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宗教者の労働者性

>聖職ということで個人的に関心があるのが、神主さん、お坊さんや神父さんなどの宗教者の労働者性です。
いわゆる「感情労働」の一種なのかも知れませんが、労働時間や休暇などがきちんと取れているのか。宗教者のメンタル不全などということもあるかも知れません。判例や学説がもしあれば、御教示いただければ幸いです。

一昨年のエントリですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-9ea3.html(神職(権禰宜)の労働者性)

おやおや、神職が解雇無効地位確認訴訟です。ときくと、神職の労働者性はどうなの?と思いますね。

おお、正面から労働者性を認めていますね。

この判決(住吉神社事件(福岡地判平成27年11月11日))のうち、労働者性に係る部分を引用しておきます。

(ア) 被告神社においては、被告Y2及びBが、原告を含む神職のシフトを組んで勤務表を作成し、原告は、これに従って、被告神社に出社させられていた(前記(1)ア(イ))。また、原告は、被告神社においては、被告Y2及びBらの指揮の下、書類作成、参拝客対応及び清掃等の事務作業並びに祭典運営のための補助作業等に従事していたものであって、原則として、自らが儀式等を主宰していたものではなかった(前記(1)ア(ウ))。さらに、原告は、就職先である被告神社の宮司から、被告神社における勤務の開始前及び終了後において、A神社の朝みけ、夕みけ、清掃、巡回及び日誌作成等の業務を命じられたため、これらの職務に従事した(前記(1)ア(エ))。これらのことからすれば、原告は、被告神社によって、時間的場所的に拘束され、業務の内容及び遂行方法についての指揮監督を受けて、被告神社及びA神社の業務に従事させられていたということができる。他方、本件全証拠によるも、被告神社からの業務に関する指示について、原告が諾否の自由を有し、業務遂行における広範な裁量を有していたとは認められない。
  (イ) また、被告神社は、原告に対し、「給与」の名目により、毎月一定額の俸給を支給し(前記(1)イ(ア))、上記俸給の支給に当たっては、使用者が一般の労働者に対して賃金を支給するのと同様に、所得税及び市民税等の源泉徴収を行い、健康保険料、厚生年金保険料及び雇用保険料等の各種社会保険料を控除していた(前記(1)イ(イ))。そして、原告が平成24年3月まで支給されていた俸給は、基本給及び奉務手当だけでも合計月額20万円であり(前記前提事実(3)ア)、法定労働時間を前提として時給を計算しても、原告の時給は1100円を超える(別紙1「基礎時給計算書」参照。)。この金額は、平成23年度当時における福岡県の最低賃金である1時間当たり695円を大きく上回るものである上、原告は職員用宿舎に居住していたから賃料及び光熱費を支払う必要がなく、社宅料月額5000円が控除されていたことを踏まえても、原告には住居費の負担がほとんどなかった。しかも、被告神社の神職に支払われる俸給額は、その地位が高いほど高額となる傾向があることが看取できる(前記(1)イ(ア))。これらのことからすれば、被告神社が原告に対して支払っていた俸給は、単に最低限の生活維持を目的とするものとはいえず、被告神社における労務提供の対価として支払われたものと評価でき、賃金と同じ性質のものであったといえる。
  (ウ) 以上によれば、原告は、被告神社の指揮監督の下、被告神社に対して労務を提供し、被告神社は原告に当該労務提供の対価としての賃金を毎月支払っていたことになるから、原告は、労基法及び労契法上の労働者に当たるというべきである。
  この判断は、被告神社には神職に適用される就業規則、賃金規程等がなく、被告神社が平成25年11月以降に神職を雇用保険の被保険者とする扱いを止めたこと(前記(1)ウ)により左右されるものではない。
  イ これに対し、被告神社は、原告が本件通達二(イ)の「宗教上の儀式、布教等に従事する者」、又は「僧職者等で修行中の者」に当たるから、原告は労基法及び労契法上の労働者には当たらないと主張する。
  しかし、およそ宗教上の儀式、布教等に従事する全ての者、あるいは、僧職者としての修行を行っている全ての者が労働者でないとすれば、使用者の指揮監督の下で使用され、労務提供の対価である賃金を受け取る労働者(労基法9条参照)であっても、その労務提供が少しでも宗教上の儀式に関係し、又は修行の側面を少しでも有しさえすれば労基法の適用を免れるということになりかねず、労基法及び本件通達二柱書及び(ロ)と矛盾しかねない上、本件通達二(イ)に規定される者と、本件通達二(ハ)にいう「宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基いて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者」との区別を行うことができなくなる。したがって、労基法と本件通達との整合性に配慮しつつ、本件通達二柱書及び(イ)ないし(ハ)相互の関係等を踏まえて合理的に解釈すると、本件通達二(イ)に規定される者に該当するのは、「宗教上の儀式、布教等に従事する者」又は「僧職者等で修行中の者」であって、かつ、「何等の給与を受けず奉仕する者」に限られるというべきである。
  したがって、前記(1)アのとおり、原告は、被告神社において神職として宗教上の儀式等に従事しており、その活動には一人前の神職になるための修行の側面があるとはいえ、被告神社から、毎月、基本給及び奉務手当等の俸給の支給を受けているから(前記前提事実(3))、本件通達二(イ)には該当しない。むしろ、原告は、本件通達二(ハ)にいう「宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基いて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者」に該当し、労働者に当たるか否かは、具体的な労働条件を一般企業のそれと比較し、個別具体的な実情に即して判断すべきところ、原告が労働者に当たるのは前記アのとおりである。これに反する被告神社の主張は採用できない。
  なお、本件通達にあるように、信教の自由を保障する憲法及び宗教法人法の定める宗教尊重の精神を考慮して労基法を解釈する必要があるとしても、原告の被告神社における勤務の内容は、上位の神職による指揮の下、祭典、催物等の儀式に対する補助的作業、書類作成等の事務作業をするというものであり(前記(1)ア(ウ)参照)、原告に労基法及び労契法の適用を認めても、信教の自由を害し、又は宗教尊重の精神に反するとは考えられない。このことは、前記(1)ウのとおり、被告神社がかつて神職を雇用保険の被保険者とし、労災保険の対象として認め、被告神社の禰宜であるBが労働基準監督署の調査に当たって平成24年に任意に作成した就業規則及び給与規程の文案(甲2の2、甲30)に労基法37条に整合するよう時間外勤務手当を支払う旨の規定を設けるなど、宗教法人である被告神社自体が神職を労基法及び労契法上の労働者とすることを許容する行動をとっていたことからもうかがわれる。

なお、その後の本牧神社事件(東京地判平成28年1月25日)も権禰宜のX1とX2がパワハラを受け免職又は雇止めされた事案ですが、被告側が原告の労働者性を争っておらず、地位確認請求とパワハラによる損害賠償請求が棄却されています。

僧侶の労働者性についての判例は見当たりませんが、仁和寺事件(京都地判平成28年4月12日)は寺の料理人の不払い残業と過重労働が問題になった事件です。

Rei200801274171あと、本ブログで過去、やや冗談交じりながら、労働者性シリーズの一環としてこんなエントリを書いたことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-00c0.html(神の御前の労働基準法)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-2400.html(神の御前の労働基準法再び)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-fd0d.html(神の御前の労働契約法と労働組合法)

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コメント

お忙しい中、早速御教示くださりありがとうございました。
熟読します。
仁和寺とは徒然草に出ていたあのお寺さんですね。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: いーちゃん | 2017年1月19日 (木) 21時35分

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