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2016年12月27日 (火)

hamachanブログ2016年ランキング発表

毎年恒例といえば、本ブログのこの1年間のエントリのアクセスランキングの季節もやってきました。

昨年2015年のランキングはこちらですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/hamachan2015-26.html

昨年の堂々1位は「勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は」だったのですが、さて今年はというと、

1位:勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は(毎年恒例) 12,499件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-b95d.html

いやいやいや、なんぼなんでもこれはないでしょ。昨年のエントリをほぼそのままコピペしただけの超手抜きエントリが、しかもアップしたのは12月25日の日曜日、つまり一昨日ですよ。それが1位とはなんと解釈すべきか・・・・。

ま、考えてみれば昨年トップだった昨年のエントリだって、過去数年間本ブログにちょろちょろと書いてきた生産性関係のことをまとめただけなんですね。

世のまとめサイトなるものが集中砲火を浴びている昨今、いくら自分で書いたもののまとめエントリといっても、そんなのばかりがトップを2年連続で取るというのはどういうことでしょう。

よほど今年の本ブログのエントリはろくでもないのばっかりだったってこと?

ま、なんにしても、一昨日読んだばかりのものを改めて全文読む気はあんまり起こらないでしょうけど、

・・・製造業のような物的生産性概念がそもそもあり得ない以上、サービス業も含めた生産性概念は価値生産性、つまりいくらでそのサービスが売れたかによって決まるので、日本のサービス業の生産性が低いというのは、つまりサービスそれ自体である労務の値段が低いということであって、製造業的に頑張れば頑張るほど、生産性は下がる一方です。

では気を取り直して2位は?

2位:未だにこんな議論がまかり通っているのか・・・ 12,043件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-518a.html

これは例の愛知県のブラック社労士の騒ぎのときに、「ブラック社労士の出現は「正社員解雇の厳しさ」が原因」というようなことを言い出す手合いがいたので、解雇規制の問題は問題として、少なくとも例のブラック社労士を正当化する議論に使うのはまったく間違いだよ、と言うことを論証するために書きました。ちょっと長めに引用しますが、原エントリは解雇といじめのあっせん事例がずらずらと並ぶ長大エントリです。

・・・もし、解雇しにくいからいじめをする、という命題が正しいのであれば、これだけ解雇がやりたい放題な中小零細企業が圧倒的な労働局あっせん事案では、それを回避するためのめんどくさいいじめ事案なんかあんまり出てこないはずですね。

ところがどっこい、労働局あっせん事案は解雇も山のようにありますが、最近はそれ以上にいじめ嫌がらせによる自己都合退職事案がごまんとあります。もちろん、解雇もいくらでもやれそうな中小零細企業です。

・・・何のことはない。解雇がしにくいから仕方なくいじめするしかないんだ、という一見もっともらしそうに見える議論は、現にスパスパ解雇やり放題の中小零細企業こそが、いじめ嫌がらせがてんこ盛りであることによって、見事に反証されてしまっています。

しかし、話はここで終わりません。

例の愛知の悪徳社労士は、どういう企業に対して、あの陋劣な手口を売り込もうとしていたのでしょうか?

愛知を代表する天下のトヨタ自動車・・・ではもちろんありませんね。

そういう、インチキ社労士を頼る必要のない大企業が、どちらかと言えば解雇がやりにくい立場にあり、労働法もよくわからずにそういうブラック社労士を頼ってくるのは、労働局あっせん事案に出てくるような中小零細企業ということになるでしょう。

あれ?そういう企業はそもそも結構スパスパ解雇していて、わざわざ悪徳社労士のアドバイスで持って回った手口でいじめ自殺に追い込むような必要性はないんじゃないの?

まさにその通り。そこにこそ、このインチキ社労士事件の最大の悪辣さがあるのです。

実のところ、あの社労士の口車に乗って、それなりに高い金を払って必要性のないいじめ自殺プロジェクトをやらされる中小企業こそ、いい面の皮と言えましょう。

そして、現実社会の実情を知らず(あるいは知っていても知らないふりをして)日本社会はすべて解雇ができないくらい厳しい規制があるなどと嘘八百をわめき立てて、こういう悪徳社労士の商売の宣伝を勤める一部のエコノミストや評論家諸氏の責任は重いものがあるといわなければなりますまい。

以下、順に見ていきますと、

3位:あのIMFが日本に賃上げを要求 10,003件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-8e61.html

・・・悪名高きインターナショナル・マネタリー・ファンド。

構造改革の名の下に賃金をむりやり引きずり下ろさせることを至上命題としてきた(はずの)あの国際通貨基金です。

そのマネタリーな方のIMFが、こともあろうに、日本に賃上げを求めようとしているという、ブルームバーグの記事。和文と英文両方あります。

4位:だから、リストラ(整理解雇)とローパー解雇は違うって何回言ったら・・・ 9,145件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-748f.html

・・・リストラ、つまり整理解雇というのは、労働者本人の責任ではなく、会社の経営状況に基づく解雇なのであるから、ローパフォーマンス云々という話とは全然別次元の話である、というような、労働法の基本概念が全然通用しないこの日本では。

雇用契約がジョブに基づいている社会では、もちろん当該ジョブができないという理由による個人的解雇もありますが、いかなる意味でもそれは『リストラ』ではありません。

『リストラ』とは、あくまでも労働者個人の能力等とは関わりのない会社側の理由によるものであり、だからこそ、労働者の方もそれを恥ずかしがったりしないし、労働組合も積極的にその再就職のために支援をするわけです。

ところが、雇用契約がジョブではなく会社の社員であるというメンバーシップに基づいている日本では、『リストラ』が労働者に社員である資格がないという宣告になってしまい、それゆえに一番情緒刺激的な言葉になってしまうわけです。

そして、それゆえに、本来会社の都合でやるものであるがゆえに労働者の責任ではないはずの『リストラ』が、ローパフォーマーを追い出すためのものと(労使双方から全く当たり前のように)思い込まれ、それを前提に全てが動いていってしまうという訳の分からない事態が現出し、しかもそれに対して、「社員なのにけしからん!」とか「ローパーだから当然だ!」といった情緒的な反応は山のようにあっても、そもそも『リストラ』とは労働者側の理由によるものではないはずなんだが、という一番基礎の基礎だけは見事にすっぽり抜け落ちた議論だけが空疎に闘わされるという事態が、いつものように繰り返されるわけですね。

5位:労働組合は成長を拒否できるのか? 6,363件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-1e75.html

・・・正直言って、労働者の労働者としての利益を追い求めるために存在するはずの労働組合のシンクタンクが、こういう(あえてきつい言い方をしますが)腹ふくれ満ち足りたブルジョワの息子の手すさびみたいな議論をもてあそんでいて良いのでしょうか、という根本的な疑問が湧いてくるのを禁じ得ません。特に最初の二つ。

心のビッグバンだの、精神革命だの、いやそういう議論がそれなりの場でなされるのは大いに結構だし、そういうのが大好きな人々がいることもわかる。でもね、それって、日本の労働組合のナショナルセンターのシンクタンクの機関誌でやるべき事なんだろうか。

本当に今の日本の労働者、とりわけ労働組合に組織されることもなく使用者の私的権力にさらされて、低い労働条件を何とかしたいと思っている労働者に呼びかける言葉が、「希望としての定常型社会」なんですか。

そして、見果てぬ夢を夢見る夢想家ではない現場で何とか生きていこうとしている労働者たちに送る処方箋が「金利と利潤のない経済の構想」なんですか。

壮大な議論は私も嫌いじゃないし、リアルな議論とつなげる道もないわけじゃないと思う。でもね、これじゃ接ぎ穂がなさすぎる。

何というか、そのあまりの落差に言葉を一瞬失う感が半端ないのですが。

6位:勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は 6,355件

これは昨年12月のエントリが年を越えて今年になっても読まれた件数。なんなんや。

7位:公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は 5,920件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-d708.html

これは今年どんどん炎上していった例のアダルトビデオへの出演強要に絡んで、警察が強制捜査に出た根拠となっていると思われる裁判例をいくつか紹介したものです。

こういうたぐいの裁判例はあまり世に知られていなかったと見えて、結構の読者を集めたようです。

・・・実際、確かに、アダルトビデオ派遣事件判決(東京地判平成6年3月7日判例時報1530号144頁)では、こう述べています。・・・

・・・当該女性がAVプロダクションに雇用された労働者なのか、という点について、上記平成6年3月7日東京地裁判決では、被告側が争っていないので議論になっていないのですが、そこを争った事案はないかと探してみたら、こういうのがありました。平成2年9月27日東京地裁判決です。被告側が雇用関係不存在を主張したのを判決が否定しているところです。・・・

・・・判例を調べていくと、プロダクションが雇用してビデオ製作会社に派遣するという労働者派遣形態としてではなく、プロダクションがビデオ製作会社に紹介して雇用させるという職業紹介形態として、やはり刑罰の対象と認めた事案があります。平成6年7月8日東京地裁判決ですが、・・・

・・・ちなみに、上記職業安定法63条2号には「募集」も含まれます。判例には、ビデオ制作メーカーがこの「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」「労働者の募集」をしたとして有罪になった事案もあります。東京地判平成8年11月26日(判例タイムズ942号261頁)は、・・・

8位:長澤運輸控訴審判決 4,584件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-84b2.html

・・・これだけではどういう理屈立てなのかいまいちよくわからないので、判決文を見る必要がありますが、記事からすると、高齢者の定年後再雇用であるという点がポイントになっているようにも思われます。

既に『労働判例』今月号に判決文が載っています。同号には同じような高齢者の待遇に関わる判決がいくつか載っており、比較検討の良い材料になります。

9位:大学がブラックビジネスでないためには 4,143件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-c136.html

・・・千田さんの言い方は、「私的な消費財に過ぎない」大学教育の費用を「公的に負担すべき」という議論になってしまっているのです。もちろん、それは戦後確立してきた生活給が教育費を私的消費財とみなすことを可能にしてきたにもかかわらず、それが現在大きく揺らいできているという社会の変動を反映したものであり、的確に対応しなくてはならない問題の鋭い提起になっているわけですが、それゆえにこそ、その提起は、大学教育がもはや私的消費財とみなされるべきではないというパラダイムチェンジを伴わなければ、「そういうことのために、俺たちの稼いだ金をただでよこせというつもりかね?」という反発以外の何者をも招かないでしょう。

そういう意味において、教育の職業的レリバンスとかいわゆる「L型大学」をやたらに目の敵にする人々は、すなわち自分たちの足元を掘り崩し続けているのだと思います。「無駄」だけど楽しいからお前の金をよこせ、でいつまでも通用するわけではない。資源の権威的配分の技術としての政治の世界においては、資源を移転するにはもっともらしい理屈がいるのです。

10位:EUはリベラルかソーシャルか? 3,646件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e515.html

・・・ギリシャのシリザとか、スペインのポデモスとか、南欧諸国の反EU運動は基本的にこれに対する対抗運動。リベラルなEUに対して各国のソーシャルな仕組みを守ろうというリアクション。そして、イギリスの反EUの気持ちの中にも結構これが大きい。イギリスはユーロ圏じゃないので直接関係ないのだが、労働党支持層の中でもEU残留に熱心になれないひとつの背景。

次点:上野千鶴子氏の年金認識 3,375件

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-0196.html

拙著のオビで「絶賛」していただいた大恩ある上野さんですが、さはさりながら、筋道は筋道として明らかにしておかなければと思ったもので。

・・・年金というものを「ワシが積み立てたものじゃ」と認識する私保険的感覚(それ自体は一つの経済イデオロギーとしてありうることは否定しませんが)の社会政策的帰結に対して、もう少し敏感であってほしいという思いは否めません。

ちなみに、いま日経新聞の「やさしい経済学」で権丈善一さんが「公的年金の誤解を解く」と題して、いちいち噛んで含めるように年金というのはね、と説明しています。これでわからない人は、要するにわかりたくない人ということになりましょう。

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