『「個人化」される若者のキャリア』
JILPT第3期プロジェクト研究シリーズの『「個人化」される若者のキャリア』が刊行されました。堀有喜衣さんが実際の編集・執筆者です。
http://www.jil.go.jp/institute/project/series/2017/03/index.html
かつて日本社会の若者の学校から職業への移行やキャリア形成は「集団」として行われてきましたが、90年代以降の産業構造と学歴構成の変化により、日本でも若者の移行やキャリアの「個人化」が進展しました。
本書では「個人化」された若者の移行やキャリアの実態を調査に即して明らかにすることを通じて、政策的な支援のありようを考えます。
学校やハローワークが関与する高卒に比べて大卒はより個別化してますし、中退者が増えるということは学校から仕事への移行がばらばらに行われるわけです。
- 序章 「個人化」される若者のキャリア
- 第1章 戦後における若年者雇用政策の展開
- 第2章 大学等中退者の移行プロセス─「個人化」される移行の課題─
- 第3章 ニートの背景としての世帯と親の状況:国際的な議論と日本の実態
- 第4章 新卒採用正社員の早期転職希望の背景
- 第5章 早期離職後の職業キャリア
- 終章 「個人化」される若者のキャリアへの支援
終章で堀さんが提起しているのは3点あります。
一つは「集団」を通じた支援の再評価。なんといって個人化というのは若者にとって大変な負担で、集団に埋め込まれて同世代の若者みなでともに移行すること、すなわちみなでリスクを分け合うことのメリットは少なくないといいます。そこで、たとえば多くの普通科高校では就職者が少なくて「集団」を形成しないので、ハローワーク中心の支援でもって「集団」化することを提示します。
二つ目は「若者」概念の再考。この間、若者の定義が、25歳未満、30歳未満、35歳未満とだんだん上がってきて、いまやサポステは39歳まで、施策によっては45歳未満にまで拡大していますが、これは就職氷河期世代が年齢を重ねるのに合わせてずるずると引上げてきた結果で、いくら何でも若者とは言えない年齢まで若者対策に入れるのは限界なので、世代と年齢を区別し、若者カテゴリーを引き直すべきといいます。まあ、非正規問題も今では壮年・中年非正規が中心になってますね。
最後は労働政策と教育政策の架橋。今後は労働行政が学校と企業との教育内容のコーディネーションに以下に関与できるかが政策の焦点になるだろうと述べています。
本文150ページ弱で読みやすい本になっています。
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