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日本企業の最も大きなメリットは、無能でも働けること?

「Love dirty poiesis」というブログに、自らアラフォーと言われる方が「定時退社なんて可能なわけがない!誰しもに死ぬ気で仕事を身に着けるべき時期がある!」という文章を書かれています。

http://keizaijin.hateblo.jp/entry/2016/10/23/192736

ジョブ型雇用が海外で上手くいってる、という認識がこれほどまでに多いことに驚きます。
これは典型的な、外国というものに夢を見がちな発言の内の一つです。まあみんなあまり考えずに賛同を示しているのかもしれません。

まともに自分の頭で考えている人なら知っていることですが、この世に理想郷はありません。

ジョブ型の雇用は、それはそれで問題が起こっています。ヨーロッパ(ヨーロッパと言っても広いのですが)は日本とくらべても、若年失業率が非常に高いです。これは「ジョブ型」の弊害と言われています。

Chuko価値判断を抜きにして言えば、この事実認識は全く正しいものです。それは、拙著『若者と労働』で繰り返し論じたことでもあります。

そして、ジョブ型のヨーロッパの最大の問題点は、若者を「オン・ザ・ジョブ」で育てられないことにあるのです。
つまり、個人の人格や将来性を加味せずに、「スキルだけを買う」といった雇用形態をとる場合、基本的に企業側は熟練のスキルを持った人間を取りたがります。

当然ながら、ずっとその仕事をしていた人は仕事があって、新しく仕事を覚えなければならない若者が、職にありつけないという情況が続いているのです。仕事をとれないから成長できずにどんどん仕事がなくなっていく……という悪循環です。

それに比べれば、「企業に採用しても差し当たっては何の役にも立たないような、職業経験も知識も何も持たないような」新規学卒者を「もっぱら好んで採用しようとする」日本企業というのは、少なくとも若者の雇用機会確保という点から評価するならば誠にスバラ式在り方であったことは間違いありません。拙著『若者と労働』で耳がタコになるくらい繰り返したことです。

しかし、その

しかし、往々にして、「社畜」であることのメリットを人々は忘れがちです。日本企業の最も大きなメリットは、無能でも働けること、これに尽きます。

というメリットの裏側に張り付いたデメリットがこれまた、こぼれ落ちて這い上がれない若者だの、ブラック企業でぼろぼろにされる若者だの、経験を積んで熟練があるはずなのに真っ先に企業から排除される中高年だの、無限定に働けないから活躍しろと言われても活躍できない女性だのと、いろいろとあるがゆえに、こういう議論になるわけです。

ものごと、ある一つの角度からの価値判断だけで全ての議論が決着するような生やさしい問題は一つもありませんが、雇用システムの問題はとりわけのその典型といえます。

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