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« 教師は労働者にあらず論 | トップページ | 奨学金破産の解消法 »

2016年8月29日 (月)

それってますますインターンじゃなくなる

日経夕刊に、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS28H2H_Z20C16A8MM0000/(インターン日数短く 経団連「最低3日」軸に)

経団連は年内にも、会員企業向けの採用活動の指針で定めているインターンシップ(就業体験)の下限日数を短縮する方向だ。現在は最低5日間としているが最低3日間に引き下げる案が軸となる。インターンを開く企業は増えており、学生の関心も高まっている。日数を減らすことで企業が実施回数を増やせば、学生も参加しやすくなる。

何をやろうが基本的に自由なので(少なくとも法的には何ら規制はないので)、別にとやかく言うつもりもありませんが、ただでさえインターンシップというのはおこがましいただの社会科見学に毛が生えたようなものが、毛も生えていないようなものになるのだろうな、と。

そもそも、インターンシップとは、ジョブ型社会でのジョブのスキルでもって採用されるかどうかが決まるような社会、すなわち言葉の正確な意味での就「職」がある社会において、ほっといたら採用して貰えないようなスキルの無い若者に、企業の中で実際に仕事を体験することで採用して貰えるようなところまで引き上げようという話なので、そんなものは何も求められず、まっさらな方が喜ばれるような社会においては、少なくとも就「職」しやすくするための仕組みとしてはほとんど意味が無いわけです。

Ebiharaこの問題については、海老原嗣生さんが先月、まとまった形で論じておられますので、是非そちらをご参照ください。

http://blogos.com/article/183980/(「インターンシップが若者を救う」論を駁す① 大手の早期横並びインターンというかつて来た道)

http://blogos.com/article/184058/(「インターンシップが若者を救う」論を駁す② 早期インターンでも中小はやっぱり不人気)

http://blogos.com/article/184269/(「インターンシップが若者を救う」論を駁す③ 欧米のエリート・インターンシップは年収600万円!? )

・・・仕事を覚えるためには、それくらいハードな実習が必要なのだ。職務別採用の世界で職にありつくためには、こうした下積みが必要となる。日本のように、1週間程度のアトラクションでインターンシップが事足りるのは、その前提に未経験者を採用するという、新卒慣行があるからだ、と気づいてほしい。

http://blogos.com/article/184344/(「インターンシップが若者を救う」論を駁す④欧州のインターン=偽装雇用=ブラックという構図)

雇用システム論への理解抜きに表層だけ捉えて雇用問題を論ずるとおかしなことになるというのはあちこちで見られますが、インターンシップなどはその典型といえるテーマでしょう。

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コメント

いつぞやの(○○さん、お元気でしょうか?)呼びかけの必要もなくと思いながら、心より「はまちゃん先生!はりきってどうぞ~」と思っておりましてエントリには喜ばしく存じました。
「・・・仕事を覚えるためには・・・」は、供給側に責任があるのか?需要側に責任があるのか?
すくなくとも「今」を絶対値される供給側に説教しても、それはそれを生業とできる情報時代となった証左を示しただけのセールストークでしょと?理想主義を使った対立のポジショントークに思えてしまう残念さ藻感じるのはわたくしだけでしょうか?
云わんとされることは重々承知しているますが、相対ですから。
しかし、これこそ情報ツールに依存する「今」なのでしょう。

念のためご参考まで、非日系企業でよく見られるインターンシップ(学生アルバイト)は次の2種類です。

①サマー・インターン(夏休みの2-3ヶ月を利用してフルタイム就業。短期間だが本格的な実務経験を身に着ける)

②通年インターン(1年単位。授業のない日(週1-3日)のみパート就業、またはGapイヤーの1年間をフルタイムで就業)

言わずもがな、いずれのインターンとも企業側も学生側も「運よくば採用/就職」を狙っています。ただし、この場合、各社で大量の学生を受け入れるという訳にはいきません…。

日経記事にあるように「学生がインターンに参加しやすくなれば業界研究や自己分析がしやすくなる。」「複数の業界のインターンに参加すれば視野も広がる」など、現行インターンの目的が「業界研究」「自己分析」や「視野を広げる」ため、ましてインターンでの採用活動が原則禁止されている以上、シューカツ前の学生にとっては1社でも多くの気になる企業の社風や雰囲気に(たとえ1日でも)触れる機会があるのは悪い話ではないでしょう。

もっともご指摘のとおり、本来のインターンシップ(就業体験)からはますます実態が遠ざかりますので、いっそここらで名称を「気になる職場訪問/オフィス見学!」くらいに変更した方がスッキリするかもしれませんね。

海上さん
もっと複眼的にすればどうです?
エントリ批評どおりの目的一途シップ、そしてもう一方は、定まらず、しかし期間内には定めねばならぬ学生たちに最大門戸を開く、お試しエトセトラシップ。
前者も後者も、企業側、学生側がお互い主となりその制度(利用)選択をする意味では、大きな一歩となりそうですがどうでしょ?
でも、生産側がここまで疲弊し競争力を落としている根本原因にメスを入れる(西洋医学中心主義的指向ですが)ことは不可避ですねえ。これなくしてこの話題は夢想に近く感じるのですよ。

Kohchanさん、複眼案、同感です。日系企業にはもっと「本格的インターンシップ」(学生アルバイト)の通年受入れを促し、外資系は気軽な「エトセトラシップ/職場見学」ツアーを量産していただくと…。学生にとっては機会と選択肢が増えることで「日系/外資系」「本格/エトセトラ」、いずれも自由に選択可となりましょう。むろん受入れ側の会社は増しますが…これも若者の成長に必要不可欠な社会的投資/費用という共通理解ができるとよいですね。

さて、懸案の大テーマ、企業競争力強化のための労働市場改革…。最近よく世間で議論されているテーマ(課題→施策)はおよそ以下のポイントでしょう。

①非正規社員と正社員の格差是正 
→ 同一労働同一賃金の導入

②長時間労働(働きすぎ)の是正 
→ 残業上限規制と勤務インターバル制度の導入

③高齢者の就労促進 
→ 定年/再雇用年齢の延長

④人材育成や人材投資 
→ 脱時間給(WE)の導入、就職協定の見直し?

⑤成長分野への円滑な労働移動 
→ 解雇の金銭解決制度の導入

うーん、確かに色々な観点から綺麗にメスが入っているかのように見えるのですが、③の定年延長を除いて、何かどうも釈然としないのです。それは、きっと問題の「根本原因」を特定せずたまたま目についた「現象」ごとに対処療法でやっつけようとしているからです。

個々の現象は独立しているようでいて実際は相互に関連してます。Hamachan先生ファンなら十分お察しの通り、こうした採用/残業/定年/就活/流動性などの諸課題の根本原因は総合職/正社員の「職務/労働時間/勤務地の無限定性」に起因しています。「雇用主の手でいつでも柔軟に各人のジョブが書き換えられてしまう状態」という、日系企業特有の雇用システムからの論理的帰結です。

いまの世間の議論ではその根本原因への対応策がほとんど言及されず(経団連的にはあえて聖域として死守したいのでしょうか)、個別課題に対してバラバラに対応しているため、それぞれの施策実施後の「行き着く先」が全く見えません。そのため期待よりも不安感、そして実効性に疑念が残ります。特に「脱時間給」と「解雇金銭解決制度」は、内容とネーミングがあまりに露骨すぎてセンスがなく、誰が聞いても明らかに気分はあがらないでしょう…。

思うに、実は現行メンバーシップ型の最大の利点は「学生から社会人へ」の移行、毎年100万人のスムーズな社会移動を実現可能としている「新卒採用/就活という制度」ではないでしょうか(世間ではかなり叩かれてはいますが)。そこは、今後も日本企業のメリットとして「残す」と判断し、一方での根本的治療を施すためにはどうすればよいのか?

これはあくまでも今後の議論のための私案/試案(たたき台)ですが、(労働契約法において)メンバーシップ型の雇用契約には「期間の上限」を設けてはどうかと思うのです。例えば「職務の定めのない契約(メンバーシップ型)を結ぶ場合は期間を「上限10年」とし、その後は無期ジョブ型契約に自動的に切替える」というように。かりに新卒23-25歳で社会人になった人であれば10年後の33-35歳(30代前半)で、そのまま無期ジョブ型に切り替えるのです。

この方法のメリットは新卒入社後の最初の10年間でジョブローテーションにより複数の職務を経験すること。自分の適性がある分野の仕事を探す猶予期間(ネオテニー)が確保できることです。実際には10年経過した後にそのときに従事しているポジションでそのままジョブ型契約に移行するのか、あるいはそのタイミングで社内公募に出ている別のジョブに応募して異動するのか、あるいはそのタイミングでその会社に見切りをつけて他社に転職するなど様々なオプションがあるでしょう。

これをわかりやすく表現すれば次のようになります。

 ・学校卒業(新卒/既卒)→メンバーシップ型契約(有期10年)→ジョブ型契約(無期。自動切替)→定年/引退(65-70歳)

ここで、ジョブ型契約移行後の各自の職務記述書(JD)は、ある意味、一人ひとりの仕事(職域)とWork-life balance(余計な仕事をアサインされない)を守るための「砦」として機能するはずです。長時間残業の可能性からJDが身を守ってくれるのです。

Kohchanさん他みなさん、いかがでしょうか?

この場で長々と気合を入れて書くまでもないかとは思ったのですが、世間の議論では大事なことがカッコに入れられたまま厳しい側面ばかり目立って見えた(その結果、提示されている諸施策に「夢」を感じられなかった) ので、あえて物申し上げました次第です。

読者みなさんの英知を集め、ぜひ次世代のために新しい日本の雇用システムのスタンダードを一緒に考え作りあげていきたいと切に思っております。

かりに新卒23-25歳で社会人になった人であれば10年後の33-35歳(30代前半)で、そのまま無期ジョブ型に切り替えるのです。

それこそまさに、海老原嗣生さんが唱えている理論であり、私が女性の出産という観点から疑問を呈しているところでもあるわけです。

拙著『働く女子の運命』241ページ~

・・・実際、雇用問題の論客である海老原嗣生氏は、『雇用の常識 決着版』(ちくま文庫)、『日本で働くのは本当に損なのか』(PHPビジネス新書)、『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる』(PHP新書)など近著で繰り返し、入口は日本型のままで、35歳くらいからジョブ型に着地させるという雇用モデルを推奨しています。

 この解は、若者(男性)と中高年(男性)という二つの変数をもつ二元連立方程式の解としては現時点でもっともリアルな解と言えましょう。若者の入口まで一気にジョブ型にしてしまうと、現在の教育システムからスキルなんかない方がいいという前提で生み出されてくる若者たちは阿鼻叫喚の地獄絵図に放り込まれることになります。それを解決するために教育システムを職業的レリバンスのあるものに改革することは、膨大なアカデミック教育需要のお陰で生計を立てることができていたそれなりの数の人々を失業の淵に叩き込むことになります。そういう激変を回避したい穏健派にとっては、望ましい解なのです。

高齢出産が「解」なのか?
 しかし、にもかかわらず、この問題を女性という第三の変数を含む三元連立方程式として解こうとすると、この解は女性に高齢出産を要求するというかなり問題含みの解になってしまうのです。

・・・マタニティという生物学的な要素にツケを回すような解が本当に正しい解なのか、ここは読者の皆さんに問いを投げかけておきたいと思います。

海上さん、それに反応したいただいたはまちゃん先生、ありがとございます。
海上さんのご提案は双方に恵みをもたらす意味で今あより前進する方法論として賛成です。また、はまちゃん先生ご指摘の生物学的=いわゆる女性就労M字カーブは越えがたい問題ですし、ジェンダーに抵触する意識の差異ともいえるかと思います(ここに保育問題が絡んでくると今のややこしさがわかりますね)。また現政権のこうした取り組みへのディレンマ問題ともいえる女性の社会進出vS家族主義。上記の場合はトリレンマ問題ですね。不可能性定理に従えば解はないということになりますが、そうもいってはおられませんので時代にアジャストする漸進的改革を常に継続させるほかないと思われます。
ただし、基本的に”今”を変えなければ”次”につながらない社会活性化策への”障壁はどれか”の合意を論争ではなくうまくコネクトする力量が特に声高に叫ばれる方々にその素養があるかどうか?そして我々がそれを認知できる懐の広さがあるかどうか?またしてもディレンマですが、それが民主的社会なのでしょう。
専門外のこうしたことに首を突っ込んでいる責任上(笑)昨夜のbsフジ・プライムニュースを長々と見ていましたが、上記の懸念は払しょくどころか増幅しました(笑)。司会の反町氏に転がされっぱなしでしたものね(笑)。
最後に。大はできても、中小零細にはできない等々スケール問題もありますし、これこそ社会化により解をという制度派の論陣です。そしてこの課題が学生が家庭が輩出教育機関が大に群がる要因であること、それがもしも私が前出したコメントにしたためた「今」見える星の光が実は数十年前の光である生産側のそもそもの問題にもつながるといいなあと思い、いずれの社会問題も転換点である事実だけは浮き彫りとなってきたことこそ前進であろうと思います。
いずれにせよ真摯な姿勢はオピニオンにつながります。
ご両人に感謝申し上げます。

Hamachan先生&kohchanさん、いつもながら真摯なコメントありがとうございました。

現実の個別各社が置かれた競争環境は千差万別ですから、(拙案の是非はともかく)どんな雇用改革プランも「One size fits alll」というわけにはいきませんよね。

kohchanさんのご指摘にあった大企業と中小企業の違い、インダストリーの違い、企業内労組の有無、競争環境の違い(規制業界か否か)、企業文化の違い、関連系列傘下か否か(親会社からの天下り有無)、ターゲットとなる人材や職種の外部労働市場の有無、そして各社の採用ブランド力など…。

もちろん、今後メンバーシップ型の日本企業が「いつから、どのように、何のポジション」でジョブ型契約を適用していくかは、完全に各社の裁量かつ経営判断であることは言うまでもありません(仮に労契法でメンバーシップ契約の上限期間が10年なり20年なり設けられたとしても、それを最大限まで待つのか、途中で移行するかの余地が残ります。)

ただ、そうだとしても、各社で共通するのはwhyの部分、つまり遅かれ早かれ「なぜ」ジョブ型を採用しなければならないのか…。それは、真のグローバル競争に打ち勝っていくためには人材の多様性を増していかざるを得ないからですー重要なポジションをオープンにし、社内のみならず社外(競合)からも最適な人材を見出し、アサインしていくことが必須なのです(いい例として、最近のラグビーとサッカーの日本代表チームの人材多様性とパフォーマンスの関係をご参照…。)

特に外国人を採用する場合はメンバーシップ契約というわけにはいかないでしょう。もっとも案外と「日本企業は日本人だけのものでしょ」と漠然と思い込んでいる人が実際にはまだまだ多いのかもしれませんが…。

最後にhamachan先生ご指摘の「女性の高齢出産を要求する…」「マタニティにツケを回す」という点ですが、念のため著書「働く女子〜」の該当箇所も参照させて頂きましたが、メンバーシップor ジョブの雇用形態の違いが女子の高齢出産にどのように影響を与えるのかがあまり定かではありません。お時間ありますときにでも両者の関係性なり、移行時の懸念/影響をさらに詳しくご教授いただければ嬉しいです…。

もっとも上記試案で一番伝えたかった点はメンバーシップ契約は一種のモラトリアム期間であり、(10年でも20年でも)一定の勤務年数を経ればほぼ全員が(中高年で)ジョブ型へ移行するのが望ましいという点ですね。

実は私が知りうるだけでも、一部の千人規模の外資系日本法人や国内系金融系シンクタンクでは、新卒プロパーのメンバーシップ社員(ローテーションあり)と、ジョブ型中途経歴者(ローテーションなし)がいい割合でハイブリッドに混雑しています。一枚岩ではないため組織の運営自体は難しくなりますが、環境変化に打たれ強いカルチャーが育っていると聞いています。

今後、まずは日本の大企業からそのようなハイブリッドな組織を目指していくのかもしれませんね。

海上さん

私が自然科学をも扱うもので、空理空論とご批判されようが「星の光」を見ている私たちが、それが「今」なのか、それとも「遥か昔の現象のラグ」でしかないのかを今の社会問題の比喩として使いましたが、それと大差ない時間の視点で海上さんは労働のあり方と企業活動の競争力を持つ必須そして、私はその生産GDPの「光」が昔のそれではないかと仮説し、それにまつわる防貧機能と救貧機能を社会化する方法論に重きを置いている違いだけで、問題意識に差異はありませんですね。うれしい限りです。
OJTとOFF-JTに始まり適性を労働者自身にも決定権を持たせるフレキシブル労働移動も、また社会から志あるものが高等教育へ移動可能な社会制度が少子化により帰結的に職業選択の自由度が増してしまう現役や若者、そして未来を担う子どもたちに私たちが提供できる日本社会を築きたいし、それは我々の老後を保障してくれる投資でもあるのだろうと思っております。
分野は違えど頼もしくコメントを拝読させていただきました。ありがとう。

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