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2017年1月 6日 (金)

社会的で民主的な欧州?

Hbsjan172ドイツのハンス・ベックラー財団が「社会的で民主的な欧州?」というワーキングペーパーをアップしています。

http://www.boeckler.de/pdf/p_wsi_wp_207.pdf

Everywhere in Europe, support for the European integration process de-creases. More and more Europeans associate the European Union with the dismantling of social and democratic rights. Fundamental social rights clash with the market-liberal single market law, the key institutions of the Europe-an social model are undermined. What are the causes for this develop-ment? Which changes are necessary to achieve a more social and demo-cratic Europe? This article reconsiders the concept of Social Democracy and suggests using it as a blueprint for a fundamental change of course of the European integration process. Starting point is the finding that the insti-tutional architecture of the European multi-level system creates a systemat-ic imbalance between liberalization and social regulation. On the basis of this problem analysis, I identify three policy fields that are of central im-portance for creating a social and democratic Europe: an “open” constitu-tion for Europe, social minimum standards and the recuperation of the fiscal capacities of the political system.

欧州の至る所で、欧州統合への支持は減退しつつある。ますます多くの欧州人が、欧州連合を社会的民主的権利の剥奪と同視している。基本的社会権は市場自由主義的単一市場法と衝突し、欧州社会モデルの基本構造は掘り崩されている。何がこの事態の原因なのか?より社会的で民主的な欧州を達成するにはいかなる変化が必要なのか?本稿は、社会民主主義の概念を再考し、欧州統合過程の抜本的方向転換の青写真として使うことを示唆したい。出発点は欧州の多次元的制度構造が自由化と社会規制のアンバランスを生み出していることの確認である。この問題分析の上に立って、私は社会的で民主的な欧州を作り出すために枢要な三つの政策分野を提示したい。すなわち、欧州の「オープンな」憲法、社会的最低水準、そして政治システムの財政的能力の回復である。

EUがほとんどネオリベの巣窟とみなされ、「社会的で民主的」なものを求める欧州各国民の声なき声が、国民戦線や英国独立党やそういった右派ポピュリズムに吸い寄せられていく現状に対する危機感がにじみ出ている文書です。

ただ、ではそこで提示されている「抜本的」なEU改革がどれほど可能なのかを考えると、実はそっちの方が夢物語に近いのですね。市場の自由化を憲法レベルから引きずり下ろして普通の法律レベルにし、代わりに社会的権利を明記せよ、と。でも、後者だけでもと作ったEU憲法条約は、まさに前者に対する国民的怒りの標的にあってあえなく潰えたわけです。

通貨統合、金融統合ばかりが進行し、人々の生活を守るべき財政能力が置いてけぼりを喰らっている、いや確かにそうだけど、それに一番抵抗するのは(ネオリベと共に)国レベルからその最後のパワーが奪われることを嫌がるナショナルなレベルの「社会的」感覚でもあるわけで。

(ドイツ労働総同盟のシンクタンクである)ベックラー財団のようなEU統合を支持する左派としては、EUレベルのリベラルとソーシャルのバランスが偏っているから、前者を減らして後者を強化しようという話になるんだけれど、そういうEU支持を共有しないナショナルな左派からすると、それ自体が国家レベルの社会的砦を突き崩そうとする陰謀に見えてしまう。

そして、EUレベルに頑強に築かれた市場統合のためのメカニズムは、そう簡単に削り取られはしないわけで。本書自体が、なぜそういうEU統合支持の左派が支持を得られないかを問わず語りに示している感もあります。

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コメント

財政統合(ヨーロッパ全体の社民主義)と市場統合(ヨーロッパ全体の自由主義)を国家と庶民の敵だと批判するナショナリストは、じゃあどうするのか? この対案が無い状態で極右ポピュリストが支持を集めている状態は憂慮されるべきだ。

財政統合が無理筋なのはそうなんだけど、市場統合まで無くなって貧しくなっていいのだろうか。

>本書自体が、なぜそういうEU統合支持の左派が支持を得られないかを問わず語りに示している感もあります。


でもさーEU反対左派が市場統合廃止による競争から逃れる利益だけを主張し、市場統合で得ていた利益を失うことは隠しているじゃん。

「EUのおかげでドイツ労働者は利益を得ているんだよ!」と説明しても聞いてくれないでしょ?

「なぜ支持を得られないのか」って「EUが嫌い」以外にないような気がする。

英独立党は公約のほとんどが嘘でポピュリストなんですが、左派は正直かつ論理的かつ説得的に主張しろ、というのは左派にだけ厳しくないですか?

だから阿波さんは、俺らブルリベがブイブイいわせるからお前らルンペン庶民はだまって働け、そして貢げ。とだけ言ってりゃ良いんですよね。え、そんなこと言ってねーよ?言ってないけどこれまでのコメントで透け透けですぜ。

> Dursan

君ね、国家社会主義者とブルジョアしか見えないんですか?
能力によって格差があっていいに決まってんじゃないですか。
それを「搾取」と言って否定するのは自由だけど、それによって社会全体が裕福になるのか。

程度問題だとわからない単純01人間に何を言っても無駄ですね。これ以上はご迷惑なので書きませんが。

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