芝田文男『「格差」から考える社会政策』
芝田文男さんより『「格差」から考える社会政策』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.minervashobo.co.jp/book/b252817.html
今、「格差」はますます拡大しているといわれている。解決への道筋が不確かな中で様々な政策が提案され、賛否両論を伴いながら施行されている。本書は、格差問題に関わりの深い雇用・福祉・所得保障政策の主要な課題について、統計データを示しながら、わかりやすく解説し、格差を主軸に現代日本社会の諸問題を読み解く。読者自身が考える手がかりとなる情報を丁寧に記述し、課題と論点の理解を促す。現代の雇用政策・社会保障政策を学ぶ最適のテキスト。
芝田さんは旧厚生省の官僚から現在は京都産業大学で教鞭を執っておられる方です。
本書も、社会保障政策を中心に書かれている本かなと、タイトルを見て思いましたが、実は思った以上に雇用問題にウェイトを置いた本になっています。
細目次はリンク先にありますが、章立てだけで見ても、
はじめに
第Ⅰ部 総論:日本の格差の実情をさぐる
第1章 格差・貧困の現状――諸指標から
第2章 格差に対する様々な考え方
第3章 戦後日本の政治経済と現在の制約条件
第Ⅱ部 子ども世代の政策:少子化と子どもの貧困
第4章 子どもの貧困(1):総論と少子化政策
第5章 子どもの貧困(2):子どもの貧困対策とひとり親対策
第Ⅲ部 就労年齢層の政策:雇用・所得保障・租税等
第6章 「日本型雇用」の変質と労働政策――雇用流動化政策
第7章 非正規雇用政策
第8章 労働時間規制をめぐる政策
第9章 若者・女性の雇用政策
第10章 就労年齢層のセーフティネット――最低賃金・雇用保険・生活保護
第11章 税制等の見直しによる格差是正策
第12章 ベーシック・インカムの提案をめぐる議論
第Ⅳ部 高齢者層の政策:雇用と年金
第13章 高齢者層の格差――年金制度と無年金・低年金
第14章 公的年金制度の持続可能性と対策
第Ⅲ部の7章分が「就労年齢層」に充てられ、その大部分が雇用政策マターになっています。その前の第Ⅱ部も子どもの貧困というテーマで裏返すとひとり親問題という就労年齢層の問題ですから、そういう意味ではこれまで日本の社会保障政策ではどちらかという日陰者であった世代に着目した意欲作ということになるでしょう。
さらに、その第Ⅲ部の冒頭で「日本型雇用」の変質に着目するなど、問題意識も極めて鋭いものが感じられます。
興味深いのは第12章でわざわざ1章を割いてベーシックインカムを取り上げていることです。記述は中立的で淡々と書かれていますが、セーフティネットの話の延長線上に税制を論じ、ベーシックインカムを論じるというのは、あまり他の社会保障本には見受けられない構成で、いろんな意味で面白いなと思います。
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