『POSSE』Vol.33
その『POSSE』Vol.33も届きました。既に紹介しているように、特集は「働き方改革「技術ユートピアの幻想」」で、冒頭からAIの話です。
http://www.npoposse.jp/magazine/no33.html
このうち面白いのは「AIで、日本の労働、社会はどう変わるのか」という覆面座談会。なぜ覆面にしているのかよくわかりませんが、AIの導入によってこれまでの日本型雇用がどういう方向に向かうかについても相対立する考え方が示されたりしています。
POSSEらしい視角から論じているのは今野さんの「AIと労働についての検討」で、たとえば外食・小売については、
・・・ここにAIが導入されたらどうなるだろうか。まず、レジなど単純化された業務の多くをロボットが担うことになるだろう。・・・
一方で、この解放は「完全」なものにはなりえない。人間にしかできない顧客対応や、突発的な事態への対応が残るからだ。例えば、顧客へのクレームに対応するための人員は必ず必要になる。・・・
このため、この「残った労働」はまた、最小限の人員でこなすことが求められるだろう。ある地域には数人の社員だけが配置され、クレーム対応や不具合に奔走する。まったく家にも帰れない。このような事態が容易に想像される。「労働は減るが、長時間労働は減らない」のである。・・・
まして、雇用量そのものが機械によって減少する中では、「残った苛酷な仕事」に人々が殺到し、ますますブラック企業の人材「使い潰し」経営に拍車をかける可能性もある。・・・
というような灰色の未来図を描いて見せています。
まあ正直、誰もが手探りで議論しているような分野であるだけに、全体として焦点が絞り切れていない感もありますが、POSSEとしてあえてこのテーマに挑戦した心意気はみんなで褒めてあげるべきでしょう。
ちなみに今号のトリビア大賞は、「労働と思想33 アリストテレス ―幸福・労働・エンハンスメント 立花幸司(熊本大学准教授)」の冒頭での、ヒロポン(覚醒剤)の語源でした。「疲労をポンと取る」からヒロポンというのは俗説であって、英語名「Philopon」の元はギリシャ語の「フィロポノス(philoponos)」(労苦を愛する、労苦を厭わない、勤勉な)なんだそうです。
へぇへぇへぇ。
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