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2017年2月13日 (月)

大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』

18825もう一冊、朝日新書から、大内裕和さんの『奨学金が日本を滅ぼす』をお送りいただきました。

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18825

いまや大学生の半数以上が奨学金を借りている。多い人は700万円もの借金を抱え、卒業後に返済で困窮する。授業料が高く親世代の収入が減ったため、子世代は奨学金とバイトが頼みの綱。「ブラックバイト」と命名した著者が奨学金問題の本質と解決策に初めて迫る。

ブラックバイト問題を世に訴えてきた大内さんが、それと共にさらに社会のあり方として訴えてきたのがこの(貸与型)(学生ローン型)奨学金問題です。

多くの人々に、多くの場合時代の変化が見えないための世代効果のために、現に目の前にある社会問題が見えない状況にあるときに、それを的確に社会問題として提起し、その構造を分析し、その解決の方向性を提示するという、実践的社会科学のあるべき姿を身を以て体現してきたのが大内さんだったと言えましょう。

本書はその大内奨学金論の一般向けの概説書として、とても読みやすくできています。

9784906708314_200中で、私が『POSSE』32号に寄稿した「日本型雇用と日本型大学の歪み」も引用していただいています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/posse32-6c4d.html

(目次)

【第1章】この30年で大きく変わった大学生活
●奨学金問題の「発見」  
●大学で奨学金の講義を行う  
●新学期の奨学金説明会に長蛇の列  
●片道3時間以上かけて通学する学生  
●事例1 通学に6時間以上かかる学生に
●「大学、楽しいだろ! 」と話しかける高校教員  
●ゼミ合宿の日程調整ができない  
●仕送り額急減│大学生の貧困化によるブラックバイト  
●車をめぐる世代間断層│格安バスツアーの悲劇  

【第2章】なぜ奨学金を借りなければならないか
●事例2 卒業後の返済が600万円を超える不安  
●大学授業料の値上がり│国立だからといって安くない  
●国立でも自宅外通学なら、自宅通学の私立と変わらない  
●無理せずに高卒で働けばいい?  
●奨学金利用│全大学生の50%を超える  
●なぜ奨学金に頼るのか?│急速に下がる親の所得 
●自己責任ではすまされない  
●奨学金返済を心配し、希望の進路をあきらめる学生たち  
●事例3 奨学金返済が無理だから大学院進学を断念  
●事例4 借金1千万円でも弁護士になる夢を追いかけるべきか  

【第3章】奨学金を返せないとブラックリストに
●事例5 延滞金が発生し、返しても返しても元金が減らない  
●事例6 心の病になり奨学金返済は無理……親子で自己破産  
●極めて厳しくなった奨学金の回収  
●奨学金返済は将来借りる学生のため?
●延滞金というシステム  
●「返せない」人に返済を強制する奨学金制度  
●1十分には知られていない返還猶予制度  
●2返還猶予制度の不備  
●「使いにくい」救済制度│猶予・減額・免除規定  
●奨学金の回収強化  
●事例7 返済のためにブラックな職場で頑張った末に過労自殺  

【第4章】奨学金返済で「結婚」「出産」「子育て」できない
●奨学金を「返す」ことによって生み出される問題  
●事例8 結婚相手に多額の返済義務があることが分かり、両親が難色  
●事例9 2人の返済額合計が1200万円。出産・子育ては無理?  
●奨学金返済のため「結婚・出産できない」  
●奨学金返済がのしかかる│若年層雇用の激変  
●結婚や出産・子育ての困難と親子関係の現在  
●重くのしかかる子育て費用・教育費負担  
●アンケートでも明白「結婚できない」「出産できない」「子育てできない」  

【第5章】学費と奨学金制度の過去から現在
●国立大学の授業料はなぜ安かったのか?  
●授業料値上げへの動き  
●なぜ学費の上昇が問題とならなかったのか?  
●大学の学費上昇と日本型雇用  
●80年代に有利子奨学金の導入  
●有利子奨学金の拡大  
●有利子貸与型奨学金はなぜ受け入れられたのか?  
●高卒と大卒の就職格差  
●1990年代から続いた親の所得減少  
●自己責任論の台頭と日本型雇用の「幻想」  

【第6章】奨学金をめぐる改善の動き
●ゼミでの学生との出会い  
●「愛知県 学費と奨学金を考える会」の活動と反響  
●「奨学金問題対策全国会議」結成  
●2014年、早くも行われた奨学金制度改善  
●奨学金制度改善の運動から見えてきた課題  
●高校教員や大学教員の認識不足  
●ブラックバイトの発見  
●奨学金利用者が当事者意識を持つことの困難  
●2015年以降の奨学金制度改善運動│中央労福協との出合い 
  ●所得連動返還型奨学金制度の問題点  
●2016年秋からの奨学金制度改善運動  

【第7章】奨学金制度│当面の改善策
●当面の対策  
●1奨学金をめぐる現状を正しく認識する  
●2高校・大学関係者に求められること  
●3日本学生支援機構に求められること  
●4親や保護者に求められること  
●5奨学金返済に困った場合  
●貸与型奨学金の改善へ向けて  
●1延滞金を廃止する  
●2返還猶予期限の撤廃  
●3日本学生支援機構による運用面での改革  
●4真の所得連動返還型奨学金制度の導入  
●5人的保証の廃止と機関保証料の引き下げ  
●6無利子貸与型奨学金の抜本的拡充

  【第8章】奨学金制度の抜本的改革が必要
●奨学金と教育費負担をOECD諸国と比較する  
●私費負担=親負担主義の限界  
●貸与から給付へ│給付型奨学金の意義  
●給付型奨学金だけでよいのか│授業料引き下げとセットで  
●給付型奨学金と授業料引き下げの財源はどこに求めるべきか  
●財源をどこに求めるか│富裕層と大企業  
●給付型奨学金と授業料無料のために約4兆円  
●人への投資の重要性│大学教育への公的支出増額による経済戦略  
●「自分の子どもさえ良ければ」を乗り越えられるか  
●「生まれながらの差別」に鈍感な日本社会を変えたい

  おわりに  
奨学金返済に困った時の相談先  
参考文献  

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