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堀有喜衣『高校就職指導の社会学』

239982堀有喜衣さんから『高校就職指導の社会学 「日本型」移行を再考する』(勁草書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。本書は堀さんの博士論文をもとにしたもので、学校から職業への移行という堀さんのライフワークテーマの現時点での集大成という趣があります。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b239982.html

学校から職業へのスムーズな移行を促す高校就職指導は、若年失業率の低下に寄与しているとして、80年代には国際的にもその機能が高く評価されたが、90年代にはその評価は反転した。従来は、生徒の就職先の確保や配分を期待されてきた高校就職指導が、2000年代以降どのような状況となっているのか、実証データにより詳細に検討する。

既に雑誌論文や報告書の一部として読んでいた部分もありますが、新たに書き下ろされた章は面白いです。事実発見的な章としては第5章がそうで、これまで苅谷さんの本などでそうだと思われていたいわゆる80年代型の高校就職指導が、実はその80年代にさえ、必ずしもマジョリティというわけではなく、そうじゃないあり方が結構多かった、というちゃぶ台返しが楽しめます。

その必ずしも一般的でなかった80年代モデルが、90年代以降どんどん収縮して行く姿を描いているのがその前の第3章と第4章です。

終章の最後でこう語っているのは、まさに混迷の現代を示しているのでしょう。

・・・最後に、本書は選抜・配分を強調したこれまでの「日本型」移行は小さいながらも今後も存在しつつ、教育において職業的意義を重視するような方向性が強まっていくという当面の見通しを持っている。しかし日本社会において学校と労働市場との接続をどのように構築していくのかについて、長期的な見通しを示していないのは、大きな絵を描くことが可能だった時代は終わり、混迷の状況が続くと考えているからである。こうした不透明な状況の中でも、全体像を意識しながら一つずつ知見を積み上げていくことが将来の若者世代に対する責任だと本書は考える。

上記リンク先には目次もありますが、博士論文の要旨というのがここにアップされていて、一番簡明なので、それを引用しておきます。

http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/bitstream/10083/58188/1/o_360_sha_naiyo.pdf

高校就職指導の選抜・配分機能については教育社会学において多くの研究が行われてきた。先行研究においては、メリット原則が就職指導にまで貫徹しており「学校に委ねられた職業選抜」が行われていることを強調する説明がこれまで支配的だった。本論文をこれを「80 年代型仮説」と呼び、その妥当性を、統計的および事例的研究によって実証的に検証することを目的とする。
検証の結果、次の二つの点に関して、80 年代型仮説は知見の見直しが必要であることが明らかとなった。①80 年代までの日本の高校就職指導は、メリトクラシーが貫徹した「学校に委ねられた職業的選抜」によって特徴付けられるとされてきた点、②90 年代以降、高卒労働市場の狭隘化によって、高校就職指導の日本的特質が崩れ、高卒者の職業への移行が急速に不安定なものとなったとされてきた点。①については、80 年代までの高校就職指導には多様性が見られ、また学校から職業への移行が従前指摘されてきたほどスムーズなものではなかったことが、本論文では明らかとなった。②については、大都市を対象とした事例研究に依拠した知見に過ぎず、大都市での高卒者の移行の不安定さが強調されてしまったことを明らかにしている。
今後、多様な就職指導類型を設定した上で、大都市圏のみならずさまざまな労働市場環境を念頭におき、丹念に高卒就職指導の選抜・配分機能を明らかにしていく必要性を指摘している。

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