『季刊労働法』256号の目次
今月15日に刊行される予定の『季刊労働法』256号の目次が労働開発研究会のホームページにアップされているので、こちらでもご紹介。
http://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/4856/
特集はもちろん、今注目のテーマ「同一労働同一賃金の展望」です。
●長澤運輸事件高裁判決、ハマキョウレックス事件高裁判決が出て、メトロコマース裁判、郵政非正規裁判も現在進行形です。特集では、こうした「20条裁判」と同一労働同一賃金の方向性を検討します。
最新裁判例に見る企業内賃金格差の違法性 京都大学准教授 島田裕子
同一労働同一賃金と非正規雇用労働者の待遇改善~労働側から見た「同一労働同一賃金ガイドライン案」 弁護士 徳住堅治
経営法曹からみた同一労働同一賃金問題 弁護士 中山慈夫
非正規差別と労使関係法 北海道大学名誉教授 道幸哲也
ILO100号条約の審議過程と賃金形態 明治大学教授 遠藤公嗣
注目は道幸哲也さんの「非正規差別と労使関係法」です。どういうことを書かれているのか、もちろん現時点では全然分かりませんが、非正規問題の鍵は集団的労使関係システムの活用にあると言い続けてきている私としては、とても興味をそそられるタイトルです。
もう一つ、これまた興味深いのは遠藤公嗣さんの「ILO100号条約の審議過程と賃金形態」です。おそらくILOにおける条約審議のプロセスの分析から論じているのではないかと思われますが、法政策的研究の重要性を主張してきた私としても、これは是非読みたいものです。
さて、第2特集は「労働市場と法をめぐる新動向」です。
●職業紹介事業、雇用仲介事業等について、現在議論がなされています。この議論を見ながら、第2特集では、労働市場と法政策の関係を考えます。雇用仲介事業等の在り方、労働市場を通じた履行確保の方策、また、民間人材ビジネスの現状と展望といった論点に迫ります。
職業安定法における労働力の需給調整に関わる事業の法規制 西南学院大学教授 有田謙司
プラットフォーマーと雇われない働き方―シェアリングエコノミーが照らす今日的課題― リクルートワークス研究所労働政策センター長 中村天江
労働市場における情報開示等の規律と労働政策 東京大学教授 山川隆一
有田、山川両労働法学者の論文も重要ですが、ここではやはりリクルートの中村さんがプラットフォームエコノミー(シェアリングエコノミー)についてどう論じているのかが気になります。
クラウドワークなどここにきて急激に関心が高まっている「働き方」については、そのうちそれだけで一つ特集を組んでもいいくらいのテーマだと思います。
その他の論文は次の通りです。私の連載は「労働者自主福祉の法政策」です。
あと、今働き方改革の一項目に入ってきて急に話題になりつつある兼業・副業の問題について、同志社の河野さんが、またEU労働法の本格的な論文として同じく同志社の岡村さんが研究論文を書かれています。
■労働法の立法学 第46回■
労働者自主福祉の法政策 労働政策研究・研修機構主席統括研究員 濱口桂一郎
■アジアの労働法と労働問題 第28回■
中国における整理解雇の法規制とその課題 中国西南政法大学准教授 戦東昇
■研究論文■
兼業・副業をめぐる法的課題 ―キャリアの複線化と兼業規制― 同志社大学特別任用助手 河野尚子
フランス「労働改革法」の成立―労働法の「再構築」始まる― 九州大学名誉教授 野田 進・九州大学大学院修士課程 渋田美羽・九州大学大学院博士課程 阿部理香
集団的整理解雇の局面における手続的規制の在り方―EU集団的整理解雇指令上の被用者関与制度との比較法的研究― 同志社大学大学院博士後期課程 岡村優希
■判例研究■
早期退職制度に伴う競業避止義務と割増退職金の返還 第一紙業事件(東京地判平成28年1月15日労経速2276号12頁) 弁護士 平澤卓人
国による業務委託と労組法上の使用者 中国・九州地方整備局(スクラムユニオン・ひろしま)事件(東京高判平28.2.25別冊中労時1496号43頁。一審 東京地判平27.9.10労旬1853号64頁) 四天王寺大学専任講師 常森裕介
■キャリア法学への誘い 第8回■ 長寿化とキャリア課題 法政大学名誉教授 諏訪康雄
●重要労働判例解説
公益通報目的の存否と懲戒解雇の有効性判断 武生信用金庫事件(名古屋高金沢支判平28・9・14労働判例ジャーナル57号23頁LEX/DB25543767) 淑徳大学准教授 日野勝吾
メッセンジャー組合との団体交渉と義務的団交事項 東京都・都労委(ソクハイ)事件(東京高判平28・2・24別冊中労時1496号52頁) 日本大学教授 新谷眞人
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