1日14時間、週72時間の「上限」@船員法
先日都内某所である方にお話ししたネタですが、どうもあんまり知られていなさそうなのでこちらでも書いておきます。といっても、六法全書を開ければ誰でも目に付く規定なんですが。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO100.html
労働時間を定めているのは労働基準法、というのが陸上の常識ですが、海上では船員法です。
労働時間の原則は労基法と同じですが、
(労働時間)
第六十条 船員の一日当たりの労働時間は、八時間以内とする。
2 船員の一週間当たりの労働時間は、基準労働期間について平均四十時間以内とする。
時間外労働には3種類あります。「船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要があるとき」(第64条1項)、「船舶が狭い水路を通過するため航海当直の員数を増加する必要がある場合その他の国土交通省令で定める特別の必要がある場合」(同第2項)、そして労基法36条と同じく「その使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がないときは船員の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを国土交通大臣に届け出た場合」(第64条の2)です。
この3種類の時間外労働のうち、はじめのもの、つまり「船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要があるとき」については性質上上限はないのですが(これ以上働けないからと言って船を危険にさらすわけには行かない)、あとの二つについては法律上の上限が規定されています。
(労働時間の限度)
第六十五条の二 第六十四条第二項の規定により第六十条第一項の規定又は第七十二条の国土交通省令の規定による労働時間の制限を超えて船員を作業に従事させる場合であつても、船員の一日当たりの労働時間及び一週間当たりの労働時間は、第六十条第一項の規定及び第七十二条の国土交通省令の規定による労働時間並びに海員にあつては次項の規定による作業に従事する労働時間を含め、それぞれ十四時間及び七十二時間を限度とする。
2 第六十四条の二第一項の規定により第六十条第一項の規定又は第七十二条の国土交通省令の規定による労働時間の制限を超えて海員を作業に従事させる場合であつても、海員の一日当たりの労働時間及び一週間当たりの労働時間は、第六十条第一項の規定及び第七十二条の国土交通省令の規定による労働時間並びに前項の規定による作業に従事する労働時間を含め、それぞれ十四時間及び七十二時間を限度とする。
3 船舶所有者は、船員を前二項に規定する労働時間の限度を超えて作業に従事させてはならない。
4 第六十四条第一項の規定により船員が作業に従事した労働時間は、第一項及び第二項に規定する労働時間には算入しないものとする。
さらに、船員法には休息時間という規定もあります。
(休息時間)
第六十五条の三 船舶所有者は、休息時間を一日について三回以上に分割して船員に与えてはならない。
2 船舶所有者は、前項に規定する休息時間を一日について二回に分割して船員に与える場合において、休息時間のうち、いずれか長い方の休息時間を六時間以上としなければならない。
もっとも、EUの陸上の労働時間規制と違って、1日最低連続11時間というわけではなく、1日2回まで分割してもいいというかたちです。1日の労働時間の上限が14時間ですから、休息時間を1日で計10時間とすると、5時間と5時間ではダメで、せめて6時間と4時間にしろということになりますね。
いろいろな意見があると思いますが、何にせよ海上ではこういう法律に現に存在しているということは、陸上の労働法を論じる人々も頭の片隅には置いておいた方が良いようにも思われます。
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