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2017年3月15日 (水)

首藤若菜『グローバル化のなかの労使関係』

28276057_1首藤若菜さんの力作『グローバル化のなかの労使関係 自動車産業の国際的再編への戦略』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b278704.html

国際的な労働規制の可能性を検証する これまで一国内で機能してきた労使関係は、いかにして国境を超えていくのか。

世界中に生産工場と開発拠点を持つ大手自動車メーカー。各社は、本国以外の国や地域でいかなる労使関係を築いてきたのだろうか。海外工場で発生した労使紛争に、本社の労使は、どう対応しているのか。本書は、インタビュー調査をもとに、フォルクスワーゲンやダイムラーなどの巨大な多国籍企業で進む国際的な労使関係の実態に迫る。伝統的に強力な労働組合が存在する自動車産業を対象に、グローバル労使関係の可能性を探る一冊。

首藤さんのこれまでの研究とはがらりとおもむきを変えて、国際労使関係という実に難しいテーマに真っ正面から取り組んだ力作です。第1章の補論以外は全て書き下ろしということで、どこをとっても恐らく誰にとっても初めて目にする論考です。

序章 国境を越えた労使関係の構築
第1章 グローバル化と労働をめぐる議論
第2章 国際労働基準の到達点
第3章 多国籍企業とグローバル・ユニオンの国際協定
第4章 欧州で広がるグローバル・ネットワーク
第5章 日系労組の国際活動の実態
第6章 国際的労使関係の状況
終章 グローバル労使関係への道筋

本書の一番読みどころはもちろん首藤さんがじかに調査された日系企業の活動を描いた第5章ですが、本書全体としては私がEUの労働法制、労使関係の動きをフォローしてきた中身と絡み合っています。

Eulabourlawとりわけ、ヨーロッパで進む多国籍企業との国際協定の動向は、先日刊行した『EUの労働法政策』でも、その立法化の動きを跡づける形で簡単にまとめておいたところですが、本書ではその基盤となる労働組合運動の動きが細かく追いかけられており、読みながら大変興味深かったです。

本書が第6章で指摘している、労使関係は国際化すればするほど企業別化していくというのは、とりわけ一国レベルでは企業を超えた産業別の労使関係による規範設定システムが確立しているヨーロッパ諸国にとって、アイロニカルな側面があります。

企業別化するというのは、巨大な多国籍企業から子会社、下請企業へとトリクルダウン的なルールになっていくということです。

グローバル化に対応して規制を拡げようとすればむしろ企業別化という分権化を進めることになるという逆説。まあ、国内で既に十分すぎるくらい企業別化、分権化している日本とはちょっと文脈が違いますが。

上記拙著の第2章第6節の最後に出てくる欧州労連の多国籍企業協約立法案などには、そのあたりがよく表れているように思います。

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