婚しない(できない?)若者が増えている、自然出生率が下がり人口が減っている、正規雇用者の賃金も伸び悩んでいる、・・・という現実がある。

企業が海外で稼いだ利益は、営業外利益にカウントされ、労働報酬に反映される仕組みになっていない。そもそも、400兆円に達するといわれる利益剰余金(内部留保)は株主に属するものとされ、内部留保を原資とする海外投資から得られる利益は国内の従業員には還元されないのだ。企業が海外で稼ぎ、企業の財務基盤が強化され、雇用が安定するという効果はあると思うが、企業は固定費の重荷にならない非正規雇用を増やそうとする。

このような実態を踏まえた上で、経済のグローバル化は「日本の国家の意思」といえるのだろうか?経済官僚や企業経営者などエリートの意思を代表しているとは思うが、日本国民の意思を代表しているとは思えない。

このような実態は、経済のグローバル化による帰結であり、日本に固有のものではない。世界各国に共通の課題であり、欧米では労働者が既存の政治に対してノーを突き付け始めたのである。

トランプ大統領の「アメリカファースト」、そしてTPPを即座に棄却した大統領令は、こうした国民の意思を反映したものであろう。麻生副総理はペンス副大統領との会談で、日本とアメリカが主導して、アジア経済圏で共通のルールを作っていこうと働きかけたとされているが、麻生副総理は、ペンス副大統領が背負っている「アメリカ国民の意思」を理解していたのだろうか?

筆者は、経済のグローバル化に反対するものではない。ただし、節度が必要である。良い意味での国境は必要であるし、それぞれの国の文化的なアイデンティティは尊重されるべきである。また、国境で隔たれた国民の経済的な利益は守っていく必要がある。

経済のグローバル化については、海外との資金の移動の管理、海外から得られる利益の監視、内部留保に対する課税、貿易関税などもっと議論を尽くす必要がある。企業経営者は「国内に投資するより海外で稼げばよい」と考えるかもしれないが、それが国の経済戦略になるというならば問題である。

グローバル化の問題点を把握し対処をしながら、グローバル化を進めていかなければならない。おとなしい日本の中間層は声をあげないのかもしれないが、国家は国民の意思を忖度しながら「国家の意思」を実現していく必要がある。さもなければ、またもや周回遅れで、気が付けば円高が70円/ドルくらいまで進行しているという事態にもなりかねない。

投稿: hiro | 2017年4月20日 (木) 13時27分

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