拙著評エントリが入り口に
「せんり」さんの「転職の舞台裏」というブログで、拙著を手始めに労働関係の本を芋づる式に読まれていったことが書かれていて、大変興味深いものでした。
http://backstage.senri4000.com/entry/2017/02/25/231908 (インプット実証実験|雇用・労働関係)
その芋づる式読書のきっかけについて、「せんり」さんがかなり詳しく書かれています。こういう問題意識をお持ちだったのですね。
・・・企業内で管理職として働いていること、退職や転職も経験していること、子育て期間中もワーキングマザーとして過ごしてきたことなどから、この分野については疑問に思うことが多くありましたし、現在進行形でもあります。例えば、以下のようなものです。
・スキルと経験を買われる中途採用なのに、「転勤できるか」が踏み絵のように質問され、それが処遇に反映されるのはなぜなのか。
・特定職務に派遣さんを採用したらとてもスキルの高い人だったので是非長く働いて欲しいと思うのだけれど、雇用形態の変更が難しい。
・社内資格に「期待役割」が設定されていて、それを満たすかどうかで人事考課を行うことになっているが、実際に割り当てている職務との関連性が希薄で評価が難しい。
・異動で受け入れた人材を「期待役割」に照らすと評価が急降下してしまう。マニュアルに沿って辛めに評価したら部門に不要なのかと言われる。
これらに関連して、日本企業は「職能給」(人の能力に対して給与を払う)で海外企業は「職務給」(仕事に値札がつく)、ということを言われることがあります。分かったような気分にさせられる説明ですが、ではなぜそのように日本だけが職能給という状況になったのかについての説明を見たことがなく、納得感が薄いのです。
ということで、ずっともやもやしていた雇用システム周りについて基礎知識をつけようと決意しまして、池上彰さんお勧めに従って、大きめの書店の関係の棚を見に行ったのですが、どうも目的に合うような書籍が見つけられない(悲)。人事労務関係のところかと思ったのでその当たりを探したのですが、実務チックな細かいノウハウ本があふれていてうまく欲しい本に当たらずに諦めました。
まあ、そういう棚には実務的な本が所狭しと並んでいて、なかなか全体像を分かり易く解説してくれる本は見つけにくいですからね。
そこで、「せんり」さんは検索エンジンで探索を始めます。
・・・色々ワードを試しつつ、興味に近い系統のページを探していたところ、検索ワードがなんだったか忘れましたが、濱口桂一郎氏のブログで氏の著作の書評を紹介している頁に当たりました。2冊紹介されていた新書の書評記事を読みに行き、自分の興味と近そうだと判断し、どちらも電子版が出ていたのでその場で購入し読み始めました。
なんと、本ブログの拙著評を紹介するエントリがヒットしたようです。これですね。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-5d65.html
これは、「hiyu」さんの『働く女子の運命』評と、「国崎犀考」さんの『若者と労働』評の紹介ですが、どちらも電子版が出ているので、「せんり」さんは直ちに読まれたようです 。
切り口は違えど、どちらも「日本的雇用システム」の歴史をしっかり説明することにより全体を俯瞰してその特徴を述べる形になっており、私の持っていた疑問に相当応えてくれるものでした。現場にいた身からするとそこまでではないのでは?と思うところもありつつも、かなり説得的に感じたので、氏の他の著作も読んでみることにしました。
ようやく求めていた種類の本に出会えたようです。そして、さらに、『新しい労働社会』『日本の雇用と労働法』『日本の雇用と中高年』などの他の拙著にも手を伸ばされたようです 。
問題となっている側面を切り出した形(「女子」「若者」「中高年」)でなく、全体をニュートラルに記述しているのは日経文庫のもので、リファレンスとして使いやすいと思いますが、その分抽象的に見えるので、読みやすさで言えばその他の新書の方がよいように思います。
ここまで拙著を読み込んでこられた「せんり」さん、さらにそこから他の方々の著書にも手を伸ばしていきます。それは、amazonのレコメンドだったようです 。
これらを読んでいたところ、Amazonに「日本の賃金を歴史から考える」をお勧めされまして、やっと違う著者の観点から読めそうと思い、購入。賃金という観点なのですが、賃金だけでは当然話が終わらないので賃金を軸に雇用システム全体を眺めることができる構成になっていてとても良かったです。
なんと、私の本を読むような人に金子良事さんを薦めるというのは、最近評判の悪いamazonのAIの知恵だったようですね。実に賢い。
そしてそこから、清家篤、脇坂明、といった方々の労働経済学の本、さらには労働経済白書やJILPTの報告書と、芋づる式にどんどん読み進んでこられたとのこと。
以上のところまで来るのに約1ヶ月かかりました。
それがたった一月の間というのですからすごいです。
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