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経団連産業技術本部編著『 職務発明制度Q&A』

Bk00000438同じく讃井暢子さんからお送りいただいたのが経団連産業技術本部編著『 職務発明制度Q&A-平成27年改正特許法・ガイドライン実務対応ポイント』(経団連出版)です。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=438&fl=1

平成27年改正特許法は約90年ぶりの大改正となり、28年4月には新たなガイドラインも公表されました。今回の改正は、企業にとってビジネスの実態により即した「原始法人帰属」を認め、発明者に付与する「対価」を「相当の利益」とすることで、知財戦略の選択肢を広げました。この改正の趣旨に沿った、民間企業による実務面での具体的な対応が求められています。
 本書は今回の改正に完全対応し、わかりやすいQ&A形式で解説しました。人事・労務担当者から、知財のベテランまで必携の一冊です。

この職務発明制度の改正は、経団連が強くプッシュしたもので、連合はかなり強く反対していたもので、その意味ではその一方当事者の立場からの解説書ということになりましょう。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-0376.html(職務発明への労使の意見)

・・・つまり、労働組合側が労働者個人個人の貢献と報酬を明確にするジョブ型のルールを求めているのに対して、経営側は会社のみんなが頑張ったんだから、独り占めせずにみんなのものにせよと、メンバーシップ型のルールを要求するという、まことに興味深い対立図式となっていることがわかります。

・・・ただ、発明という世界のことを、そういう会社員の共同体世界の感覚だけで論じていいのかについては、なまじ私がそういう世界とは縁遠い人間であるがゆえに、留保しておきたいところもあります。

そもそも、民法246条1項但し書きにもかかわらず、雇用労働者の加工による労働生産物についてはいかなる場合でも労働者の所有にならない所以については、19世紀ドイツ以来民法学における一つの論点であったわけですが、そのさらに例外として知的生産物については雇用労働者たる発明者に帰属するという二重の例外を設けていることの意義についても、必ずしもきちんと議論され尽くしているようには思えません。

そして、一番興味深いのは、何かというとメンバーシップ型は奴隷制だとか、ジョブ型正社員はメンバーシップ型を賞賛するものだとか、口を極めて罵っている評論家さんたち当の御仁が、こういう問題になると、あら不思議、成果を挙げた発明者なんかよりもそのまわりで貢献した従業員たちのためにというメンバーシップ型全開のイデオロギーを振り回して何の疑いも抱かないというところでしょうか。

この問題に関する限り、城繁幸氏の同志は労務屋さんであるようです。

・・・なんにせよ、労務屋さんのロジックからすれば、発明者というごく一部のエリートだけに莫大な利権を与えるのではなく、縁の下の力持ちとして貢献した名も無き組織の人々のことも考えろという、まことに共同体的連帯意識あふるる主張であるはずが、こともあろうに発明者保護を弱者保護だとかソーシャリズムだとかと罵る人によって主張されているというところにこそ、この問題の皮肉な構造が露呈していると思うわけです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-22e8.html(ノーベル賞:物理学賞に中村修二氏ら日本人3氏)

・・・ちなみに、これまた全く図ったわけではないのでしょうが」、『月刊連合』が「職務発明に関する権利の法人帰属化は発明のインセンティブを削ぎ、人材流出を招く」という座談会をやってますね。水町勇一郎さんが労働法サイドから出席しています。

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コメント

経団連と連合・・・英国のトピック騒動と同義反復関係ように思えますね。
発明と発見の定義の違いがあるはずですが、エントリからは読みとれませんし、さっぱり解りかねます。
中村さんの主旨は市場利益を創造するパテント所有権問題でしょう?ただ、それが個人か法人かいずれが具現化できる
投資主体かであり発明?それ自体は生産された生産手段の純粋な問題で、それは冒頭の両横綱組織間と別にすべきではと思います。そもそももはや社会的に勝ち組少数派としてインナー互助会として浮いておられるんじゃないです?
事前の権利請求権と事後の利益分配権でしょう?それが組織利益か個人利益かを規定することは非常に重要なことですが、それが善し悪しは別に雇用も意識も多様化してしまっている今日の社会便益を高めることを目的とされていると思っている本ブログに殊更重要だとも思えませんでした。唯一理解できるとすれば、メンバー・ジョブに沿ったものの見方ということでしょうか。意義はあるなあとは思いますが、そのご本尊ももはや風前の灯火で試行錯誤でしょうしね。
議論が裏ありの護送親和人だけではなく、私のような稚拙な門外漢ではない太い健全なる批判的コメントを読んでみたいものです。それがないのならば、それこそツール性向の限界を実証されたのだと、はまちゃん先生の忍耐強さに敬服いたします。いつも抗ってごめんなさい。

投稿: kohchan | 2016年7月 6日 (水) 19時25分

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