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2016年8月30日 (火)

奨学金破産の解消法

西川純さんのブログで、「奨学金破産の解消法」というエントリが上がっています。なかなかに刺激的に表現も含まれていますが、物事の本質をズバリと斬り込んでいますので、一服の清涼剤として是非服薬することをお奨めします。

ちなみに私はここまでラディカルではなく、中長期的にはいったん社会に出て就労してから大学進学というスタイルが一般化することを展望しつつも、当面は「18歳主義」は簡単になくならないだろうという前提で、いかに教育の職業的レリバンスを高められるかという生ぬるい考え方でいますが。

http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20160829/1472423090

・・・奨学金破産の原因は奨学金ではなく、大学を卒業しても正規採用にならない点です。その原因は正規採用に値する能力、つまり、採用後直ちに給料分稼げる能力を大学が与えていないからです。

・・・大学進学率の高い国では、高校卒業後に直ちに大学に進学するのはトップ大学に進学する一部だけです。多くは就職します。日本もそうなればいいと思います。
 大学で学びたい人は数年間働いて、お金を貯めます。つまり、借金で大学に学びません。それだけの覚悟と意欲を持つ人だけが大学に進学します。働いてから大学に学ぶのですから、働いたことのない高校生とは選択の視点が違います。似非ジョブ型には厳しい目を向けます。結果として本当の専門職大学に学生は集まりますが、似非専門職大学には集まりません。

そこから、高校教師への提言もシビアなものになります。

・・・じゃあ、我々教師(特に高校教師)は何が出来るか?
 偏差値60を下回る子にはジョブ型大学を薦めるべきです。
 偏差値55を下回る子には大学進学は勧めず専門学校を薦めるべきです。そして、それを上回ることを学びたいならば、お金を貯めて大学に進学することを勧めてください。借金するとどうなるかを教えてください。

実際には、日本の企業の側がそれに対応できるような体制になっていないので、このジョブ型社会ではあまりにも正当なサジェスチョンがかえって逆効果をもたらせてしまうというもまた現実の日本の姿でもあるわけですが。

西川さんのブログを見るたび、自分の生ぬるさを思い知らされる尖ったエントリです。

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コメント

奨学金とは視点は違いますが、いったん社会人となってから、なんらかのきっかけにより医学部を目指し(極々少数おります)入学してきた学生の視野はストレートに入学した学生にはない「眼」をもっていることが多く、私案ながら医療人の資質がますます問われる時代に一定の再入学枠を設ける試みもあると思っております。
それを広げれば、社会人と大学生活が双方向で両立する、あるいは意欲ある人々の「今」に縛られない学びの提供制度が、多様的で柔軟な企業文化をも生み出すのではと思っております。
今、いわゆる癌治療もいろいろな後遺症等々を覚悟しなければ進みませんが、それは薬物療法の場合、体内にはいる前の完成品への抵抗反応ですが、発想法を変え、体内へ投入後それを抑える効果剤へと後天的に成長させるアプローチがおそらく可能となることでしょう。
発想の転換は存外に有機的リソナンスを医学上のみならず閉塞的呪縛に悩む社会にも優位な帰結をもたらすかと思っております。今自分たちに見えている星の光は、今光っているのではなく、数年、数万年、数億年・・・前の光を自分たちは「今」見ているにすぎないとわかればブレークスルーは可能であろうと思います。叱咤は大いに結構。すでに大人な方はこれからを担う人々に叱咤の裏付けとなるものも提示しなければならないであろうと学生をみるにつけ考えます。

投稿: kohchan | 2016年8月30日 (火) 13時58分

>  ・・・奨学金破産の原因は奨学金ではなく、大学を卒業しても正規採用にならない点です。

  仰る通りだと思います。

>  その原因は正規採用に値する能力、つまり、採用後直ちに給料分稼げる能力を大学が与えていないからです。

  それも理由の一つだと思いますが、正規採用の数が少ない事もあるのではないでしょうか?
奨学金返済の負担が過重な事は日本だけでなく米国でも大きな問題になっています(サンダース氏が大善戦した理由の1つがこの問題でした)。米国の大学の教育内容は全く知りませんが、日本よりは実用的な教育をしていると思います。その米国でも同様の問題が起きている事を考えると、採用側の原因もあるのではないかと思います。
椅子に座る能力がどんなに高くても、椅子の数が少なければ椅子に座れない人が発生します。


>  ・・・大学進学率の高い国では、高校卒業後に直ちに大学に進学するのはトップ大学に進学する一部だけです。

  全くの思い付きですが、トップ大学の入学者(卒業者)の数と正規採用数がほぼ同じという事はないでしょうか?昔の日本は(指定校制度等により)大学卒業者数とその年の正規採用数がほぼ同じだったので、大学を卒業すればほぼ全員が正規採用になったという説を聞いたことがあります。


>  大学で学びたい人は数年間働いて、お金を貯めます。つまり、借金で大学に学びません。

  私は借金で大学に学ぶ事が悪い事だとは思いません。お金を借りて大学に行けばお金を貯めてから行くよりも早く入学(卒業)でき、目的の職業に早く(長く)勤める事ができます。一般に大学に行く前の職業より卒業後の職業の方が高収入だと思うので、収入の低い時に貯金するよりその金額を借りて収入の高い時に返す方が有利だと思います。
  問題は借金で教育を受ける事ではなく、(まともなジョブ型教育を受けて)就職先のジョブにふさわしい能力を身に着けてもジョブの状況で就職できない場合がある事だと思います。
ジョブ型の場合は(就職先が限定されるので)メンバーシップ型よりも就職できない場合が多くなる気がします。hamachan先生が以前に、”メンバーシップ型社員はiPS細胞のようなものでどんな器官(指先、心臓等)にもなれるが、ジョブ型社員は特定の器官にしかなれない一般細胞のようなものだ。” と仰っていたと思います。
例えば指先の需要が減って心臓の需要が増えた場合に、メンバーシップ型志望者は”指先になってもらうつもりだったが、心臓になってくれ”という事で採用は可能ですが、指先になるためのジョブ型教育を受けた志望者は心臓の需要が増えても指先の需要がなくなれば採用されません。
  北欧では特定のジョブ自体が減少すれば、そのジョブについていた労働者は国が(費用を出して)別のジョブにつけるように教育を行うそうです。労働者だけでなくそのジョブのための教育を受けた学生にも同様の処置を適用できれば良いと思います。そうすれば最初の(ジョブ型)教育を受ければ(ジョブ自体が減少し)採用されなくても、別のジョブで採用されるまでの費用はかからない(国が出す)ので、採用後に最初の教育費用を返済できます。


>多くは就職します。

  この場合、高校卒業後の就職先は専門知識(技能)がなくても良い仕事なのでしょうか?
それとも高校段階で卒業後の就職先にふさわしいジョブ型教育を行うのでしょうか?

投稿: Alberich | 2016年9月 2日 (金) 06時55分

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