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同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告

本日、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会の中間報告が公表されたようです。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000146064.pdf

これに「参考資料」と称するものが付いているのですが、これが検討会委員の皆さんの意見で、それこそ最高裁判決にくっついている意見のような感じですが、読んでいくとそもそも論的なレベルで意見がかなり分かれていることがわかります。

中間報告に書いたのでと言って自分の独自の「意見」を書いていないのは水町さんだけで、逆に言うと、他の委員の皆さんは水町理論に余り納得していないような感じですね。

現段階で同一労働同一賃金の理論的問題には余り突っ込むことはしないでおきますが、労使関係論的観点から見て一番同感できるのは、やはり神吉知郁子さんのこの言葉でした。

・・・・第二に,労使の自主的な点検・改善を促す方法がある。非正規労働者の待遇の決定にあたり,労使協議や交渉をおこない,非正規労働者の利益も公正に反映したものであるときは,パート法8条や労働契約法20条の「その他の事情」において,たとえば労働契約法10条のように,不合理と認められない方向での考慮要素として明記することも考えられる。このような手段は,非正規の利益を考慮した労使交渉による労働条件設定であれば不合理との評価を受けないとの予測可能性を高め,法的安定性をもたらす。同時に,特に使用者に対して,不合理な格差とならない労働条件設定に向けた真摯な交渉を行うインセンティブを与えることにもつながっていく。

集団的労使関係という契機を抜きにした過度に法曹的、法学者的な議論だけでこの問題が進められることにならないことを望みたいと思います。

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コメント

労働者の権利って人権なのだから、各企業や業界ごとの労使関係が過度に影響を与えるべきではないと思う。

連帯と口では言っていても、各人の権利に差がありすぎると「お前ら不幸になれ」と思えてくるのも仕方が無い。
労働者間の実質的な権利の差(賃金の差ではなく)がここまで開いている現状では、一部の企業の正社員の権利を擁護するのは難しい。

能力・資格・実績・経験による待遇の差はあっていいが、不合理な差はあるべきではない。

不合理な差を禁止する点について、法曹・法学者が主導していくべきだろう。

逆に、不合理でない差なら、各企業や各労働者ごとにどんどん格差が開いていっても、これは能力や実績だから問題ない。

投稿: 阿波 | 2016年12月17日 (土) 13時35分

もうはっきりと、何で厳しい競争に晒されている業界の労働者が、既得権の銀行員や電力従業員やJAL労働者と連帯せなならんのかと問うべきだ。

連帯ではなく分断を。

利害関係を直視して、足を引っ張り、対立・分断・闘争すべきだ。

事実を隠蔽して口先だけの綺麗事で「連帯」することは悪である。

連合は医師会や経団連と同じ。もうそれでいいですから、間違っても「弱い労働者のため」の「ナショナルセンター」だの名乗らないでもらいたい。

既得権利害団体でいいよ。ガチガチの規制で守られ、倒産しそうになっても血税で手厚く保護される労働貴族団体として頑張れ。な。

だからこっち見んなってw

赤木さんじゃないが、「来年こそ、労働者を分断する年に」しないといかんわな。

投稿: 阿波 | 2016年12月17日 (土) 20時21分

中間報告を読み、投稿を拝見しました。集団的労使関係を踏まえて、労使の自主的な取り組みができるようにしないと実効性があがらないというのはおっしゃる通りと思うのです。しかし、これを担う経団連も連合も(またより少数派な全労連もおそらく)、「経験や勤続年数を考慮した同一労働同一賃金」という立場であることを、どう考えればよいでしょうか。連合の意見を尊重すれば、要するに職能給の右肩上がりを守れということなので、均等待遇には向かわないでしょう。均衡待遇を促す仕組みはそこそこできるかもしれません。しかし、ボーナスを出すとか、勤続年数は更新時でなく最初の採用時から考慮するとかいうとりくみだけでOKとなり、法的規制の対象外になるとしたら、事態はさほど改善しないように思えるのです。濱口先生のご本が示唆されるように、漸進的にでもジョブ型雇用が広がるように促す仕組みがないとうまくいかないように思うのですが、そうすると、多くの企業で集団的労使関係の双方がそれをやりたがりません。それでは改善しないといって、その外側から学者や官僚の主導で法的規制をすると、それはそれで機能しないだろうというのももっともです。ここで私は袋小路にはまってしまうのですが。

投稿: 川端望 | 2016年12月20日 (火) 18時53分

労使関係の基本は、労使のいずれも納得しない中身を強制することはできない、ということです。それを前提にできることは何かと考えたら、これまで賃金の決め方の土俵には入れていなかった非正規労働者を集団としてその中に入れさせるという手続き規制しかないのではないかと思います。

法制度としては、やや厳しめの一般的な実体規制の例外条項として非正規労働者の代表をきちんと含めたかたちでの賃金制度設計を経たものについては合理性を推定するというやり方が、労使双方を(いやいやでも)非正規労働者に対しても説明の付くあり方に向けて動かしていく誘因になると思います。

ただ、今日の働き方改革会議のガイドラインを見ても、やたら細かな実体規制が羅列されるばかりで、そういう手続き規制への方向性が余り感じられません。

投稿: hamachan | 2016年12月20日 (火) 20時38分

川端さんのご指摘はご尤もですね、賛同します。人口動態や女性活躍やAIなど今後の社会変化を踏まえた日本社会の方向性(あるべき姿)を見通した場合、中長期的にはいわゆる「ジョブ型」の働き方が望ましいこと自体はほぼ自明ではありながら、とはいえ正にこの今、日本企業で働く多くの社員(特に中高年)の意識やビヘイビアは、悲しいほどその地平からあまりにもかけ離れてます。それはきっと、いまだ多くの国民が世界ではありふれた「ジョブ型」という世界標準のワークスタイル、その厳しくも明快な働き方をたんに自ら経験した事がない(だけだ)からと思うのです。

世界標準のジョブ型〜自ら手を上げないかぎり人事異動がない世界、あるいは望まない配転や転勤が一切ない世界ーなぜならそれらはジョブすなわち個別労働契約の変更ゆえ一方的な変更はありえないから。反面、自ら主体的かつ能動的にアピールしていかない限り毎年の昇給はあっても(上位ポストへの昇進がない限り)大幅な待遇改善のないフラットな世界…。

そのようないたってシンプルとはいえ現行の働き方とはかけ離れたジョブ型雇用社会に一足飛びに向かうのは、大多数の国民にとっては大政奉還さながらの空恐ろしい劇的事件のはずゆえ、少数なら可能ですが国民全体では一気には飛べません。ですから、よく時間をかけて利害の異なる様々なパーティや世代の声を聞き周りを注意深く見渡しながら、大多数のワーカー(使用者、労働者とも)が一歩一歩前進していけるよう漸進的ピースミールに改革を進めていくしかないでしょう。

ゆえに本日政府から提示された同一労働同一賃金のガイドライン(昇給や賞与や手当やベネフィットなど正規と非正規の不合理な待遇差を認めない)は我々日本人にとっては小さいながらも「大きな一歩」ですよ。少し前であれば想像もできないくらいの「快挙」とも呼べる事態だと思えるのです。やや大袈裟に言えば、向かうべきわが国の方向性〜身分社会から契約社会(デモクラシー)への転換点となりうる施策だと考えます。

直前のHamachan先生の論点とは少し異なりますが…。

投稿: 海上周也 | 2016年12月20日 (火) 21時46分

もうコメントはしないと申し上げながらもどうしても一言だけお許しください。

濱口さんの冒頭コメントより続く「・・・これまで賃金決め方の土俵には入れていなかった非正規労働者を集団としてその中に入れさせるという手続きの規制しかなのではないかと思います」。
まったくもってその通りであると思いますし、そこには政治的に仕込まれた税制(控除)問題や労働にたいする選択的主権問題と日本独特の企業・労組のあり方にも及びますし、そして老若男女すべての人生のマクロ課題として社会に安心を提供する社会保障制度へのイデオローグとその冷静なる相互修復等が、これこそグローバルには全面的に干渉されない内政課題として我々が主体として将来世代へ責任をもってとりくむべき喫緊の課題でありますし、しかもその巨大なる課題克服の中のたかがの第一歩でしかない気が遠くなるような、しかしいやであろうとも時間軸として今の当事者責務であるかと思われます。上記の意味から濱口さんのご意見に賛同いたしますし、ご当人もこれが第一歩でしかないとのある無力感とともに意欲も掻き立てなければとの熱意を想像いたします。
間違っておりましたらどうぞ。ただし濱口さんのみからのインタラクションに限らさせていただきます。
濱口さん、禁を解いてのご無礼、お邪魔いたしました。

投稿: kohchan | 2016年12月21日 (水) 07時39分

ガイドラインを読んでいたのですが。

> 賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。

実態として、「職務内容・配置の変更範囲」は、正規雇用が無限定、非正規雇用は限定、というのが多いはずで、大企業の場合、ほぼ現状の追認になるのかな、という気がしてきました。まあ、ドラスティックに変えるというのも現実味がないわけですけど。

例えば、国内の非正規雇用の従業員を海外に異動する、というのはまずないでしょう。逆に正規雇用の場合、海外勤務は出世コースの通過地点になっていることが多いですね。また、正規雇用は本社人事部で採用、非正規雇用は事業部で採用、というパターンになっていることが多く、非正規雇用の従業員を事業部間で異動させることもないと思います。

雇用の見直し等の対応をしなければならなくなるのは、「職務内容・配置の変更範囲」がもとからない中小企業と、いわゆる「限定正社員」ですかね。大企業の場合も、上記のような「暗黙の了解」を明文化するという対応はしなければならないのかもしれませんが。

この件の報道に接した際、派遣の扱いのところで実現可能性を疑問に思ったのですが、ガイドラインを読むと該当するケースはまず無さそうなのですよね。

> 派遣元事業者は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。

投稿: IG | 2017年1月 4日 (水) 05時10分

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