7月の拙著短評あれこれ
7月に目に付いた拙著への短評をまとめてご紹介しておきます。
まず2009年に出した『新しい労働社会』(岩波新書)について、歴代作家書店店長による『憲法』と『日本のいま・これから』推薦書というコーナーで、小熊英二店長がこういうコメントを。
http://honto.jp/store/news/detail_041000019379.html
日本と西欧の雇用原理の違いから、未来の雇用原理を展望する。
次に2011年の『日本の雇用と労働法』(日経文庫)について、神奈川建一(ケンザン中の人)がこうツイート。
https://twitter.com/KanagawaKenichi/status/752848017238036480
濱口桂一郎「日本の雇用と労働法」熟読中。日本の労働契約は、仕事に対する報酬ではなく、組織に属することに対する報酬を取り決めた契約であると解説する本。社会人になって数年経ったらぜひ読んで欲しい。どれだけ歴史の積み重ねが重いかわかるよ。
また、読書メーターでも、YTさんが、
http://bookmeter.com/cmt/57518200
『タテ社会の人間関係』や『どうして若者は3年目で辞めるのか』で述べられる日本型雇用システムが歴史的にどうやって形成されていったのかを歴史と裁判例から追って行くもの。所謂日本の大企業に勤める方は読むと日々の疑問が幾らか解ける。
昨年末の『働く女子の運命』には、かなり多くの短評が。先月末ですが「2016年参院選特別企画−有名教授陣が民主主義を再考する本を選書しました」というコーナーで、京都大学の国際法の教授である濱本正太郎さんに、「問題解明の見事なお手本」と褒めていただきました。
社会にある困った問題を解決しようとする場合、何よりもまず問題を理解しなければならない。それは、その問題を作り出している「悪者」を見つけることではない。では、どういうことか。「なぜ、女性は日本社会において働きづらいのか」という問題を徹底的に読者に理解させようとする本書は、問題解明の見事なお手本である。
その他、
http://scbookinfo.seesaa.net/article/439871165.html
今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。
http://blog.goo.ne.jp/yuki_523/e/c2b8e1b5b359721ecb97e0b885140f09
タイトルに「女子」と書かれていますが男性の労働についても取り上げられていますし、男性にも読んでほしい1冊。
http://maiumy.exblog.jp/25493457/
これは労作、且つ重要作。
「(失われた20年は)それまでの日本型雇用システムを否定することなく、むしろその中核をより純粋に少数精鋭化しながら維持しつつ、もっぱらその周辺部を狙って規制緩和をしてきた」という流れの中で、いかに働く女性が虐げられてきたかの考察。
フェミニストならずとも、その分析の鋭さが面白い。
http://www2.hplibra.pref.hiroshima.jp/?page_id=1195
男女雇用機会均等法施行以後も,日本の企業等での女性の活躍はまだまだです。日本の女性はなぜ「活躍」できないのか。データや当事者の肉声を交え,「働きにくさ」の真相を解説しています。女性と比べると家事や育児負担が(少)ない男性にも,読んで考えてほしい一冊です。
http://ameblo.jp/fuyugare/entry-12185606384.html
メンバーシップ型とジョブ型の切り口で日本の労働問題を綺麗に整理する仕事の一環。男女雇用機会均等法の理念が目指してきた何かと、現実の落差を埋めるピースを提供する。端的に言えば、メンバーシップ型→職能給へ変換され、ジョブ型→職務給と翻訳して理解するというもの。この捻れを温存したままに、男女平等に取り扱うということを企業がどのように受け止めたか、そして男女ともに等しく劣悪な労働環境に貶める方向で理念が達成されうるのかという疑問符をつきつけるところで幕引き。 労働「諸」問題を考えるにワークライフバランスを取り戻すには、メンバーシップ型の有益性を残しつついかにしてジョブ型へ転換できるかを慎重に考えていかないといけない。
読書メーターでも、
http://bookmeter.com/b/4166610627
7/11 :inu , 難しい。どうすれば良いのか悩ましい。
7/13 :yurari , 昔よりはだいぶマシになってると思う。
7/17 :たろさん , 働く女子を巡る法規の変容や社会の変容について書かれた本。著者によれば第一次ワークライフバランス、すなわち労働時間の削減やマミートラックの解消が空洞化している中で、第二次ワークライフバランス、すなわち、時短勤務や育休だけが充実している問題点をあげている。ホワイトカラーエグゼプションにおいてもアメリカでの意味とは違い、少子化対策の改善と考えられている。日本の就業問題をとらえた本。
7/20 :Murakami, 現代まで続く女性労働者差別の歴史が良く分かった。
7/20 :cino , 欧米のジョブ型と日本のメンバーシップ型について書いてあったが日本以外のアジア他国はどうなのかなー
7/26 :Munedori , 労働の提供ではなく、労働力の提供。マミートラックがある理由がよく分かった。働く親(特に母)は会社にすべての時間を捧げられないから。でも、子供がいない人だって、親はいる。介護は育児以上に男性にも降りかかってくるだろう。どちらにしても、高度成長期時代に構築されたシステムは崩壊の道を辿ってるかと。
7/27 :じゅりあ , ゼミの文献として再読。
またブクログレビューでも、
http://booklog.jp/item/1/4166610627
7/9 : bukurose, 今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。 欧米では日本より女性が働きやすくなっており、M字型も台形型になっているが、それはそう昔のことではなく60年代になってからだという。その源泉は賃金に対する考え方で、欧米では企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行する技能(スキル)のある労働者をはめこみ、それに対して賃金を払う。経理のできる人、旋盤のできる人といったように。なので女性の労働問題は、女性の多い職種はおおむね賃金が安く、男性の多い職種(管理職とか)に女性も進出する、ということであったという。 それに対し日本は、会社のメンバーを募りメンバーはどんな職務内容でもやるというやり方。しかも賃金は労働者の生活を保障するべきものである、という生活給思想が根本にある。それは大正11年に呉海軍工廠の伍堂卓雄の発表した「職工給与標準の要」であるという。それは第二次大戦中、戦後の労働運動の中でも継承された。扶養手当の思想はここから始まっていたのだ。 そして85年に均等法ができるが、それは世界的に男女平等が進められた時代で、欧米はジョブ型に立脚して女性の雇用を進めたのに対し、日本は生活給という日本型雇用・会社のメンバーとして一丸で働くという立脚点で進められた点にねじれがある、というのだ。 日本型の女性労働の平等化は会社のためなら深夜でも外国でもいとわず、どんな仕事でもやります、という男性の土俵に女性も乗せるもの。均等法から30年、ワークライフバランスという言葉がむなしく響く。
7/20 : shiitake, 良い本。ハイパー知的刺激あった。
なお、『若者と労働』も含めて3冊まとめてのついーとがこちら。
https://twitter.com/ripplemirror/status/758651573740253184
メンバーシップ型社会(日本)とジョブ型社会(欧米)という切り口で新卒一括採用に批判的な内容だったが、この議論の主提唱者たる濱口桂一郎氏の議論を参照しているのか疑問符。若者にとってジョブ型社会の方が厳しいことは若者の失業率を一瞥すれば明々白々。
https://twitter.com/ripplemirror/status/758653249289269248
メンバーシップ型だからこそ白紙の若者でも企業が一定数採用し「OJT」を施している。この手の隣の芝生は青い的つまみ喰いこそ日本の労働問題を深刻化させている―というところまで「新しい労働社会」「若者と労働」「働く女性の運命」などを読めばわかるだろうに。
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