日本型雇用の終わりの始まり@倉重公太朗
労働調査会のHPの労働あ・ら・かるとというコラムに、弁護士の倉重公太朗さんが「均衡処遇を巡る近時の動向から見る、日本型雇用の終わりの始まり」というエッセイを書かれています。
http://www.chosakai.co.jp/information/16679/
近年の労契法20条やパート労働法8条・9条の均衡処遇を巡る裁判をざっと概観した上で、ややマクロ的視点からこう省察されています。
・・・これらの裁判例の出現から導かれるのは、日本型雇用の「終わりの始まり」である。
日本型雇用の3大特徴(終身雇用、年功序列、企業内労組)を背景に、正規社員はメンバーシップにおけるメンバーであり、非正規雇用はメンバーではないため待遇差があって当然という、これまで通用していた考え方が通用しなくなっているのである。
方向性という意味では、今回の判決は、「正社員」という身分(メンバーシップ)の有無ではなく、従事する業務、責任、企業での位置付けから待遇を決すべきという職務給的な考え方に基づくものであると捉えられる。そうだとすれば、これは旧来型の日本型正社員像ではなく、いわゆるジョブ型正社員と親和性のある議論であり、筆者としては、今後の企業慣行が変わっていく可能性を示唆するものであると捉えている。
つまり、転職市場の活性化、雇用流動化(労働調査会、『なぜ景気が回復しても給料が上がらないのか』参照)という方向性に向けた第一歩という意味では、日本型雇用の転換点として位置付けられるものなのである。
拙著で論じた議論の構図に沿ったかたちでメスを入れています。そして最後には、
・・・一つ言えることは、この均衡処遇問題を通じて問われていることは、非正規社員の存 在意義、言い換えれば、自社における「正社員」とは何なのか、という点にある。
「なぜ、日本の正社員は非正規社員よりも給料が高いのでしょうか?」
均衡処遇の裁判例から、日本型雇用の変遷が読み取れる、ということを改めて強調して、本稿の締めとしたい。
と述べて、企業人事担当者に重い問いを投げかけています。
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