誰よりも労働規制の意味を理解している穴見陽一議員
ファミリーレストランの経営者であり、自由民主党の国会議員である穴見陽一さんのインタビュー記事がBuzzFeedというネットニュースに載っています。
https://www.buzzfeed.com/akikokobayashi/service-roudou?utm_term=.iuPJY0YKE#.kd9jJpJMQ
これが、へたな経済学者よりもずっと、労働規制というものの意味を的確に述べているので、その部分を引用しておきます。
・・・1社だけが営業時間を短くしたり、人件費を上げたりすると、競争に負けるかもしれない。危機感は拭えなかった。
この競争原理は、外食産業に限らない。例えば、建設会社の場合。A社が3カ月の納期を提示すると、B社は残業100時間を見込んで2カ月の納期を提示する。同じ金額であれば、納期が早いほうが競争で有利になる。
だが、法律で残業が禁止されたとしたらどうだろう。
A社もB社も、同じ3カ月の納期で勝負することになる。無理をして前倒しする必要はなくなるぶん、技術力の高さや発想の斬新さなど、時間ではない評価軸が新たに生まれる。
「みんなが同じルールのもとで、同じだけの時間で戦える土壌をつくらなければフェアではない。それでコストがかかるとしても一斉に値上げができる。世の中のルールが変われば、『せーの』で構造改革できる。単独の企業努力ではできないことです」
「ビジネスマンだった僕が政治の世界に入ったのは、ルールメイキングのためです。政治は予算をつけることだけではない。国民が求めているのは、ルールを変えてほしいということなんです。国民の生命を守るために最も重要なルールです」・・・
そう、ルールのない自由競争は、健全な競争を持続できる基盤を掘り崩すのです。だからこそ、みんなに適用されるルールが必要になるのです。
・・・「だからこそ、国が労働規制をする必要がある。労働者の家庭生活や心身の健康を正常に保つための時間を守るのが、国の責務です。長時間労働は、重大な人権問題だと考えています」
・・・「経営者は、消費税の増税などのショックにこれまでも対応してきた。長時間労働の改善もそうしたショックの一つに過ぎない」と穴見さんは言う。
この穴見さんについては、今年本ブログでその著書(共著)を紹介しています。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-15f6.html (川崎二郎/穴見陽一『政治主導で挑む労働の構造改革』)
著者の二人は自由民主党の国会議員です。ですが、本書の内容は、労働問題の専門家が読んでも参ったというくらいの高い水準になっています。・・・
こういうものごとの道理を一番よくわかってこうしてわかりやすく説明できる国会議員が、連合が組織的に支持している政党の国会議員でないことの皮肉をこそ、ジャーナリストたるもの、実は問い詰めなければいけないのではないのでしょうかね。どこぞの政治評論家よろしく「連合は誰の味方なのか」などと偉そうに問い詰めるのであれば・・・。
http://news.yahoo.co.jp/feature/467 (「連合」は誰の味方なのか 神津里季生会長に聞く)
« hamachanブログ2016年ランキング発表 | トップページ | ブラック消費者 »
連合会長のインタビュー記事は、見出しで釣られて見てみましたが、アクセスしたとたん*に方向性の分かるもので、内容もそれを裏切らないものでした(げんなり)。
見出しなど、キャッチフレーズをひねり出すのは上手だと思いますが、具体的にどういう行動をしたいのか書いてもらわないと、地に足が着いていない感をぬぐいきれません。
*:雑誌のGQを開いたかと思いましたよ。
投稿: ちょ | 2016年12月28日 (水) 00時16分
「労働者の待遇の最低限度(時給と労働時間制限)で守り、それが守られている以上は個別の企業を守らず淘汰に任せるべき」と、L型G型の冨山和彦氏が述べています。
でも、「労働者の最低限度の待遇」を規制で守らずに、「劣った企業の淘汰」を規制するという逆の対応を取ってきたのは自民党ではないか。
自民党のダメ中小企業保護策のせいで企業淘汰も労働環境改善も放棄されてきた業界にいる身としては、今さら何を言っているのかと憤りを感じる。
というか自民党自体が、「労働規制より競争規制」で、むしろ労働者の待遇を低くするほど儲ける環境を作ってきたのに、まさに「不良がちょっと良いことをしたら褒められる」ような糞記事書く筆者も終わってる。
酒・バス・タクシーと企業淘汰や価格規制はやるくせに労働規制はやらない糞政党潰れろ
「一律のルール」で労働者を保護することに全く異論はないが、だったら特定企業の労働者のみメシウマする差別を止めろよ。差別される側からすれば「労働者は連帯すべき」など「冗談は顔だけにしろ」と言いたいね
二重基準で差別することが目的になってるから連合は労働貴族と言われる。労働貴族と言われて、「ネオリベが労働運動を攻撃している」と全く反省の色無いからどうしようもない。
投稿: 阿波 | 2016年12月28日 (水) 16時11分
すいません、怒りのあまりに、また言葉が汚くなってしまった。
http://news.yahoo.co.jp/feature/467
>どこぞの政治評論家よろしく「連合は誰の味方なのか」などと偉そうに問い詰めるのであれば・・・。
↑え、これどこが悪いの?
「大手追従の賃上げで、中小との労働環境の格差がつくのは望ましくない」ということを言っている。
「誰の味方か」とは、まさに、私が述べてきた「労働の二重基準=労働貴族=差別・特権」を否定して、「全ての労働者の一律の規制・保護を達成できるか」という極めて重い問いを投げかけている。
この記事のネトウヨ議員(詳しくは、2009年あたりの穴見議員の過激な言動を参照)やブログ主が言う「一律の最低限度のルールを定めたうえでの公平でフラットな競争」とは、私が今まで批判してきた、「企業・業界・労働者間の二重基準や、根拠なく特定人に適用される特権などによる、不公平な競争」の否定であります。
いわば、「汗水垂らして競争を強いられて薄給で頑張っている人の横で、ドーピングしたうえに決勝までシード権を与えられる貴族が旨いメシ食ってる」という状況なんですが、これ自民党や筆者は批判してましたっけ??
少なくとも、自民党は「二重基準」を強化することで利権と票を得るシステムを作ってきた(今もやってる)し、筆者も「二重基準」の批判を、「他人の足を引っ張り愚民を煽るネオリベ」扱いしてきたのではないですか??
投稿: 阿波 | 2016年12月28日 (水) 16時22分
穴見議員の政策を実行しちゃったら、
1.労働環境の規制強化コスト上昇で競争に耐えられないダメ中傷企業は潰れろ。
2.労働環境の規制強化コスト上昇に耐えられるように企業間競争を禁止して全ての財やサービスの物価統制を行い、営業の自由を廃止しろ。
という2つの結果を選択することになる。
私はリベラルかつ反社会主義なので1.を支持し2.に反対。
1.の「労働コストと競争のはざまで耐えられないダメ企業は潰れろ」の場合は、自民党が張り切って虐めている電通のような大企業ではなく、利権分配先の中小企業が潰れることになる。
それは今まで不当に労働コストから逃れてきたということの裏返しなわけで、私はもちろん歓迎なんです。
が、私が不快に感じているのは、支持層の中小企業に衝撃的な負担の上昇を強いることになるっていう自覚はあるの? その割にはなんか軽いんだよなぁ
投稿: 阿波 | 2016年12月28日 (水) 17時44分
阿波さんの論に関しては2点矛盾を感じるのですが、、、
1.「労働規制より競争規制」で、むしろ労働者の待遇を低くするほど儲ける環境を作ってきた
→なぜ「競争を規制」すると労働者の待遇が低くなるのかのロジック展開がわからない。
過当競争でのコスト低減策を労働者の待遇低下で賄う、手ならわかります。
2.「労働コストと競争のはざまで耐えられないダメ企業は潰れろ」は歓迎しているのに、「中小企業に衝撃的な負担の上昇を強いる」ことには憤りを感じている。
→ダメゾンビ企業を淘汰するには負担増で圧をかけていく方向性になりそうなのに、なぜ中小企業の負担増が許せないのか
阿波さんのおっしゃりたいことって「強い俺様が有利になるために、規制なんぞ取っ払ってヒャッハーな原始的競争社会にしろ」ってことなだけで、ならそういえばいいのに、なんとか耳障りよく誤魔化そうとするから上記のような矛盾が出てる感じですね。
投稿: Dursan | 2016年12月29日 (木) 18時06分
>「労働規制より競争規制」で、むしろ労働者の待遇を低くするほど儲ける環境を作ってきた
>→なぜ「競争を規制」すると労働者の待遇が低くなるのかのロジック展開がわからない。
低くなるというか、「高くなることを妨げる」と言ったほうが正確でしたね。
「労働者の待遇改善」を建前として「企業の競争規制」を行っても、規制で守られた企業側が労働者の待遇を改善する必要も義務もない、むしろ同業の転職先が無くなるので搾取しても抑止力が働かなくなるわけです。
>ダメゾンビ企業を淘汰するには負担増で圧をかけていく方向性になりそうなのに、なぜ中小企業の負担増が許せないのか
そんなこと書いてないじゃん。
「支持層の不利益になるという事実を理解したうえで言っているのか?」と疑問を持っているんです。下部構造と乖離していくら綺麗事言っても実行できないですから。(その点で橋下氏を評価しています)
>「強い俺様が有利になるために、規制なんぞ取っ払ってヒャッハーな原始的競争社会にしろ」ってことなだけで
私自身は一応、労働組合法上は労働者?だし中流階級なので凄い強い者だけが生きれる社会は反対ですね。だからと言って弱者が好き勝手に他者責任や大きな政府を主張するのも腹立ちますが。これは一言で「こうあるべき」と政府規模を言うのは難しいと思います。
投稿: 阿波 | 2016年12月29日 (木) 20時41分