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2017年3月15日 (水)

矢野昌浩・脇田滋・木下秀雄編 『雇用社会の危機と労働・社会保障の展望』

07360矢野昌浩・脇田滋・木下秀雄編 『雇用社会の危機と労働・社会保障の展望』(日本評論社)を執筆者の皆様からお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7360.html

雇用保障に関する企業と国の責任の後退が進行する中で「雇用と社会保障の連携」の視点から、「雇用社会」再生への課題と展望を検討。

今年5月労働法学会が開催されるのは龍谷大学ですが、その龍谷大学の労働法・社会保障法の研究者の皆さんによるシリーズの3冊目です。

序章──雇用社会のための規範理論に関する序論的検討/矢野昌浩

第1部 労働・社会保障法理論の再生
第1章 雇用・社会保障における国家・企業・個人の役割/上田真理
第2章 労働権論──反労働権的現実の改善をめざして/脇田滋
第3章 生存権の検討/木下秀雄

第2部 雇用と社会保障の連携をめぐる諸論点
第1章 不安定雇用の防止策
 ──建設業における被用者保険料負担責任の転換策を参考に/川崎航史郎
第2章 若者・学生の移行期における雇用・社会保障法制の課題/濱畑芳和
第3章 高齢者──年金と就労
 第1節 定年・再雇用/矢野昌浩
 第2節 65歳以降の働き方/脇田滋

第3部 外国法研究
第1章 韓国
 第1節 韓国における雇用社会の危機と労働・社会保障の再生/脇田滋
 第2節 韓国の社会保険死角地帯解消政策
    ──零細事業所低賃金労働者への社会保険料支援事業/川崎航史郎
 第3節 韓国生活賃金条例/妹尾知則
第2章 ドイツ
 第1節 失業者・求職者の支援法制/上田真理
 第2節 ドイツにおける被用者の住居保障システム/嶋田佳広
 第3節 ドイツ連邦共和国における障害者雇用/瀧澤仁唱

冒頭で編者の矢野さんが検討の視点として3つを挙げています。第1は自己決定アプローチとセーフティネットアプローチの組み合わせ、第2はディーセントワークとディーセントな失業の組み合わせ、第3が雇用と労働の区別と連関。

上田さんの章が総論として、生活保障における国家と企業というテーマの重要なポイントを押さえていて、まずは必読。

全体は大きな議論とやや細かな議論と外国の紹介という三段構えになっていますが、労働法と社会保障法の交錯領域という点では、川崎さんの建設業不安定雇用の章と濵畑さんの移行期の若者に着目した章が興味深いと思います。

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