フォト
2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« 社会的で民主的な欧州? | トップページ | 2017年のキーワード「働き方改革」@『先見労務管理』2017年1月10日号  »

2017年1月 9日 (月)

俺はね、五人潰して役員になったんだよ

51286t0bjvl__sx300_bo1204203200_松崎一葉『クラッシャー上司-平気で部下を追い詰める人たち』(PHP新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

自分の出世のために、次々に部下をつぶしていく人の精神構造と対処法を、数多くの実例に接した精神科の産業医がやさしく解説。

クラッシャー・ジョウじゃなくって、クラッシャー上司です。

著者の松崎さんは数少ない産業精神医学の専門家。いじめ、パワハラが大きな問題となり、電通第二事件が世情を賑わしている今日、是非多くの人々に読まれるべき本です。

とともに、そこに描かれているいくつもの実例を読む進むにつれ、圧倒的に多くの組織人たちは、「あっ、これ、我が社にもあるある」という思いを何回もするでしょう。そう、「多くの会社、組織のメンタルヘルスを見てきたものの経験値として、一部上場企業の役員のうち数人は「クラッシャー上司」がいる、ということはできるだろう」と著者は述べています。

彼らクラッシャー上司たちは一種の発達障害なのですが、仕事ができて上司の覚えが良いものだから、そのまますいすいと出世していき、社内の被害者を生み出し続けるというわけです。

(追記)編集担当のオバタカズユキさんのおっしゃるように、松崎さんはクラッシャー上司が全て発達障害だとは言っていません。1件その例が出てきますが、それで上記のように表現するのはミスリーディングでした

https://twitter.com/obatakazu1

「はしがき」のこの一節は、そういう会社の生理を余すところなく物語っています。

・・・様々な組織でメンタルヘルス不全の治療・予防システムに取り組んでいた私たちは、とある大手の広告代理店に招かれた。

ふむ、大手広告代理店と言えば日本に二社しかないはずですが。

その会社の経営幹部が言うには、働き過ぎで心を病む社員の問題に悩んでいるとのこと。そこで抜本的解決策をともに考えてもらいたいと、産業精神医学を専門とする私たちが呼ばれたのである。

ところが、対策チームを組んで同社に赴くと、ちっとも歓迎されている感じがしない。声をかけてくれた経営幹部以外の、お偉いさん方の顔つきが険しいのだ。話がまったく生産的な方向に向かわず、それどころか常務からこんなことを言われてしまった。

「メンタルヘルスなんてやめてくれよ」

にわかに意味がとれないでいると、常務は続けてこういった。

「俺はね、五人潰して役員になったんだよ」

そして、私たちはこう告げられた。

「先生方にメンタルヘルスがどうの、ワークライフバランスがどうのなんてやられると、うちの競争力が落ちるんだ。会社のためにならない。帰ってくれ」

社員のメンタルを潰して役員に成り上がった常務が、こう嘯くのが日本を代表する広告代理店だったわけですね。

こういう実例が繰り返し描かれるのが第1章、彼らの精神構造を「未熟なデキル奴」として分析してみせるのが第2章。そしてクラッシャーを生み出す日本の会社のあり方として、メンバーシップ型雇用を提示して、ある種の社会学的分析をしているのが第3章です。

« 社会的で民主的な欧州? | トップページ | 2017年のキーワード「働き方改革」@『先見労務管理』2017年1月10日号  »

コメント

せんせー、ADKさんも大手に入れてあげて下さい

実習時代に発狂寸前まで追い込まれ、なんとか耐えたものの修了後に入院しました。

普通に厳しいだけなら、後々役に立つという美談になるのかもしれませんが、精神→身体の症状が悪化し重度障害に至る危険があったので本当に今でも思い出して怒ります。


>一種の発達障害なのですが
↑これ横線引かれていますが、思うところがあったのでしょうか
私の経験だけですみませんが、職場のイジメ加害者って強い者には弱い(つまり適応力が高い)ので本人としては何にも「障って害になる」ことはないと思いますよ。

濱口さま

訂正と追記が入りよかったです。早朝にたまらずこの部分にコメントしておこうかと思いましたが、今見直しホッとしました。
文言云々の社会的意味からではなく、専門家でも評価が定まらないただいま進行中の研究分野です。
ですから紹介本の読者も、このブログ訪問者もその”一点”で突っ走る可能性が考えらるからです。
失礼しました。

濱口先生、私が企画・構成した新書をご紹介くださり、まことにありがとうございました! おかげさまで、発売前にも関わらず、アマゾンランキングが急上昇です。
そして、訂正も感謝感謝です。私がツイッターに書きこんだことをキャッチしてくださるなんて。先生の誠実さに、おべんちゃらではなく、心を動かされました。
3章は、濱口先生の議論が土台です。重ねてお礼を申し上げます。

わざわざ拙ブログまでおいでいただき恐縮です。
読んだ感動のあまり、いくつかの事例で指摘されていた発達障害やパーソナリティ障害やらの概念が若干ごっちゃになってしまい、そのまま上記エントリに書いてしまった失敗です。

話題になったのはなんと言っても、本書のはしがきに登場する「俺はね、五人潰して役員になったんだよ」という台詞の凄みゆえでしょうから、わたしはそれを(少しフライング気味に)紹介したに過ぎません。

いずれにしても本書ができるだけ多くの読者に読まれることを祈っております。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 俺はね、五人潰して役員になったんだよ:

« 社会的で民主的な欧州? | トップページ | 2017年のキーワード「働き方改革」@『先見労務管理』2017年1月10日号  »