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明日のメシを満足に食べられる連中

2016113000011_5 朝日新聞の「Globe」が、「トランプがきた」の特集。

http://globe.asahi.com/feature/2016113000011.html

「中流が溶けていく」など、アメリカ社会の分析はだいたいこの間論じられているところに沿っていますが、興味深いのはあえて橋下徹前大阪市長にインタビューしているところ。

http://globe.asahi.com/feature/article/2016113000007.html?page=3

「負けたのは知識層だ」というタイトルで、インタビュワの突っ込みに対してむしろそれを上回る突っ込みを入れているやりとりが、いろんなことを考えさせます。

国末 かつて政治家の条件だったポリティカル・コレクトネスを、尊重しない人が出てきている。なぜでしょう。

橋下 有権者が政治家のきれいごとにおかしいと思い始めてきたんですよ。口ばかりで本気で課題解決をしない政治に。米国で言えばワシントン、英国で言えばウェストミンスターの中だけで通用するプロトコル(儀礼)できれいごとを言っても、それは明日のメシを満足に食べられる連中だから。ポピュリズムという言葉で自分たちと異なる価値観の政治を批判するのは間違っています。それは自分の考え以外は間違いだと言っているだけ。民主政治の本質は大衆迎合です。重要なのは、社会の課題を解決する力。エリート・専制政治の方が大衆迎合よりもよほど危険なことは歴史が証明しています。今回の選挙の敗北者は、メディアを含めた知識層ですよ。

ポリティカルコレクトネスを大事に考えている(と少なくとも振る舞っている)インタビュー記者に対して「それは明日のメシを満足に食べられる連中だから」という一言は、かなり痛烈なものでしょう。

そのあとのこのやりとりはさらに刺激的です。

国末 失礼な言い方だが、トランプは成り上がり者。橋下さんも庶民の出身。ポピュリストたちはみんなそうです。だからこそエリートの嫌な面が見えるのでしょうか。

橋下 明日のメシに苦労せず、きれいごとのおしゃべりをして、お互いに立派だ、かっこいい、頭がいいということを見せ合っているのが、過度にポリティカル・コレクトネスを重視する現在の政治家・メディア・知識人の政治エスタブリッシュメントの状況じゃないですか。そんな連中に社会の課題が分かるはずがない。政治なんて、もっとドロドロしたものなんです。僕はポピュリズムというものは課題解決のための手段だと思ってます。メディアの仕事は、下品な発言の言葉尻を批判することではなくて、政治家のメッセージの核を見つけて分析し、有権者にしっかりと情報提供することですよ。

実を言えばこの「明日のメシ」という台詞は、橋下氏だからこそ切実さを感じられる言葉になるので、トランプ氏が言っても空疎な感じがするだろうと思いますが、彼らに投票した人々の気持ちというレベルに降りてみれば、やはり重要なファクターであることは間違いないと思います。

そして、そもそも産業革命以来の200年の歴史を振り返ってみれば、「明日のメシを満足に食べられる連中」の中だけで通用する「プロトコール」に則った「立派」で「かっこいい」「頭がいいということを見せ合っている」政治、貴族やブルジョワジーの(当時の支配イデオロギーからすれば)政治的に正しい政治に対して「ノー」を突きつけてきたのが、社会主義運動や労働運動であったということは、高校世界史の教科書レベルでもちゃんと書いてあるわけです。

彼ら、それまでの上流の政治家たちから見れば眉をひそめるような低俗な要求、喰わせろだの金寄こせだのというドロドロした野卑な政策を掲げる、まさに当時の支配感覚からすれば低劣なポピュリズムが、やがて数にものをいわせて先進国の政治に地歩を獲得していくというのが、とりわけこの100年間の政治の歴史だったのではないか、と振り返ってみると、その人々の流れの果てがトランプやルペンに対してポリティカルコレクトしか対抗軸がなくなってしまったかに見えるこの事態はなんと皮肉なんだろうか、と思わざるを得ません。

(追記)

http://b.hatena.ne.jp/Yoshitada/20161204#bookmark-311098240

Yoshitada                                つーても、トランプは別に「富裕層寄りの政策をしない」とは言ってないし、経済閣僚はウォール街のもろエスタブリッシュメントで固めてるわけで。割と早い段階で貧困層の願望は裏切られるかと思うが。

私もそう思いますよ。つか、これは別にトランプ本人が「明日のメシを満足に食べられる連中」かどころか、億万長者であるかどうかとは別の話で、「明日のメシを満足に食べられる連中」のポリティカルコレクトを憎む人々の感情をうまいこと煽り立てたということに過ぎないので。

アメリカに限らず、かつては貧しい人々の本音を代弁していたはずの社会民主主義ないし米流「リベラル」な勢力が、そうやって鳶に油揚をさらわれるような状況になっているということについて、なにがしでも反省するかどうかということだと思いますが。

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コメント

戦後まもなくのころは、「犯罪は貧困が原因である」と思われてたわけ。「みんな貧しさが悪いんや」だから「罪を憎んで人を憎まず」だったんだけど、いつのころからか普通に飯食える家庭や裕福な家庭に育った犯罪者も目立つようになってくる。そうして、我々は「貧乏だろうと犯罪は許さない」という立場に来たわけですよ。

反・ポリティカルコレクトネスの差別主義者や全体主義者が「貧乏だから」そういう挙に出ているとか、または彼らを免罪している側が、「貧乏人が罪を犯すのは同情できる」と考えているなら、非常に問題です。

「女を差別させろ」「宗教を差別させろ」「人種を差別させろ」「身分制度を復活させろ」「全体主義を復活させろ」というのは、「カネくれ」とは違います。

飢えた者がパンを盗むことと、飢えた者が強姦することは、違うでしょう? 後者を許しちゃ絶対ダメだと思うんですよ。

投稿: 阿波 | 2016年12月 4日 (日) 22時11分

富裕であることやエリートであることが「原罪」という考え方からは文化大革命みたいな虐殺しか生まれない。

金持ちであれ貧乏人であれ、ある属性をカテゴライズして『具体的な根拠や糺すべき点を示さずに」否定するのは、ただの悪口だろ。

投稿: 阿波 | 2016年12月 4日 (日) 22時15分

知識人(所得的には中流以上の世帯が多い)が綺麗事抜きで自分の利益のみで発言するなら、「大した労働もせず生産性が低く怠け者でバカで貧乏で納税者にタカるクソみたいな低所得層や失業者は迷惑掛ける前に死ね」というのが「経済的に正しい」ふるまいなんですけど、

「エリートのくせに綺麗事言うな」というノンエリート連中は甘んじて受け入れるんですか? どうせ文句言うのが目的だから発狂するに決まってる。

もう「貧乏だから」という理由でクソみたいな言動を免罪するのは止めましょうや。「悪いものは悪い」と叱らないのは共犯と同じ。

投稿: 阿波 | 2016年12月 4日 (日) 22時25分

橋下氏の指摘は、差別的な表現とか、そういう表面的な言葉尻をとらえて騒ぐのではなく、その発言、行動が出てきた背景や社会の課題にもっとフォーカスすべきだ、と言っている。

橋下氏の政治スタンスには特に共感することはないが、この記事コメントが橋下氏のいう状況をまさに示していて笑ってしまった。

社会を変えるのは衆愚の怒りというのはもっともな指摘で、お上品なコメントがまだまだ多数派な日本はそこまでまだ追い込まれていないのだろう。

投稿: 通りすがりの愚者 | 2016年12月 4日 (日) 23時12分

>ドロドロした野卑な政策を掲げる、まさに当時の支配感覚からすれば低劣なポピュリズムが、やがて・・・政治に地歩を獲得していくというのが、とりわけこの100年間の政治の歴史だったのではないか・・・

なるほど~。

カストロがなんだかんだで穏やかに死を迎えられたのも、高邁な理想のおかげというよりも、やはりその治世の多くの期間をソ連の支援によってキューバ民を「喰わせ」た、ということが大きかったようですものね(だからソ連崩壊後はまあ大変だったようですが)。

日本の中世史を見ても、武家の利益(喰わせる)を大事にしたからこそ源頼朝に多くの武家がついたともいえるし、武家の利益(喰わせる)をあんまり顧みなかったからこそ足利尊氏の離反をまねき後醍醐の新政はすぐ潰えた、と思えますものね。

だから近代の明治維新は特殊で、武士だった人たちが自らの武士階層(利益享受層)を無くしてしまった、というわけで、これはちょっとそうそうない歴史的に珍しいことと考えた方が良いのではないのかなぁ。
(ちなみにその明治維新を達成したエネルギーは尊王攘夷だが、実際に攘夷をすることはなかった。当たり前だけど。だから、阿波ちゃんについてその「リベラル」エネルギーすごいなぁ、と思いつつ、なんか尊王攘夷で明治維新をもう一度やる、みたく思えちゃって、ちょっと怖いんだよねぇ。脳内「リベラル」妄想だねって言っちゃうと可哀想かなって思う一方、もう「リベラルだから」という理由でクソみたいな言動を(阿波ちゃん自身で)免罪するのは止めましょうや、阿波ちゃん、と言いたくもなっちゃうんだよねぇ)

投稿: 原口 | 2016年12月 4日 (日) 23時51分

貧者が貧困から解放されるための要求が、「カネくれ」ではなく(まぁこれだって無制限に要求することが悪いのは当然だが)、「差別させろ・全体主義にさせろ」というなら叩いて当然じゃね??

先にも書いたが、「貧乏だからパンを盗む」は(100%ではないが)許せても、「貧乏だから強姦する」ような輩は抹殺されてもしょうがない。

「職が無いから移民反対」は分かりますが、自国民のなかで差別するような連中を「貧乏だから」という下らない理由で擁護する意味が分からない。擁護するほうが貧乏差別なんだよ。

復古主義も論外で、中世近世なら下層階級は人権無いですよ。アホが自分の人権を放棄するだけなら自由ですが、無辜の市民を巻き込むなら全力で、ポリコレ棒で「しばく」べきでしょう。


>ドロドロした野卑な政策を掲げる、まさに当時の支配感覚からすれば

フランス革命・アメリカ独立・ロシア革命が、その初期段階から自らの正統性・正当性・倫理性を確立させていたことは、同時代の膨大な文学・宣伝文・芸術作品から明らかですが、反ポリコレのどこに革新的で高尚で正統・正当な思想があるのでしょうか。
フランス革命やロシア革命やキューバ革命やイランイスラム革命のような熱い青年の芸術性はあるのでしょうか。

「女死ね」「黒人死ね」が革命か。こんなん認めてたまるか。こんな卑猥で下劣で愚劣な差別思想がゲバラやカストロと同じであってたまるか。

投稿: 阿波 | 2016年12月 5日 (月) 00時47分

「大した労働もせず生産性が低く怠け者でバカで貧乏で納税者にタカるクソみたいな低所得層や失業者は迷惑掛ける前に死ね」
リベラル(マスコミや知識人)がそう言ってプアホワイトを殴ってきたからこそのトランプの勝利だったわけだし、オーストリアの薄氷を踏む勝利だってことでしょ?
「アフリカの子どもたちは明日にも飢えて死にそうなんやで」といわれたとて「知るか、わしもギリギリやねん」っていう人達には届くわけがない。それを「バーカww」って殴ってきたのがリベサヨなわけで。
とりあえず、オーストリアはしのぎましたがフランスがどうなるか。

投稿: Dursan | 2016年12月 5日 (月) 07時13分

>橋下氏の指摘は、差別的な表現とか、そういう表面的な言葉尻をとらえて騒ぐのではなく、その発言、行動が出てきた背景や社会の課題にもっとフォーカスすべきだ、と言っている。

政治家としてはそうあるべきだと思います。
今年初めに”日本、死ね!”という匿名の記事が話題になりました。民進党議員が国会でこの記事を取り上げたとき、政府や与党には匿名である事や”死ね”という表現を問題視する意見もありましたが、政府はその背景である待機児童問題に対して対応を強化しました。
私は安倍内閣は支持しませんが、このように問題があれば機敏に対応する(ようにみせる)点は評価せざるをえません。

投稿: Alberich | 2016年12月 5日 (月) 09時37分

>Dursanさん
>リベラル(マスコミや知識人)がそう言ってプアホワイトを殴ってきた

オバマケアが無ければ病院にも行けひんような奴がよう言うわ。ポアホワイトがバカすぎるので蔑視される正当な理由があると言わざるを得ないね。リベラル(アメリカでは実質的に社民主義)が無ければ人間扱いされない無能だと理解しろ。やっぱりトランピーって棒で殴る以外に真人間にできないじゃん...

あっ「人間扱いされない」は訂正。「差別することで(経済的にはともかく)政治的な人間扱いを取り戻す」ことを貧乏白人が求めたのがあの卑猥なトランピー現象でした。まったく擁護できないので「貧乏人が悪いことしても可哀想だから許そう」ではなく、オーストリアみたいに極右を叩くべき。

フランスの「戦後の正統保守右翼」がマトモに見えるほど現状はヤバイ。とにかく「復古主義+差別主義+大きな政府」は最悪。潰さないといけない

投稿: 阿波 | 2016年12月 5日 (月) 12時07分

さすが阿波ちゃん、人権とかいきなり言い出してちょーウケる~。その理解できてなさっぷり面白~い。
>ポリティカルコレクトしか対抗軸がなくなってしまったかに見えるこの事態はなんと皮肉なんだろうか
といった記事内容が理解できてない御様子がちょっともうイタ~い。

ついでに老婆心で教えとくと、「フランス革命・アメリカ独立・ロシア革命が、その初期段階から自らの正統性・正当性・倫理性を確立させていたことは、同時代の膨大な文学・宣伝文・芸術作品から明らかですが」って、文学・宣伝文・芸術作品の具体名をひとつすらあげず「明らか」なんて言い方するのって、歴史無知が歴史通を気取る時にやりたがる常套手段(こけおどし)ですよ~。
理解できたらこれからお気をつけあそばせ~。

ちなみに差別を心底憎むその心根は実にあっぱれ、その調子で、生まれた国による差別(生まれた国によって人生の選択肢が異なる状態)や、遺伝による差別(遺伝が異なることによる選択肢が異なる状態)も、その心根でもってもちろん解消してくださるんですよね?

投稿: 原口 | 2016年12月 5日 (月) 15時34分

トランプが成り上がりは違うのでは? 
あと阿波って人はポリティカルコレクトネス
推してるのに自分で守れて無くて草

投稿: アカン | 2016年12月 5日 (月) 17時50分

>原口さん

当然ながら能力の差を差別だと認定することは認められていません。
入試やスポーツ大会での格差も差別だと言うのでしょうか。

>生まれた国によって人生の選択肢が異なる状態
国家主権があるのだから、他国民と自国民を同じルールで処遇することは不可能。
他国を併合して同じ国籍にする場合はもちろん差別禁止です。でも勝手に併合するのは国際法違反なのでダメです。

投稿: 阿波 | 2016年12月 5日 (月) 18時24分

あ、なんだー
そんな程度の徹底さだったんだー

じゃあ、いい遺伝子といい遺伝子を掛け合わせ続けることによる結果的な能力差は全然OKなんだー
いやー庶民遺伝子しか持ち合わせない俺らにとっちゃ、選べず・選んでもらえず、涙が出るぜ~

>国家主権があるのだから、他国民と自国民を同じルールで処遇することは不可能。
うわー。貧しい国、無政府状態の国、その他苦境の国に生まれちまったら、もう救われないんだー
そっか、阿波ちゃんの非差別主義ってそんな程度だったんだー

投稿: 原口 | 2016年12月 5日 (月) 23時53分

>オバマケアが無ければ病院にも行けひんような奴がよう言うわ。ポアホワイトがバカすぎるので蔑視される正当な理由があると言わざるを得ないね。リベラル(アメリカでは実質的に社民主義)が無ければ人間扱いされない無能だと理解しろ。
   ↑
何も知らないくせに非人間的で知性の欠片も無い者が、他人をバカにする。吐き気がします・・。

アメリカはなぜこうなったのか。それは、一部の公的保険(高齢者用メディケアと貧困者用メディケイド)を除き、医療に資本主義を導入し、強欲資本主義のなすがままに開放したからである。
医療に関する利権は、「医産政複合体」(医療で金儲けを行う医療機関、医薬・医療機器産業、それらから献金を受け取る政治家)ががっちり握り、死守している。オバマの医療改革も骨抜きにされ、新たな金儲けの場になることは目に見えている。

アメリカは保険の種類にもよりますが、民間保険は非常に高価です。
アメリカに暮らしていると、日本の駐在など富裕層以外は、医者にかかるのも後々の治療費や検査代などの費用を考えて躊躇しなければならず、その挙句に手遅れとなるために、そのような中流以下のアメリカ人が亡くなる率が高く、平均寿命も短いのです。

-抜粋-
アメリカには公的な医療保険制度として、メディケア(65歳以上の高齢者・障害者向け医療保険)とメディケイド(低所得者・子供向け医療保険)、また、連邦職員と軍人・退役軍人用の公的医療保険制度があり、合わせておよそ9700万人(国民の約30%)が受益者となっています。一方、それ以外の国民は、雇用者を通じてもしくは個人で民間の医療保険に加入しなければなりません。民間の医療保険は保険料が高額なこともあり、およそ4600万人、国民のおよそ6人に一人が無保険の状態です。医療費は極めて高額で、保険のない人は医者にかかれないのが現実です。

医療保険加入状況 
(U.S. Census Bureau. 2008 *民間医療保険と公的医療保険の両方に加入している人が一部重複しています)
68.2%・・・民間医療保険加入(雇用者を通じた団体契約59.3%+個人契約8.9%)
27.8%・・・公的医療保険加入(メディケア、メディケイド、連邦職員、軍人・退役軍人用保険)
15.3%・・・無保険
その結果、無保険者が救急医療に殺到したり(救急医療では誰に対しても診療拒否ができないことが法で定めらている)、その無保険者の医療コストをカバーするために正規加入者の保険料が吊り上げられたり、また既往症のある人が保険への加入を拒否されたり、重病になった患者の家族が借金で家を手放さなければならない、などということが実際に起きています。(中略)
アメリカの医療費は、高齢者人口の増加と共に年々増加し続け、2009年にかかった総医療費は2.5兆ドル(国民一人あたり8,047ドル)、GDPの17.3%を占めました。WHOによると、「一人当たりの医療費は国連加盟国191ヶ国中最高」でありながら、国民の総合的健康状態は72位にランクされています。

-抜粋-
虫歯の治療は2本で13万円
 医療費はべらぼうに高い。たとえば盲腸手術の場合、日本では四~五日の入院で、検査や投薬を手厚くした場合でも医療費自己負担が一〇万円をこえることはない。アメリカでは入院日数はたった一日だけで、医療費請求はニューヨークで二四三万円、ロサンゼルスで一九四万円にのぼる。保険にはいっていなければとても負担できない。保険にはいっていない人は盲腸の手術もできない。また、虫歯の治療費は二本で一三万円、出産費用一四〇万円ともいわれている。
 アメリカで子宮筋腫になれば、日帰り手術で医療費は一〇〇万円以上にもなる。全身麻酔をかけるので、ほんらいなら一日は入院して安静にしなければならないのだが、二日目からは保険がおりない。そのため患者は、はってでも退院しなければならないのである。
 保険がおりても、自己負担金はとられる。保険にはいってない人は全額負担である。アメリカにはなんの保険にもはいっていない人が四七〇〇万人いる。そのため、ふつうなら死ぬはずもない病気で毎年一万八〇〇〇人が死んでいる。
 外務省の在外公館医務官が「医療費や医療の質そのものから見れば、もし病状が緊急性を要しないなど事情がゆるせば、航空運賃を負担したとしても本邦(日本)に帰国して診療をうけることをおすすめします」というほどである。

-抜粋-
実際、アメリカでは一人の医師があちこちの病院で医療サービスを提供することはよくあることで、B外科医がA病院で執刀するバイパス手術と、同じB外科医がX病院で執刀するバイパス手術とでは総合的な値段が違うことになるのです。ちょっと気が狂いそうですね。

もうひとつ、多くの専門家が指摘するのは、真ん中の「病院費用」というところに、ありとあらゆる費用がかなり膨張された値段で含められているという事実です。医師の行った医療措置に対する費用や、麻酔の費用などは、比較的限られた範囲の認識しやすいサービスであるのに比べ、「病院費用」には使った注射針やガーゼの費用から、施設使用料、食事費用など広い範囲のサービスを含みます。結果的にさまざまな項目があり、場合によってはしてもいない措置が含まれていたり、ダブルでカウントされている費用があったり、現実離れした値段がついていたりということが起こっているそうです。つまり、「病院費用」はとくに念入りに吟味すべきところということ。

なぜこんなことが許されるのか
病院の考え方は、みんなから100%料金を回収できるとは限らないので、最終的に赤が出ないように「思いつき」価格(リストプライスと呼ばれる)は高く設定しておくという理論らしいです。つまり、同じサービスを受けても、ちょっとしか払わない人から、たくさん払う人までまちまちであり、たくさん払う人は、払わない人の分まで援助するということですね。りんごがひとつ$1,000もすれば「高すぎるから買わない」と考える人でも、病気になってしまえば「医療は必要なもの。払うしかない」と思いがちです。ある医療経済学者の言葉を借りれば、「思いつきで値段を決めても消費者は払うから、思いつき価格が許されている」とのことです。

「医療の”商品化”で国民を破産させたアメリカ。その波は日本にも押し寄せています」堤未果さんインタビューでも述べられています。
アメリカでは、保険会社や製薬会社などの「医療産業複合体」(医産複合体)と、そこに投資するウォール街の人たちが絶大な力を持っています。医産複合体は軍需産業よりも大きな力で、完全に政治を押さえつけています。
「回転ドア」と言うのですが、医産複合体の業界関係者が、政府の職員やロビイスト(圧力団体の利益を政治に反映するために、政党・議員・官僚などに働きかける人々)として政治の中枢に出入りし、業界に都合のいい政策を法制化します。

投稿: 富裕層の富裕層による富裕層のための政治で腐る国家 | 2016年12月 6日 (火) 08時15分

アメリカでは格差が政策によって人為的に作られ、富裕既得権益層たちがそれを無視しながら富裕政治を続けてきました。

ニクソンから富裕層政策は始まり金融セクターの規制緩和開始、税制の累進性縮小を始めたロナルド・レーガン政権の誕生。

労働組合の弱体化、貿易自由化はグローバル化につながり、労働者は新しい技術とアウトソーシングに置き換えられました。最富裕層(上位0.1%)の人々の所得が著しく増え、中位層が空洞化。

アメリカの経済100年、少なくともここ30年をリサーチしたグラフを見ると一発で理解できるでしょう。
今日のアメリカの民主主義を破壊した張本人はレーガン・ブッシュであり、現在のファシズムアメリカを形作ったのは他でもないレーガン政権です。

現在、レーガン(富裕層による新自由主義)政治は共和党・民主党両党に存在する既得権益層政治家によって引き継がれています。

米国の富裕層独裁支配格差資本社会造りは、
「富裕層への減税、労働組合潰し、公営事業の民営化、社会保障切り捨て、福祉公共事業削減、軍需産業強化(戦争)、企業ロビーと政府の癒着、金融緩和、企業規制緩和」政策によって確立されました。

結果、州政府と大企業や団体による癒着(特に保険・医療・不動産業界による政治家への大献金、詐欺・ぼったくり価格による国民負担の増大)と土地高騰による資産家のぼろ儲け、企業による寡黙化(モノポリー化)、労働組合潰しによる賃金カットや就職難やリストラ、公共福祉予算を削り道路や橋や公共施設などの老朽化、企業規制緩和による環境破壊、富裕層への減税策と金融緩和による格差(大企業や資本家・資産家だけが肥える)、州予算で水質や人件費を削り毒水を提供、国民の税金を軍需産業や金融業界へ勝手に流す。

起業家、企業家、富裕層は政治家を買収して共謀し、メディアは企業プロパガンダ機関として国民を騙す。

貧しい州のゴーストタウン化、国民の健康も生活水準も益々苦しくなり、現在のプルトクラシー(超富裕層による政治)は、利己的且つ強欲なアメリカの大金持ちたちによって確立された、立派な策略(政策)です。

最近までは超富裕層トップ20%による富の搾取の汚さが言及されていましたが、最近は1%があまりに酷い。
超富裕層のための(プルトクラシー)政治を実現して政府の力を小さくしたい新自由主義者、そして金と権力で独裁政権を持ちたい企業家オリガーキーたちは民主・共和どちらにも働きかけることが出来ます。
大統領を支持しなくとも地方議員たちを手籠めにして(賄賂で)動かすことが出来る資金力を持っているのです。

それら利己的で非人道的な(彼らは税金が返ってくる自慰的な献金活動は行っている)超富裕層(資産家と起業家のオリガーキーやリバタリアン)たちによって、二大政党はそれほどまでに支配され腐りきっています。

国民皆保険制度案が踏み倒され続けているのも、リバタリアンたち、病院・医師会(AMA)、医療保険組合による二大政党への大献金と賄賂が政治家に流れ込みながら、ぼったくり価格で国民の生活を困窮させて儲けている原因だと思います。

投稿: 全てを壊す富裕層の富裕層による富裕層のための政治 | 2016年12月 6日 (火) 08時23分

↑やっぱり、アンチ自由主義の輩って米でも欧でも知能程度が相当低い

こういうのと「熟議」する必要を感じない。
残念ながら低知能層に必要なのは説得ではなくプロパガンダであると認めざるを得ないな。

投稿: 阿波 | 2016年12月 6日 (火) 12時33分

>残念ながら低知能層に必要なのは説得ではなくプロパガンダであると認めざるを得ないな。

いや~ほんとほんと。
阿波ちゃんに必要なのは説得ではないのは認めざるを得ないな。

投稿: 原口 | 2016年12月 6日 (火) 14時27分

なお、「阿波ちゃんに必要なのは説得ではなくプロパガンダであると認めざるを得ないな。」とはしなかったのは、「プロパガンダ(宣伝)」程度のものでは効くと思えなかったからです。

なにせ日本的アニミズム(なるもの)で心の汚れを流していらっしゃるほどの、世にも稀(まれ)なるお方ですからね。(次の記事「賃上げを止めるな!@『月刊連合』12月号」のコメント欄参照)

ちなみに(原始時代はともかく)今の時代に日本的(?)アニミズムを感じるって、それはオカルトだけどね。

投稿: 原口 | 2016年12月 6日 (火) 23時49分

みなさんへ

盛り上がり中申し訳ありませんが、問題はどの国にしろ、真っ当で現実的な左翼がいないことであり、それが有権者、特に低所得者や労働者を「右傾化」させている、ということでは?
Hamachanブログの主張も、僭越ながら察するにそうだと思います。
何故でしょうか?
まずは、真っ当な主張が目立たないから。最近松尾匡氏が頑張ってますが、まだまだ知名度が…。次に、本来そうなるべき社民党がダメダメだから(笑)。
ホント「(笑)」ですよね。
でも、この問題はもっと真剣に考えて良いと思います。
結局、政党は支持団体に弱く、また弱体化すればするほど政党のアイデンティティーに意固地に拘、そして、一番重要なのは、社会的な貧困の問題性を理解していない。というのは、やはり勝ち組やエリートや安全圏な人たちなんですよ。実際中小企業の下っぱ歴30年(10年後の自分?)の経歴を持つ国会議員なんていないでしょ?だから、アンチエリートが流行るのは良く分かりますよ。
解決方法は、真っ当で現実的な左翼を大衆運動で作り、政党を変えていくこと。反原発のように。いくらか環境はその方向に向いているんじゃないかな?
最後に、貧困➡右傾化➡貧困…、という悪循環をどうするかというと、やはり、好景気➡左傾化➡好景気➡左傾化であり、貧困➡革命という断絶ではないわけで(究極のPC は革命?)、どう好循環を作るかは、当事者(市民)の連携(連帯)と運動➡政党への働きかけだと思います。PCでもなく、諦めでもなく、信念の盲信でもなく。運動(行動)することだと思います。
今こそ Yes We Can ‼でしょ!半分マジです(笑)。

投稿: 高橋良平 | 2016年12月10日 (土) 20時12分

そもそも、明白な階級制度があったり、大地主や資本家が支配していた時代と違って、中流階級~貧困層の大多数が満足するような「まっとうな左翼」が存在しなくなってる。

大きな政府→財政ひっ迫→増税という多くの先進国の政策では、中流階級も貧困層も両方が得をするということが難しい。

先進国はあらゆる時代と比べて十分に社民主義的であり、これ以上のバラマキは「極貧層以外全員が損をする」こともあり得る。

勤労を重視する中道の資本主義・自由主義勢力こそ必要。もちろんマトモな労働者勢力もこれに加わるべき。

過度な結果平等主義思想は悪。極右と極左という両方の悪と闘わないといけない。

働かずに文句だけ言う奴は敵だ。ぶっ潰す

投稿: 阿波 | 2016年12月11日 (日) 00時17分

日本的アニミズムで心の汚れを流すオカルトマン・阿波様!

>勤労を重視する中道の資本主義・自由主義勢力こそ必要。
>過度な結果平等主義思想は悪。

すでに聞き飽きちゃったんだけど、だからそういう主張については本文記事で
>・・・ポリティカルコレクトしか対抗軸がなくなってしまったかに見えるこの事態はなんと皮肉なんだろうか、と思わざるを得ません。
って、もう言ってるんですけれど。

言いたいことを言う前に、人の言ってることが理解できるようになることが先だろね(自分は低知能層かもと思ったうえで)。

それでもやっぱり俺は頭いいし、正しいことしか言ってない、というなら、その抽象的な主張内容の具体的かつ現実的な実施方法を教えておくれ。頭チョーいいんだからもちろんあるんですよね?まさか「プロパガンダだ!」などとは言うまいね?それとも、阿波様がそのリベラル精神と日本的アニミズム精神でもって大衆を教化する教祖となる!、とでも?

投稿: 原口 | 2016年12月11日 (日) 22時23分

>・・・ポリティカルコレクトしか対抗軸がなくなってしまったかに見える

そもそも、労働運動や社会民主主義的なものが、「労働者や弱者を利することが正義」という「倫理性」に依拠しているんですよ。

だからこそ、「労働運動や労働組合は、他の凡百の利益集団とは違う」と、彼らは主張しているわけですね。

一方で、実績主義・能力主義・頑張った者が報われる等々という自由主義にも「倫理性」はありますから、結局は正しさと正しさのぶつかり合いでしかない。

これが、対立の思想として「奴隷制度や身分差別制度を復古させよう」と大ぴらに言っているなら、PCを守る戦いになりますけどね。

投稿: 阿波 | 2016年12月12日 (月) 09時26分

>結局は正しさと正しさのぶつかり合いでしかない。

はあ~、そうですか。じゃあもう面倒くさいから、阿波様の云うその「倫理性」とかいう抽象論のぶつかり合いに勝利できるよう、はた迷惑にならない範囲でせいぜいがんばってくださいな。
勝ったあかつきには教祖になれますように。

投稿: 原口 | 2016年12月12日 (月) 15時46分

阿波さんへ

ちょっと違うかな?
社会民主主義にしろ、社会主義にしろ共産主義にしろ、左翼思想は人間が幸せになるための道具だと私は割り切っています。そして、幸せの定義は、仕事、家庭、あとは国の平和や医療や福祉(並列出来るかは微妙ですが)。非常にベタですが、そんなもんかなと。自由主義は幸せの定義を極端に言えば保留して不問に付しているように思います。左翼が厚かましく感じるのは、ベタな幸福のイメージをガンガン押し付けるからではないかと思いますがいかがでしょうか?また左翼の痛いところは、手段のはずの思想なり運動が目的に転化してしまいがちなところでしょうか?
いずれにせよ、倫理なる高尚なものではなくて、具体的な幸福のために、少なくとも本来の左翼はあると考えます。

投稿: 高橋良平 | 2016年12月12日 (月) 22時35分

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