なぜ極右政党は危機の時代にうまくやるのか?
欧州労連のシンクタンクである欧州労研(ETUI)が「Why far right parties do well at times of crisis: the role of labour market institutions」(なぜ極右政党は危機の時代にうまくやるのか?:労働市場機構の役割)というワーキングペーパーを公表しています。なかなか興味深い分析をしているので、ご紹介。
This working paper argues with extensive statistical analysis that the rise of far-right parties in Europe has less to do with the economic crisis and unemployment levels as such but more with specific labour market policies and institutions. The authors show that the deregulation of employment protection legislation and the reduction of employment benefits have in many countries intensified the support for these far-right parties.
このワーキングペーパーは、広汎な統計的分析によって、欧州における極右政党の興隆は経済危機や失業水準それ自体よりも、特定の労働市場政策や機構と関わりがあると主張する。著者らは雇用保護法制の規制緩和と失業給付の削減が多くの国でこれら極右政党への支持を強化したことを示している。
政治学系の議論の一般的な傾向では、経済危機で失業が増えることが極右への指示をもたらすという単純な議論になりがちですが、各国ごとのデータを詳しく見るとかならずしもそうなっておらず、むしろ解雇規制緩和や失業給付削減が直接に極右政党への支持を押し上げているという議論です。
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政治学がコメント性向を持つのであれば、まさにその構成員内にサイコ・ファクト思考の科学とは相いれない体質があると言えます。あるいは臨床経験主義とも言え、広汎な統計的分析とされておりますので、この判断は確率高いと存じますし、これは学問以外の社会全般の性向ですね。もっともらしい説明は、ほぼ後知恵ともいえますしこれが社会科学の宿命かな。
要は変数は多岐にわたるものであるということから、重回帰分析や偏相関手法に依らないと上記の罠に陥ることになる危険告知ですね。でもこれが社会を現実に動かしている真相でもあるのですからやはり「どうしたもんじゃろのう」ですよ。人間がもつ適応力はなるほど今まですったもんだしながらも発展してきたんだもんねえと思い知らされますね。
投稿: kohchan | 2016年9月20日 (火) 08時48分