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2017年1月23日 (月)

大内伸哉『AI時代の働き方と法』

278836大内伸哉さんの新著『AI時代の働き方と法 2035年の労働法を考える』(弘文堂)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.koubundou.co.jp/book/b278836.html

 IT、人工知能、ロボティクスによる第4次産業革命は、人類が経験したことのないスピードと規模で、消費や生産など生活のあらゆる面で、制度・習慣・慣行を一変させはじめています。
 それにともない働き方も変化し、現行の労働法では対処できない問題が起こりつつあります。雇用環境が激変する社会で、私たちの働き方はどのように変わっていくのか。それに対応するために労働法はどう変わっていくべきか、また政府はどのような政策をとるべきか。未来を見据えて大胆に論じます。

次々に意欲的な本を出し続ける大内さんの、労働法学会では誰も手を出しかねているAIなどの技術革新の問題に正面からぶち当たっていこうとする意欲作といえましょうか。

ただ、その内容は日本型雇用システムや正社員論、雇用流動化論といった、必ずしもAI時代だからというわけではないトピックと、第4次産業革命論うあ自営的就労といった先進国共通の課題への対応のトピックとが、絡み合いながら議論されていて、読者は頭の中でそれを解きほぐしつつ読んでいく必要がありそうです。

たとえば、第1章では日本はジョブ型ではなくメンバーシップ型だったからME革命やIT革命にスムーズに対応できたという話があり、その詳しい仕組みの説明もある一方で、それがあとの方の第4次産業革命で正社員制度の維持が困難になるという話との論理的なつながりがもう少し説明されているといいように思いました。

プロローグ
第1章 技術革新と日本型雇用システム

  1 技術は脅威?
   コラム 欧州の職務給
  2 歴史の教訓?
  3 日本型雇用システムの適応力
   コラム 家事労働と女性の解放
  4 ME革命とIT革命
  5 受難のホワイトカラー
  6 小括
   コラム 奴隷の解放と復活
   補論 雇用の支援・創出効果

第2章 第4次産業革命と労働政策上の課題
  1 労働力人口の減少
  2 グローバル化
  3 産業構造の変化―第4次産業革命
  4 人工知能の発達
  5 産業界の構造転換と労働政策
  6 小括

第3章 労働法とは何か
  1 労働法の誕生
   補論 労働法のもう一つの系譜
   コラム 労働と契約
  2 従属労働論
  3 日本の労働立法
   コラム 公務員法は労働法ではない?
   補論 労働法学の課題
  4 日本の労働法の展開過程の分析
  5 小括
   補論 日本国憲法と労働法

第4章 正社員論―第2の労働法
  1 正社員はなぜ存在するのか?
  2 正社員を軸とする企業人事
  3 正社員制度を補完する労働契約法理
   補論 解雇権濫用法理の拡張
  4 非正社員はなぜ存在するのか?
   コラム 最低賃金法の改正
   コラム 2014年のパートタイム労働法改正
   補論 同一労働同一賃金
  5 小括

第5章 人材移動を実現するための改革―雇用流動化に向けた政策
  1 転換期にある労働市場政策
   コラム セーフティネットとモラルハザード
  2 雇用調整をめぐる問題―解雇法制の見直し
      補論 解雇の有効性判断
   補論 正社員制度を支えるもう一つの仕組み
   コラム 解雇規制と格差問題
   補論 ガイドライン方式
  3 職業訓練政策
   コラム 産業構造の転換に伴う職業訓練
  4 労働市場サービス
   コラム ドイツのハルツ革命
  5 小括

第6章 知的創造的な働き方に向けた改革―雇用流動化に向けた政策
  1 知的創造的な働き方と労働時間規制
   補論 長時間労働の是正
   補論 労働安全衛生法上の健康管理
   補論 高度プロフェッショナル制度
  2 場所的・時間的に自由な働き方としてのテレワーク
   補論 雇用型テレワークに対する労働法の適用
  3 小括

第7章 自営的就労―労働法のニューフロンティア
  1 自営的就労はなぜ必要となるのか
   補論 組織と市場
  2 クラウドワーク
  3 個人の起業
   補論 副業規制
  4 自営的就労と労働法
   補論 自営的就労者の事業者性
   補論 自営的就労とマッチング
   コラム 知的創造はリアルな会議から
  5 小括

第8章 労働法に未来はあるか?
  1 新たな格差問題
  2 労働法の終焉?
  3 人材育成の重要性
  4 労働法の真の再生,そしてフェイドアウト?
  5 脱労働時代の生活保障
エピローグ

第7章の自営的就労のところが本書のキモになりますが、ここは私も非常に面白い沃野が広がっていると思います。これをきちんと論じようとするならば、恐らく第3章で概観した労働法の歴史のさらに昔に遡って、雇用と請負を包括した人的サービス(ディーンスト)と契約のあり方を突っ込んで考える必要があるのではないかと、ぼんやり思っています。

その意味では、産業革命と共に生み出された「労働法」ではないにせよ、広い意味での「労働の法」の広がりを考えていく必要があるので、第8章の最後のところで、「脱労働時代の生活保障」といってベーシックインカムで「労働法の出番はもはやなさそうだ」というのは、最後の台詞としてはいかがなものかと正直感じたところです。

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