性別・年齢等の属性と日本の非典型労働政策@『JIL雑誌』7月号
刊行から3ヶ月経ったので、『JIL雑誌』7月号に私が寄稿した「性別・年齢等の属性と日本の非典型労働政策」が全文アップされました。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2016/07/pdf/004-013.pdf
論文の要約と目次は次の通りです。
「典型雇用」と「非典型雇用」という雇用形態の軸と、性別・年齢といった労働者の属性に係る軸は本来別物であり、現実にも必ずしも重なっていた/いるわけでもない。たとえば、高度成長期以前に注目された「臨時工」は、「本工」と性別・年齢等の属性が大きく異ならないと考えられ、それゆえに深刻な政策課題とされていた。
しかしながら、とりわけ高度成長期に確立し、1990年代半ばまで維持されてきた雇用-社会システムにおいては、この両軸がかなりの程度重なると考えられ、それを前提に様々な政策が講じられ/あるいはむしろ講じる必要はないとされた。たとえば、パートタイマーは自らをまず家庭の主婦と位置づけ、その役割の範囲内で家計補助的に就労するという意識が中心であったため、職場の差別が問題視されなくなった。また派遣労働者は結婚退職後のOL、嘱託は定年退職後の高齢者、アルバイトは学業が主の学生とみなされ、こうした社会的属性が労働問題としての意識化を妨げていた。
1990年代以降、いわゆるフリーターの増大をきっかけとしてこの両軸の関連性は徐々に低下してきているが、なおかつて確立していた雇用-社会システムの影響力は強く、一方の軸に着目した政策を採ろうとする際に、他方の軸から来るイメージがそれを妨げる傾向も見られる。Ⅰ はじめに
Ⅱ 臨時工
Ⅲ 主婦パート
Ⅳ 派遣労働者と嘱託・契約社員
Ⅴ フリーター
Ⅵ 非正規労働問題の復活
今日の議論に対して重要なポイントを指摘していると思っていますので、関心ある皆さんにお読み頂ければと思っています。
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