『DIO』324号
連合総研の機関誌『DIO』324号をお送りいただきました。今号の特集は、「長時間労働による過労死・メンタルヘルス疾患を防ぐために」です。
http://www.rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio324.pdf
特集記事は次の4本ですが、
長時間労働の原因と対策を考える 藤村博之
電通女性過労死事件が提起したもの 川人博/蟹江鬼太郎
ワーク・ライフ・バランスに必要なこと 武石 恵美子
勤務間インターバルの確保に向けた環境整備に向けて 春川徹
ここでは、2015春闘でインターバル規制を要求し、実現したKDDI労組事務局長の春川徹さんの文章から、2015年春闘に向けた考え方の経緯を述べた部分を。
・・・勤務間インターバル導入を2015春闘の具体的要求として掲げるに至った労組執行部の考え方や経緯は次のとおりである。
それは原点に立ち返り、「なぜ、勤務間インターバルが必要なのか」といった至極シンプルな問いを掘り下げることから検討を始めた。
長時間労働の是正と健康確保は労使の最も重要な課題であることは明確であり、そのために長時間労働の防止と抑制を行うことは、労使の責務であることも明白である。そして、従来から時間外労働に対しては36協定の順守と事前協議の対応徹底、職場巡回やノー残業デーの設定、ワークライフバランスの啓発活動などを実施し、現在もなお、これらの取り組みを進めているところであるが、勤務間インターバルの必要性について、自問自答を繰り返していくなかで、これら従来からの対応は、まさしく時間外労働・長時間労働を前提とする対処であることにあらためて終着した。
36協定は、本来、労働時間に関する例外的措置でしかないにもかかわらず、職場では、誰もが時間外労働が当たり前との意識が蔓延し、肯定化している実態であった。そして、心身の疲労回復や健康のためには休息時間が大切であるとの労使共通の認識があるにもかかわらず、この時間外労働を前提とする労使の対応が、まさに「長時間労働防止のパラドックス」となっており、このパラドックスによって、結果的に「休息時間を確保する」といった視点に誰もが意識が向かず、勤務間インターバルの制度化を必要としない状況を生み出している、との考えに至った。
このような考え方の経緯から、2015春闘に向けて労組執行部は自分たち自身の意識を転換し、取り組みを進めることを決意し、単に従来からの時間外労働・長時間労働を前提とする対処を強化するだけではなく、休息時間の確保を大前提とする明確な対応が必要との考えのもと、全ての組合員を対象とする11時間の勤務間インターバルの要求を掲げることとした。
一方、この要求立案時の組合員からの反応は、絶対的な休息時間の確保についての賛同はあったものの、11時間の勤務間インターバルでは、「業務がまわらない」「お客様に迷惑がかかる」「他部門との連携に支障が生じる」など、導入に対して慎重な意見が多数寄せられた。しかしながら、労組執行部としては、業務遂行をする上で最も重要なことは、健康且つ安全に従事することであり、そのためには心身の疲労回復のための十分な休息が必要であり、それがより高いパフォーマンス発揮に寄与することを組合員に対して説明し、理解を図った。
そして、2015春闘交渉の結果、就業規則上の休息時間は8時間、安全衛生規程上の健康配慮としての休息時間は11時間を規定化することとなった。
「36協定は、本来、労働時間に関する例外的措置でしかないにもかかわらず、職場では、誰もが時間外労働が当たり前との意識が蔓延し、肯定化している実態」の中では、「従来からの時間外労働・長時間労働を前提とする対処を強化するだけ」では「長時間労働防止のパラドックス」から抜け出せないという認識から、それとは違う軸からインターバル機制に取り組む方向性が生み出されてきたというわけです。
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