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2016年9月 4日 (日)

伊原亮司『トヨタと日産にみる〈場〉に生きる力』

27869994_1 前から気になっていた伊原亮司『トヨタと日産にみる〈場〉に生きる力:労働現場の比較分析』(桜井書店)を、この土日で読みました。530頁を超える大著ですが、内容も分厚いものでした。

http://www.sakurai-shoten.com/content/books/099/bookdetail.shtml

目次は下にコピペしたとおりですが、なんと言っても本書の中核をなし、ずしりと重いのは第3部です。第1部のトヨタや日産の労働紛争の歴史などは既に読んだ知識の再確認のようなところもありますが、第2部の両社の正社員の働き方の違いにそれが反映されていることが興味深いです。

正社員についていうと、日産が現場から上がれるポストが相対的に低く、経営側との間に線引きがはっきりしているのに対し、トヨタはより「統合的」ですが、トヨタは養成工(学園出身者)が中核層として職場を引っ張っているという意味ではエリート主義的でもあります。

そして第3部の著者の伊原さん自身が両社に非正規労働者として入り込んで参与観察として両社の管理のあり方の違いを浮き彫りにしていくところはとてもスリリングです。

ここで一番興味深かったのは、トヨタが直接雇用の期間工として綿密な管理を行い、日産は請負会社から送り込まれる労働者をやや放任気味に管理していることが、管理の様々な側面に一つ一つ反映していることで、とりわけある意味で皮肉なのは、何か異常が起こった時に、トヨタでは現場の非正規労働者が勝手に処理することはまったくできないのに対して、日産では(別に認められているわけではないけれども)事実上現場レベルで結構勝手に処理されているということでしょうか。それは、日産の方が現場で機械が動かなくなるといった問題がよく起こるからでもあるのですが、「普段の仕事」か「普段でない仕事」かというレベルで見ると、日産に働く請負会社の労働者の方が後者を一杯やっているというのはなかなかに皮肉です。

第4部は、正直いって労働過程論のいろいろな学説を並べた感じで、第2部やとりわけ第3部の知見をどう見事に組み立てるのかと思って読んでいたらそれで終わってしまった感じで若干がっかり感があります。

序章 本研究の視角と課題

第1部 労使関係の形成過程から読み解く現場の「中核層」のスタンス:企業内学校の出身者に注目して

 第1章 企業内学校:「中核層」の教育

 第2章 トヨタの労使関係の転機と現場の「中核層」のリーダーシップ

 第3章 日産の労使関係の転機と現場の「中核層」の軸足

第2部 長期雇用者のキャリア管理と組織への統合:能力形成と昇進競争に着目して

 第4章 能力形成と組織への統合:キャリアモデルの検討を通して

 第5章 昇進と競争:全体の「底上げ」とリーダーの育成とのジレンマに注目して

第3部 「末端」への管理の浸透と非正規労働者の働きぶり

 第6章 労務管理の実態比較:切り捨てと抱え込み

 第7章 労働管理の実態比較:労働の質と量

 第8章 職場管理の実態比較:チーム・コンセプトと可視化

 第9章 労働過程の直接的な管理の実態比較:場のつくり込み

第4部 働く場の力学の理論的整理:市場と組織の間で

 第10章 工場への労働者の取り込み:統制に対する抵抗から「同意」の調達、「自己規律」へ

 第11章 大規模組織の抱え込みと「オーガニゼーションマン」

 第12章 組織内の攻防:多様な「抵抗」と職場の「つくり込み」

 第13章 組織から再び市場へ:場に根づいた文化の一掃と職場の弱体化

終 章 場のウチとソトをつなぐ

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