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2017年4月 7日 (金)

『人口減少社会における高齢者雇用』

Cover_no2昨日紹介した『「個人化」される若者のキャリア』とともに、JILPT第3期プロジェクト研究シリーズとして『人口減少社会における高齢者雇用』が刊行されています。

http://www.jil.go.jp/institute/project/series/2017/02/index.html

日本の人口減少が進展する中で、我が国の成長力を確保していくためにも、高齢者の社会参加を進め、生産性を向上させていくことが重要であるとの観点から、意欲ある高齢者が年齢に関わりなく生涯現役で活躍し続けるための課題を、「60代前半層を中心とした雇用の課題」、「60代後半層以降又は高齢者全般の雇用の課題」、「高齢者の活躍や関連施策の課題」に分けて整理し、それぞれの分析結果を掲載しています。

目次は次の通りですが、

  • 序章 高齢者雇用の現状と課題(田原 孝明)
  • 〈60代前半層を中心とした高齢者の雇用の課題〉         
    • 第1章 「実質65歳定年制」時代の定年制(今野 浩一郎)
    • 第2章 60代前半継続雇用者の企業における役割と人事労務管理(藤本 真)
  • 〈60代後半層以降又は高齢者全般の雇用の課題〉         
    • 第3章 65歳以降の就業・雇用を考える―職業生涯の総決算とセグメント(浅尾 裕)
    • 第4章 65歳以降の継続的な就業の可否を規定する企業要因の検討(鎌倉 哲史)
  • 〈高齢者の活躍や関連施策の課題〉         
    • 第5章 年金支給開始年齢引上げに伴う就業率上昇と所得の空白─厚生労働省「中高者縦断調査(2014年)」に基づく分析(山田 篤裕)
    • 第6章 中高年齢者におけるNPO活動の継続意欲の決定要因分析(馬 欣欣)
    • 第7章 高齢者の就業と健康・介護(三村 国雄)
  • 終章 各章の概要と今後の課題(田原 孝明)

このうち、是非とも読んでおくべき一編は、この3月末で学習院大学を退職された今野浩一郎さんの「「実質65歳定年制」時代の定年制」です。

「実質65歳定年制」とは何か?

周知の通り、2012年改正により現在は希望者全員に対して65歳まで雇用が確保されるようになっています。とすると、

・・・定年年齢をその歳まで雇用継続が保障される年齢と捉えると、わが国は既に「実質65歳定年制」時代になる。そうなると、これまでの60歳を定年年齢とする定年制とは何なのかが問題となる。・・・

このまことに率直な疑問から、

・・・第一に、「実質65歳定年制」のもとで、「伝統的定年制」が人事管理上、どのような機能を持つ制度に変化しつつあるのかを検討する。労働者は定年とともに会社を退職し引退する、あるいは、働き続けるにしても退職した上で他の会社で働くというのであれば、定年制の機能は雇用関係を終了させることということになるが、「実質65歳定年制」のもとでは雇用関係の継続が前提となるので、「伝統的定年制」は間違いなく、これまでと異なる機能を持つ定年制となるはずである。・・・

という検討を進めていきます。

本書の各論の劈頭を飾る一編として、実にスリリングな論文になっていますので、是非目を通す値打ちがあります。

あと若手の論文として、鎌倉哲史さんの「65歳以降の継続的な就業の可否を規定する企業要因の検討」も一読に値します。問題意識はタイトルの通りですが、結論としては、

50歳時正社員の50代後半時残存率が負の説明変数として有意

はあ?という人のために普通の日本語に翻訳すると、

50代の時に正社員があまり離職していない(残存率が高い)企業ほど65歳以降に希望者全員就業可能とはなりにくい

ということになります。

ちなみに本書は3月中に出版されたため、今野さんはまだ学習院大学教授になっていますし、鎌倉さんはJILPTアシスタントフェローという肩書きになっていますが、鎌倉さんはこの4月から正式に研究員として働いていますので、実際に本書が読まれるときのことを考えて「(4月から研究員)」とか書いておいた方がよかったかも知れません。

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