経済同友会提言から
昨日(8月1日)、経済同友会が「新産業革命による労働市場のパラダイムシフトへの対応-「肉体労働(マッスル)」「知的労働(ブレイン)」から「価値労働(バリュー)」へ-」という提言を発表しています。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2016/pdf/160801a_01.pdf
最近話題の新産業革命がらみでいろんなことが書かれていますが(目次は下にコピペ)、メインはだからもっと規制緩和という話ではありますが、注目すべきは個人請負型の新しい働き方に対してなんらかの権利保護の仕組みを導入すべきだと指摘しているところでしょう。
③新しい働き方を選択した個人事業主の権利保護の仕組みの導入
現行の労働法が想定していない新しい働き方の一つである「アライアンス」や「クラウドソーシング」は厳密には雇用契約ではなく、業務委託契約や請負契約の形式をとるが、依頼人(企業)、請負人(個人)、仲介者の力関係に不均衡が生じ、例えば、報酬を作業時間で割った時間単価が最低賃金を下回るなど、請負人(個人)を労働者と同様に保護しなければならない場合がある。したがって、このような観点から、必要に応じて労働法の適用対象を見直す必要がある。
また、労使関係のあり方においても、これまでのように特定の企業に属する社員を中心とする労働者の代表と使用者を前提とした仕組みが良いのか検討していく必要がある。例えば、SNS やプラットフォーム上で連携した複数の個人事業主と企業が労働条件に関して交渉するといった方式なども今後出現してくるかもしれない。
④新しい働き方に対応する社会保障の再設計
アライアンス、クラウドソーシング等、新しい形の働き方が普及してくると、こうした形態で働く個人の年金、健康保険、労働保険など社会保障制度のあり方も課題になってくる。これまでのように、個人事業主としての制度加入で良いのか、個人事業主と被雇用者との間で立場が頻繁に変わる人財の扱いをどうするかなど、持続可能な社会保障制度に向けた改革議論の中の一つの論点として、こうした課題も早急に検討が必要である。
こういう問題、本来なら労働サイドや労働法学者などの方がもっと敏感に提起していかなければいけないテーマのはず。
はじめに
1.労働市場を取り巻く新産業革命による環境変化とその影響
◦(1) 人財の量と質の需給ミスマッチ
◦(2)グローバルな人財獲得競争と人財育成競争
◦(3)職種の消滅/誕生
◦(4)ライフスタイルや働き方の変化2.激変しつつある労働市場――その将来像を展望する
◦(1) 新産業革命がもたらす就業構造の変化
◦(2)「労働」のパラダイムシフト
◦(3)「労働市場」のパラダイムシフト3.提言――労働市場のパラダイムシフトへの対応
◦(1) 企業の取り組み
(a)2020年までの課題(Japan 2.0の準備期間)
①スマート・ワークの実現
②価値創出人財の育成・兼業禁止規定の緩和
(b)2021年以降に向けた課題
○雇用形態の多様化、新しい企業と個人の関係の構築な環境の整備
◦(2)政府としての取り組み
(a)2020年までの課題(Japan 2.0の準備期間)
①「日本再興戦略」の着実な実行と効果検証
②同一価値労働同一賃金に関する法整備
(b)2021年以降に向けた課題
①新産業革命を踏まえた労働行政の転換
②新しい働き方に対応する社会保障の再設計
③柔軟で安定した労働市場の構築
◦(3)教育機関の取り組み
◦(4)個人としての取り組みおわりに
2015年度雇用・労働市場委員会委員名簿
« 広島経済大学入試問題(国語総合・現代文B) | トップページ | 都知事誕生! 続く「女性初」、残るはあのポスト?@読売オンライン »
コメント
« 広島経済大学入試問題(国語総合・現代文B) | トップページ | 都知事誕生! 続く「女性初」、残るはあのポスト?@読売オンライン »
経営側に危機感共有度が高いのでしょう。近未来(おそらく2020年秋ごろ)には内消費力も内労働数もGDP成長どころか一気に逓減してしまう可能性のうえに立ち、内企業の競争力逓減は長年の内向き経営により激しく劣化したままなため、もはや八方ふさがりの打開には三方よしを具現化させることにしか未来はないと考えたのかもしれません。
そうであればよいのですが、はまちゃん先生が指摘される側で旧式エンジンしか搭載していない”研究していない研究者村人たちや、組しないがとりあえず安定したポジションを得たい利得な人々”や、それを飯の種とするメディア、そして輝く前与党でイライラしてきたイラ男くんやイラ子さんたちは「来たぞチャンスが」と、BIやまたぞろ全額税方式で騒動を起こす危険性も否めません。少なくとも数年たちましたが賢くなったなあと思われる兆候を確認できないものですから仕方ないでしょ。また騒ぐんだろうなあ、上記の人からの借り知恵で意味も分からず(笑)。思い出すなあ、「辞任表明したよ、さっき」と告げたときの学生たちの拍手喝采(笑)。
投稿: kohchan | 2016年8月 2日 (火) 11時57分
>「肉体労働(マッスル)」「知的労働(ブレイン)」から「価値労働(バリュー)」へ
という抽象的表現であっても、ちゃんと具体的中身を伴っているようで、良いことですね。
そういえばその昔、表現だけは似た感じで、「知価革命」とかいうのがあったけど、あれって何だったのかな・・・(ペテンまがいだった?、ていうか「ペテンそのものだった」?!)
投稿: 原口 | 2016年8月 2日 (火) 12時49分
報告書P20の同一労働同一賃金に関する次のコメントと図表11が割といいですね―「"短期的"には上記の前提(ジョブベースの職務給)が整備されるまでには時間を要することから、依然として残る正規と非正規の「雇用形態のみ」の違いによる賃金格差を是正するために、雇用形態が異なる社員間の賃金差に関し「合理的な理由」が認められる場合の「可視化」を図る必要がある。」と…。図表11で可視化の例として「転勤配置換プレミアム」「残業許容プレミアム」「個人の成果プレミアム(マイナスの場合もあり)」そして「理由もなく高かった分」など。
この提言は、現在進行中の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」(厚労省主催)の議論の方向性とも合致しているようです。
ただあえて申し上げれば、やはり上記提案は現行メンバーシップ型雇用におけるマジョリティである「正社員・総合職」の現行賃金水準を是が非でも維持したい!という「希望的観測」に見えてしまいます…。もちろん、それが今後も維持できるならばみなHappyでしょうが、一方で、報告書前段でも述べられているような新産業革命なりグローバルな人材競争なりAIやロボットによる職種消滅という「現実」を考慮すれば、その財源はどこから来るのかな?という素朴な疑問が生じてしまいます…。
投稿: 海上周也 | 2016年8月 2日 (火) 21時48分
追記として
価値労働へは、科学の世界で競争的予算主義の元凶となっている成果重視につながるようですね。競争です、人間同士、そして機械との。
「パラダイムシフト」?クーンが怒り出しそうな誤用。イノベーションもシュムペーターが呆れるような誤用大国ニッポンですから、これもAIの理論武装のひとつでもある受動意識仮説につながりますねえ。
どうせならば、鹿の線路事故に悩む近鉄が排除から共生へと大胆に対策”パラダイムシフト”へ”イノベーション”として受動意識仮説に依る実験”なんと鹿踏切とよばれる解放区を指定し、ランダム横断を秩序に変えるものです”のようなものに学んでほしいですねえ。
これこそ副業・兼業のエントリで紹介した共生発想法パラダイムシフト方法論のひとつでしょう。
投稿: kohchan | 2016年8月 3日 (水) 07時37分
何度もお邪魔してごめんなさい。
はまちゃん先生のコメント「こういう問題に…などの方が…テーマのはず」そこに新卒入り口がメイン社会継続中である日本では今年は”サイレント”と呼ばれる採用非対称性があることも付け加えてほしいと存じます。
その怨嗟は来期卒年に確実に伝播しますので。
採用担当の自己防衛手段とだけの非難的解釈では済まされない問題ですね。
なにせ日本とはそこで人生が決まってしまうのですから、卒年にとって恐怖以外の適切な言葉は見当たりませんね。今日も黒服は疲れ切って車内で居眠りしております。
投稿: kohchan | 2016年8月 4日 (木) 07時34分
(個人事業主と被雇用者との間で立場が頻繁に変わる人)の一人です。
被雇用者の立場から離れて、それから仕事を受注して個人事業主として収入を得るまで、雇用保険の給付が適用されないのは収入が安定しない個人事業主としては痛いことです。個人事業ではなく会社を立ち上げている場合は、会社を登記簿から外さないと保険給付が適用されません。アメリカではIndependent Contractorの保険があるようですが。
投稿: 設計労働者 | 2016年8月 4日 (木) 13時41分
設計労働者さんのコメントは重いです。
おっしゃることを「ど~すんの」といつもコメントしながら、能書きたれる私は何なんでしょう。
少なくともその手合いと「同じだよ」と刺されたようです。
投稿: kohchan | 2016年8月 6日 (土) 21時21分