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小酒部さやか『マタハラ問題』

9784480068729 小酒部さやかさんの『マタハラ問題』(ちくま新書)をお送りいただきました。

実は、先日のこのエントリで、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/12research-365b.html (第1次ワークライフバランスと第2次ワークライフバランス@『JP総研Research』第34号)

つい名前をうろ覚えのまま、こんなことを書いてしまったのです。

そこのところはよくわかります。六法全書にどう書いてあろうが、現実の労働社会の「常識」-生きられた法-がそうなっていなかったのを、(いかに法律用語的に変であろうが)マタハラというインパクトのある言葉を打ち出すことで現実を、職場の男性たちの意識を揺るがしたではないか、という社会学的な意味では全く杉浦さんに同意します。

その上で、それを全部分かった上で、法律を扱う人はちゃんと分かってやってねという意味合いで書いた小文ですので、決してこの間杉浦さんや小谷部さんらを批判する意図ではありません。社会運動的には「マタハラ」という言葉は近来まれにみる成功を収めたコンセプトだったと思います。

もちろん、小酒部さんと書くべきところを小谷部さんと書いてしまったのです。それを見たある方が、本書を送っていただきました。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068729/

働く女性が妊娠・出産・育児を理由に退職を迫られたり、嫌がらせを受けたりする「マタニティハラスメント(マタハラ)」。労働局へのマタハラに関する相談は急増し、いまや働く女性の3人に1人がマタハラを経験していると言われている。本書は「NPO法人マタハラNet」代表による「マタハラ問題」の総括である。マタハラとは何なのか。その実態は、どのようなものなのか。当事者の生の声から問題を掘り下げる。

やはり一番インパクトが強いのは、小酒部さん自身が経験した出版社での凄烈なマタハラぶりでしょう。直属上司のAもすさまじいですが、ある意味ではよくいるタイプの「粘土層」とも言えます。企業戦略という意味で大きな問題は人事部長の発言ぶりでしょうね。彼女の経験が描かれた第1章は、下手な小説も顔負けの生々しい発言がこれでもかこれでもかと出てきます。

本書を読んで改めて、「社会運動的には「マタハラ」という言葉は近来まれにみる成功を収めたコンセプトだった」と感じ入りました。

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コメント

本を送った者です!お読みいただき、そして記事にしていただきありがとうございます。

マタハラの大部分がすでに法で禁止されているのに、いまだ本書で語られたように、悪気なくマタハラを行い、そのうえ自分は会社のためにいいことをしているくらいに考える粘土層的な人が存在しており、本当にうんざりします。
しかも、そんな人たちが、組織の課長や、人事の管理職に登用され、がっかりします。

社会的にマタハラの理解が進んで、加害行為がなくなっていくのも理想ですが、正直もうちょっと、法の実効性が高まれば。。。とも思います。
(厚生労働省が、企業等に対し就業規則にマタハラ加害者の懲戒を明記するよう促す指針案を発表したようですが)

わたし自身もよく勉強し、仕事やNPOでのプロボノ活動を通して、ちょっとずつでも今よりマシな組織・社会になるように、貢献していきたいと思います。

投稿: ayachan | 2016年7月29日 (金) 08時32分

ayachanさま、改めてありがとうございます。

確かに、所詮は個人的な欲望に基づくうしろめたさがありうるセクハラと違い、「自分は会社のためにいいことをしているくらいに考える」のが少なくない点が、この問題の難しさでもあるのでしょう。

投稿: hamachan | 2016年7月29日 (金) 09時25分

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