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2017年2月28日 (火)

『日本労働研究雑誌』2017年2・3月号

680_0203『日本労働研究雑誌』2017年2・3月号は、3年ぶりの労働法学の学界展望が特集で、本庄さんの派遣本や大木さんのイタリア均等本など、若手の意欲作も取り上げられています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/02-03/index.html

ここでは、石田眞さんの巻頭言を。これはPDFファイルで全文読めます。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/02-03/pdf/001.pdf

基本認識として、

労働法の曲がり角に関していうと,「労働法は誰のため,何のために存在するのか」という〈労働法の範囲と目的〉および,「労働法は何をするのか」という〈労働法のあり方〉の双方が揺らいでいる。具体的には,労働法の「境界」が労働世界の現実と乖離し,従来の定型的な労使関係像を前提とした画一的な規制モデルが労働世界の多様化・複雑化に十分に対応できなくなってきている。その背景には,労働法の対象である〈企業組織や労働市場〉〈労使関係や雇用関係〉が,第四次産業革命といわれる世界的なシステム変動に伴い,大きく変容していることがある。

という認識を示した上で、ではこれから何をなすべきかについて、歴史研究、比較研究、国際発信の3点を挙げます。

まず歴史研究の重要性について、

いまわれわれの眼前にある労働法も,他の社会現象がそうであるように,歴史的な産物である。それは,一定の社会システムを前提にそれと相互構築的に作りあげられたイデオロギー装置である。したがって,相互構築の前提である社会システムが変動すれば,それに対応する労働法も変動を余儀なくされるはずであり,そのことは,現在の労働法が生成してきた歴史的経路を辿ることによってより明らかになる。現在ごく自然で自明であると思われている労働法システムも,歴史を辿ることによって,実は偶然や選択の結果であることがわかる。そして,そうした現行労働法の歴史的偶然性や恣意性を明らかにすることは,現在ある労働法とは別のあり方を構想する際の重要なきっかけになるはずである。

4623040720これはまさに我が意を得たりで、拙著『労働法政策』や季刊労働法連載の「労働法の立法学」で、延々と現在の法制を過去に遡って歴史の細かいことをあれこれ論じているのも、「現行労働法の歴史的偶然性や恣意性」を示す効果があると思っています。

ただ、恐らくここで石田さんが想定しているのは、そういうレベルよりもう少し深く、最近早稲田の紀要にも書かれているような、雇傭契約のそのもっと原点に遡るような話なのだろうと思います。労務賃貸借と奉公とか、本気でやると極めてディープな世界ですが、なかなか若手が手をつけにくい領域かも知れません。

次に比較研究について、

わが国のこれまでの労働法学において,国際比較の試みは,労働法政策の構想を考える際にも,法解釈学的示唆を導き出すためにも,盛んにおこなわれてきた。しかし,そこでおこなわれた比較法研究の多くは,かたちを変えた外国法研究あるいは日本法研究であったのではないか。ある種の比較がおこなわれたとしても,それは,わが国労働法の日本的特色や欠陥を浮き彫りにすることにとどまっていたのではないか。もちろん,それらの研究の意義を否定するものではないが,労働法現象が国境を越えて展開し,各国の労働法が直面する課題も共通化するグローバル時代にあっては,それぞれの国の歴史的経路性を等しく認めつつも,共通の枠組を設定して比較をおこない,それを通じてより普遍的な労働法システムを構想する比較労働法研究が必要であると考える。

Eulabourlawこれもまさにその通りで、やや我田引水ですが、様々な法伝統を持つ諸国が合わさって作られたEUという枠組で摩擦を生じさせながら労働法が構築されてきた歴史というのは、大変示唆するものが大きいと思います。先月刊行した『EUの労働法政策』も宜しくお願いします。

最後に国際発信ですが、

共通の課題と共通の枠組にもとづく国際的な比較労働法研究をおこなうためには,その前提として,わが国労働法学の国際的発信力を強化することが決定的に重要である。とくに,若い労働法研究者たちは,国際的な議論の場に積極的に参加し,日本の労働法学の国際的発信力を高め,それを通じてグローバル時代の労働法学の未来を担ってほしいと願っている。

ということで、名宛人は「とくに,若い労働法研究者たち」ということなので、皆さんよろしくね。

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